今日は前々から気になっていた駅前徒歩5分の老朽空き家(戸建て)について考えたことを書きます。
駅近くの道路沿いで人通りも激し場所に立地するその老朽空き家はなぜ放置されているのか(外観を見た感じでは)、一等地なので不動産屋が目を付けているはずだけど賃貸や売却に至らないのはなぜか疑問に思います。
推測では相続人が複数いて権利関係でもめていたり、オーナーの愛着があって手放せなかったり、不動産市場に出せない個別的な事情があると思います。
こうした不動産市場に乗らない空き家は総務省住宅・土地統計調査によれば、いわゆる「その他の住宅」の空き家に分類されます。
統計局ホームページ/平成20年住宅・土地統計調査 用語の解説 ≪ 住宅 ≫
「その他の住宅」の空き家のうち腐朽・破損の無い物件数はというと、
- 全国:183万戸
- 東京都:14.5万戸
つまり全国の183万戸、都内の14.5万戸の物件は活用可能な状態にもかかわらず不動産市場に出ていないことになります。
この認識については東京都も同じです。
長期不在等の空き家は、比較的面積の大きいものも多いことから、こうした空き家が市場に流通していけば、例えばファミリー向けの広い面積の賃貸住宅が増えるなど、都民の多様な住宅ニーズに応える選択肢が広がる可能性があります。こうした空き家の市場への流通を促進するため、空き家の実態を把握し、空き家の保有コストのあり方、利活用の促進策などを検討します。
東京都住宅マスタープラン/東京都都市整備局平成24年3月発行P90
(画像引用元)
しかし東京都の空き家事業といえば、高齢者のケア付き共同住まいや多世代同居・子育て住宅といった「公共の目的」のために空き家を改修する事業者に対し最大100万円の補助金を交付する事業があるくらいです。
「東京都民間住宅活用モデル事業(空き家活用モデル事業)」について/東京都都市整備局
「空き家の実態把握」「空き家の保有コストのあり方、利活用の促進策などの検討」はまだ表立って公開されていません。
ただし都内の基礎自治体では「空き家実態調査」や「空き家条例の制定」「解体費用補助」など先行して取組を進めています。
認定NPO法人まちぽっと - 東京都内自治体における空き家対策の現状と課題
どっちかというと行政の空き家事業は「老朽」空き家の外部不経済(地域に物理的な迷惑をかけること)を予防・解消するための取組が多いため、「活用」という新たな価値創出に取り組む空き家事業はまだまだ未開拓の分野なのかなと思います。
かたやミニ保育園や低所得の高齢者向けのケア付き住まいなど「住宅・建物」を必要としているサービスや事業者は存在しています。シェアハウス、ネットカフェ難民の居場所、子育て母親の交流場所、地域の観光情報センターetc活用の選択肢はアイデア次第でたくさん出てきそうです。
都内の基礎自治体で活用可能で不動産市場に出ていない空き家数トップ5は以下のとおり。
- 世田谷区:9,360戸
- 大田区:9,140戸
- 中央区:8,370戸
- 渋谷区:8,220戸
- 板橋区:6,560戸
これらの空き家は新たな価値の源泉になるポテンシャルを持っているわけです。ただし不動産屋からの賃貸・売却の提案を断っていたり、そもそも不動産屋も見向きもしない物件だったり、空き家になった背景は個別具体的な事情がありそうです。ここら辺を把握し、空き家オーナー各々に合ったアプローチが必要だと思います。