「京都×空き家×まちづくり」〜京都だからできる空き家活用の可能性、空き家をきっかけとしたまちづくり〜2014年6月7日イベントレポート第4弾です。
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「それぞれの立場からみた空き家×まちづくり」と題したトークセッションの中の「空き家所有者」の立場からのお話です。
京都御所まで徒歩1分の京町家をシェアハウスに(シェアハウスHASKA御所東)
空き家の「所有者」の立場からオーナーの前田徹生氏のお話。空き家の相続に伴い2014年3月にシェアハウスへと改修する前はお祖母さんのお姉さんの住まいだったそうです。で、このお姉さんは”俳人”だったそうで著名な俳人である”富安風生”とも親交が深く、手紙や本など当時の面影を残すものも多く残っているそう。建具・家具など既存のまま活かしています。
<運営者コメント>
2014年3月、京都御所の東側に面する明治時代の京町家を、女性専用3室のシェアハウスへと改修しました。御所東という誰しも憧れる緑の多い落ち着いた住環境にあって、京阪電車や地下鉄など交通の便も大変良いところです。かつてのこの町家の主は、俳人の女性だったそうで、著名な俳人である富安風生氏とも親交が深く、手紙や本など当時の面影を残すものも多く残っています。
趣のある玄関。
逆光でわかりづらいですが全景。
風情を感じます。
明治時代の京町家が女性専用3室のシェアハウスに。緑の多い落ち着いた住環境。
駐車場・駐輪場もあります。「202カンパニー株式会社」という管理会社に物件の管理運営を任しているのですね。
京都御所の本当に隣。京阪電車や地下鉄など交通の便も良いです。(HASKAはパーキングの奥)
改修のポイント
(1)水回りなどの設備を新規交換
浴室、トイレ、キッチンなど水回りのアップデートは必須です。やはり生活していく上で欠かせないインフラですね。
(2)シェアハウスとして成立する様テコ入れ
カーテンやベッド、照明、家具の選定など既存の良さを活かしつつも必要なところは新しいものを付け加えています。
募集・管理は不動産専門家に一任
シェアハウス経営は管理会社に一任しています。
京都市(京都)のシェア住居「HASKA 御所東」の詳細データ|ひつじ不動産
用途:女性専用シェアハウス
戸数:3室
賃料:42,000〜46,000円
共益費:12,000円
(周辺ワンルーム相場:共益費込65,000円前後)
個室畳数:6.2〜8畳
契約種別:定期借家契約1年
募集方法:シェアハウスポータルサイト、知人の紹介など
→募集開始後、50日で満室。
ということで募集はシェアハウスの総合メディアと銘打つ「ひつじ不動産」のウェブサイトがメインです。写真も豊富で見ていて楽しいですね。
京都市(京都)のシェア住居「HASKA 御所東」の詳細データ|ひつじ不動産
現在は20代〜30代の社会人女性が入居しているそうです。
シェアハウスに至った経緯(地域からの働きかけ、不動産専門家からの提案、大家の想い)
3つあるそうです。第一に「春日まちづくり委員会との出会い」、第二に「不動産専門家の提案」、第三に「大家の想い」です。一つずつ見ていきます。
(1)春日まちづくり委員会との出会い
かねてより地元の「春日まちづくり委員会」から手紙があり、空き家の活用について打診があったそうです。最初は断っていたそうですがある時タイミング良く話を聞く事に。そして空き家調査を行い具体的な提案を受け、その提案に基づき知人の不動産業者に依頼したという流れ。地域という”第三者からの働きかけ”が契機ということですね。
(2)不動産専門家の提案
不動産業者からの提案内容は、
- シェアハウス(用途:住居/複数)
- 一棟貸(用途:住居)
- 一棟貸(用途:商業兼住居)
- 宿
でした。一棟貸や宿は月額収益が高いが金銭リスクが高い。それに将来性や社会ニーズがあるのはシェアハウス。金銭リスクも低いのはシェアハウス。それに加えて当該地域は「第二種中高層住居専用地域」(都市計画法による用途地域の一つで、中高層住宅の良好な住環境を守るための地域である。)に指定されているため「旅館業」としての営業は不可。そのため既存の建物を活かした間取りのシェアハウスが良いということでまとまったそうです。
(3)大家の想い
オーナーの前田さんは大学の頃にフリースクールのボランティア活動をやっていたり、バックパッカーとしてインド、ネパールなどアジアを中心に旅したそうです。そこでゲストハウスや安宿でたくさんの出会いがあった。そういう”人と人とが出会う空間を提供したい”という想いが結実したのが京町家(空き家)の活用によるシェアハウス経営ということです。
”京都らしさ”を残しつつ水回りなどは現代の生活に合うように一新することがポイント
京町家(空き家)の活用において大事なことは、歴史・文化を感じる”京都らしさ”を活かしつつも現代のライフスタイルの質を確保するための特に水回り(キッチン、トイレ、風呂場)の改修をすることだと思います。このポイントは京町家に限らず他の空き家活用も同じですね。歴史や文化といった”目に見えないもの”に価値を見いだす感覚だったり想像力が必要なのかもしれません。
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「HASKA御所東」の写真は「ひつじ不動産」のウェブサイトが詳しいです。
京都市(京都)のシェア住居「HASKA 御所東」の物件画像一覧|ひつじ不動産
(つづく)
次回のブログは「空き家のマッチングの仕組み」の立場からのお話について書きます。
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