「京都×空き家×まちづくり」〜京都だからできる空き家活用の可能性、空き家をきっかけとしたまちづくり〜2014年6月7日イベントレポート第5弾です。
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京町屋(空き家)をシェアハウスとして活用。
京町屋(空き家)を芸術家の居住・制作・展覧スペースとして活用。
”まちづくり”として空き家対策に取り組む地域の取組。
京都女子大学の井上准教授によるミニ講義「空き家が地域に及ぼす影響」。
「それぞれの立場からみた空き家×まちづくり」と題したトークセッションの中の今回は「マッチングの仕組み」の立場からのお話です。
日本初の”市民コミュニティ財団”
プレゼンターは公益財団法人京都地域創造基金の専務理事・事務局長の戸田幸典さん。2009年3月に300人を超える市民の寄付により設立された日本初の市民コミュニティ財団です。2013年の第1回ソーシャルビジネスイニシアチブ大賞ファイナリストに全国380件の中から首都圏外で唯一選ばれるなど、ソーシャルの領域で活躍されている団体です。
”地域課題に対して取り組む真摯なNPOの事業に寄付をつなぐこと”が大きな役割です。
これまでの寄付総額は2億円を超えた(約3,350件)そうです。助成総額は約1億2000万円。件数は約150事業。
”for Positive Social Change”
京都地域創造基金の社会的使命(ミッション)は、
(1)多様な主体が公益を支えることができるインフラをつくる。
=「新しい公共」時代に、地域社会の中で、資源の再投資や再編成を促す地域社会インフラに。
(2)意思のある、新たな資金循環をつくる。
=社会にとって価値ある「寄付」をつくりだし、公益の担い手であるNPOを支える。
(3)NPOと地域社会のよりよき関係を築くプラットフォームとなり、市民による公益活動を市民が支える仕組みを社会に根付かせる。
=『市民活動を支えるのは市民社会』の実現
市民が市民に託す、不動産の利活用による地域貢献
- 人口減少時代の日本:「2050年」の人口と地域の姿
- 課題先進国日本:想像もしない多様な地域課題が噴出
- 空き家含め不動産所有・利活用には多様な課題→多様な活用や受皿、処分、解決方法が必要
その一つとして、
- 地域の課題解決や公共の担い手の多様化。NPO等に役割が期待されるが、資源の流れは以前として変わっていない(つまり税を元にした公共サービスによる地域課題解決やまちづくりがベース)
- 地域の担い手の変化、役割の変化とあわせて、公共を支える資源資産の流れも変えていく必要がある。その一つが寄付であり、その中に土地や建物の活用、寄付も含まれていくべき。
⇒地域資産の公共への再投資・再編成の必要性
つまり、社会的課題は多様化していて、その解決の担い手はこれまでのように行政一辺倒っていうわけじゃなく「NPO」(ここで言うNPOはNPO法人という組織形態に関わらず市民発の中間集団全般)が成長してきている。行政の原資は税だけど、じゃーNPOの原資は何?ってときに寄付を集める仕組みを作ろうっていうことですね。そして寄付は必ずしも金銭であるわけではなく土地や建物も含まれてくる。
全国の寄付市場は1兆円、アメリカは23兆円
「寄付白書2011」(日本ファンドレイジング協会)によると、
- 5年前よりも「寄付額変わらない+増えた」73.1%(2011年ベース)
- 「遺産を寄付したい」40代以上で2割(未婚女性で5割)
一方、アメリカの寄付市場は3割以上が宗教団体への寄付ということですが約23兆3000億円(2010年)。
日本とアメリカとでは寄付市場に大きな開きがあります。
国民の寄付意識は高まっているが寄付すると得する制度は全然知られていない
平成23年度国民生活選好度調査(内閣府)によると、「今後、寄付で社会貢献したい」は52.6%(前年度39.5%)。ということで寄付で社会貢献しようと考える人は増加傾向です。東日本大震災などを背景に平成23年度税制改正により寄付金税制が大幅に拡充されました。しかし、この寄付金税制優遇措置を知らないと答えた人は86.6%。寄付のメリットが全く知られていないのです。しかも現在この寄付税制の見直し・縮小が検討されている始末です。
高齢世代の金融資産
日本の個人金融資産は1,500兆円。その内の8割は50歳以上が保有しています。2010年の相続市場は約50兆円(90万人弱)。2020年は57兆円(135万人程度)とも予想されています。
空き家・空き土地の背景と出口→マッチングの不足
- ビジネスになるもの→ビジネスの中で流通していくべき(しかしながら街にとって良いものかどうかは別問題:コインパーキング等)
- 相続できるもの→相続(中には放置されるものも)
- 行き場のなくなったもの→国・自治体に。基本的に受け取るだけで、活用できないままの場合が多い。
- 寄付したい、地域のために活用してほしいもの→マッチング(寄付したい活用してほしいと思う人と、活用する人、活用できる制度や仕組み、サービス)が不足。
不動産を公益につなぐマッチング機能の強化が必要
50代以降の世代が持つ資産を地域に活かしたいというニーズが高まっている中、
- お金になる不動産等は「ビジネス」へ流れる
- 国や自治体など「行政」へ渡るが利活用ができない(アイデア・財源)
- 地域のために活用を希望してもその先がわからない(地域で活用するNPOや市民団体等のニーズ・制度・税制、商品等)
⇒資産を地域の公益事業に使ってもらうためのマッチングがうまくできていない。
そして、資産の行き場を失い、地域外へ流出していく現状があります。次の世代や将来の課題解決への資金として市民に託すことができるように仕組みや制度をつくる必要性が出てきました。
不動産を地域課題解決のために活用するために
不動産を地域のために使ってほしいと考える人や企業がおり、地域のために、地域の課題を解決するために場所を必要とする人や団体がいる。それら不動産の受皿と活用先とをつなぎ合わせる機能を「京都地域創造基金」が担う。具体的には、
- 寄付や定借など多様な受け止め方と、税制面のメリットや寄付者の意志を反映した利活用、出口。
- 税制優遇、活用の知恵、場所を必要とする人や団体とのネットワーク
NPOに不動産(場所や建物)を提供
- NPO法人子どもセンターののさん「子どもシェルターはるの家」
- NPO法人山科醍醐こどものひろば「子どもの貧困対策事業」
京都地域創造財団による「出水町プロジェクト」
- 3階建て空きビルの所有者による社会貢献
- 1階部分を地域貢献のために提供(場所の提供)→将来的には寄付も検討
- 企業等の投資によりリノベーションを実施(資金調達)
- 1階部分をNPO支援と地域シンクタンクの拠点に利用
貨幣以外も寄付の対象になる「空き家を寄付」
寄付というと金銭がまず思い浮かびますが不動産といった資産もあるんですね。プロボノなんていうのは専門的スキルや技術の寄付といえますし、寄付の形は多様です。寄付市場の拡大とマッチング機能の強化に向けて今後の展開も注目していきたいと思います。
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