マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

「空き家課税」で空き家活用を促進

時代錯誤で本末転倒な「固定資産税の住宅用地特例(住宅用地の課税標準の特例)」

 

個人住宅の空き家はなぜそのまま放置されているのか?これはずばり、いくら老朽化した空き家でも解体して更地にするよりも(土地だけにするよりも)固定資産税が安いからです。たとえ空き家でも、住宅が建っているだけでオーナーは税制優遇を受けられる仕組みになっています。

 

この制度は「固定資産税の住宅用地特例(住宅用地の課税標準の特例)」と言い、住宅が建っている場合は課税標準が6分の1になるという税制優遇措置です(200㎡以下の場合、200㎡以上の部分については3分の1)。

 

つまり、誰も住んでおらず、管理も行き届いていない、老朽化した空き家でも税制上は「家屋」として扱われるので、その敷地は「住宅用地」となり、更地に比べて固定資産税が軽減されれます。空き家を売りに出したり、貸しに出したりすれば活用の可能性は広がりますが、そもそも個人住宅の空き家オーナーの7割は空き家を放置しています。本当に老朽化して破損していて管理に困る空き家であれば解体して更地にするしかない。しかし、更地にすると税制優遇が受けられなくなるため空き家をそのまま放置することがオーナーにとって「とりあえず大損しない選択」になってしまっています。住宅として使われていない空き家は本来この優遇措置は受けるべきではありません。

 

この税制優遇措置は人口増加、経済成長、不動産価値もどんどん上がる高度成長期に作られた制度です。現在は皮肉な事にどれも正反対ですね(人口減少、経済停滞、不動産価値はどんどん下がる)。

 

空き家対策法案では「住宅用地特例の扱い」は調整つかず

 

議員立法による空き家対策特別措置法案は自民・公明両党がまとめて、秋の臨時国会での成立を目指しています。しかし、肝心の「住宅用地特例の扱い」に関しては不透明な状況です。

 

法案では固定資産税の扱いなどについては「必要な税制上の措置その他の措置を講ずる」としただけではっきり示していない。優遇措置をめぐっては、解体・撤去した所有者には「そのまま軽減を続ける」「適用期間を区切って軽減する」「軽減を続けた場合は先に自主的に撤去した所有者と不公平が生じる」「空き家になった時点で優遇措置からはずす」――などさまざまな意見が出ている。

各党とも基本的には法案について賛成の意向を示しているが、一部野党からは固定資産税の特例の扱いをどうするか、方向性をはっきりさせるべきとの声が出ている。このため与野党はこの夏に自治体などから意見を聴くなどして国土交通省、総務省や税務当局などを含めて詰めの作業に入り、秋の臨時国会にも提出、15年度の税制大綱に固定資産税の扱いについても盛り込みたいとしている。

増え続ける空き家 防災、環境面で深刻な問題に 自治体の対策支援へ秋にも特措法制定[特集] | 毎日フォーラム~毎日新聞社 | 現代ビジネス [講談社]

 

イギリスでは「空き家課税」を導入している

 

イギリスでは2年以上、空き家のままにしていると増税したり、利用権を取り上げたりできるなど、結構強行です。

 

イギリスでは、「空き家解消」のための厳格な制度がつくられています。獨協大学教授の倉橋透さんによると、2年を超える空き家について、正当な理由がない場合、日本の固定資産税にあたる税金を150%引き上げるだけでなく、自治体が空き家の利用権を取り上げてカギを取り換え、第三者に提供できる、という制度(EDMOs=空き家管理命令)がつくられているそうです。2013年からで、まだ実施例は少ないとのことですが、イギリスの自治体の持つ強い権限を物語っています。

「空き家」を地域コミュニティの交差点に - 太陽のまちから - 朝日新聞デジタル&w

 

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写真は建物解体のイメージ写真(うちの近所)

 

「空き家課税」の是非

 

不動産コンサルタントの長嶋修さんは「空き家課税」の提案をしています

 

空き家をただ放置しているだけの不作為を除外するのが目的です。「3年」「5年」など一定の期間を条件としておけば、売却や賃貸で市場に出すなど努力しているが空き家になっているケースを課税から除外できます。賃貸に出すなど、住宅として活用されている場合に限り、先の固定資産税軽減措置が適用され街の価値を毀損する放置空き家はさらなる課税対象とするのです。

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)p56

 

一方で、「住宅が完全に飽和している現代において」「無理やり流動化を促すような施策」は受け入れられないとする考えもあります。

 

かつてのように住宅に対して強いニーズがあった時代ならばともかく、住宅が完全に飽和している現代において、無理やり流動化を促すような施策は受け入れられるものではありません。

空き家問題 (祥伝社新書)p160

 

今年7月のほど同時期に出版された数少ない「空き家問題」を扱った2冊の新書で「空き家課税」について真逆の考え方であることは面白いです。

 

空き家問題は<中略>多くは日本社会の構造改革の影響が色濃く出ているように感じられます。「売れない」から流動化できない、「貸せない」から活用できない、そして「解体」したら税金負担に耐えられない、だからそのまま放置されているのです。

それを無理やり更地にしたり流動化するように「追い出し税」を課したところで、今後続々生まれてくる空き家に対する問題解決にはなっていないと言わざるをえないのです。

空き家問題 (祥伝社新書)p162-p163

 

まとめ

 

空き家課税についてぼくの意見としては、まずは「住宅用地の特例措置」税制を現代に合ったものに改正して空き家の流動化を促すことが先決かなと思います。しかし、空き家対策特別措置法案の中に盛り込まれるかは不透明なので、国に先駆け自治体単位で独自に空き家課税を導入するのも必要だと思います。問題を先送りにしても悪化の一途を辿る空き家問題。ならばハレーション覚悟で対策に取り組むことはむしろ他自治体のお手本になるので、先に空き家課税を導入した自治体は重宝されると思います。

 

関連書籍はこちら。

 

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)

 

 

 

空き家問題 (祥伝社新書)

空き家問題 (祥伝社新書)

 

 

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