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空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家の増加を助長する不合理な税制優遇は今すぐアップデートを(固定資産税の住宅用地特例)

今朝の日経電子版に、空き家化を助長する、現代では不合理となった税制優遇を問題視する記事が掲載されています。

空き家放置が合理的 新築優遇、人口減で裏目に :日本経済新聞

空き家把握、自治体に権限を いびつな税制が撤去阻む :日本経済新聞

(日経電子版の有料記事は登録しないと閲覧できないと思うので以下、重要なポイントを書いていきます。)

 

空き家のままにしておく理由

 

今年5月、東京都大田区の木造2階建ての築46年のアパートが「行政代執行(本来ならば空き家オーナー自身が必要な修繕や解体などを行うべきところ、行政庁(この場合は大田区)からの再三の忠告にもかかわらず、対応がなされていないために行政庁が強制的に解体すること。解体費用は空き家オーナーに請求する。)」により取り壊されました。なぜ空き家オーナーは放置していたのでしょうか。

 

朽ち果てたアパートをなぜ放っておいたのか。東京都板橋区に住む持ち主の男性(94)に聞くと意外な答えが返ってきた。「取り壊して更地にすると土地の固定資産税が跳ね上がるから」

空き家放置が合理的 新築優遇、人口減で裏目に :日本経済新聞

 

そう。空き家を解体して更地にすると、土地にかかる固定資産税が6倍に跳ね上がるからです。

 

固定資産税には、住宅が建っている土地の税額を本来の6分の1に抑える優遇措置がある。大和荘の約150平方メートルの土地にかかる固定資産税は今年度まで約8万円だったが、更地になる来年度からは優遇が減って約30万円になる。

空き家放置が合理的 新築優遇、人口減で裏目に :日本経済新聞

 

土地の上に建物を建てることを促進してきた土地政策がもはや「住宅余剰」「空き家の増加」といった現象を助長してしまっているのが現状です。

 

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画像引用元)空き家を放置していた理由は「取り壊して更地にすると土地の固定資産税が跳ね上がるから」。

 

時代性を欠いた不合理な税制優遇

 

そもそもこの税制優遇が始まったのは高度成長期の1973年です。当時から経済・社会情勢は目まぐるしく変化しているにもかかわらず40年間同じ制度のままです。

 

税の優遇措置が始まったのは高度成長期の1973年。人口増に住宅の供給が追いつかず、農地などの宅地化を進める目的で取り入れた。それが「いまでは空き家を撤去せずに放っておく誘因になってしまった」(富士通総研の米山秀隆上席主任研究員)。

空き家放置が合理的 新築優遇、人口減で裏目に :日本経済新聞

 

空き家率13.1%。全国の空き家戸数757万戸。そのうち181万戸は腐朽・破損しています。つまり全国の7、8軒に1軒は空き家で、さらに空き家の4軒に1軒は腐朽・破損しています。

 

不合理な税制優遇の見直しはいつ

 

国会で空き家対策特別措置法の整備を進めている自民党の空き家対策推進議員連盟によると、市町村に空き家の状況把握のための立入り調査権限を付与したり、固定資産税の納税者情報を利用できるようになるなど、市町村の空き家対策は前進しそうな兆しです。しかし、固定資産税のいびつな優遇の見直しについては空き家対策特別措置法案には「必要な税制上の措置を講ずる」と書かれてあるだけで、はっきりしません。

 

「もうひとつは固定資産税のいびつな優遇の見直しだ。現行制度では、ボロボロでも家が建っていれば土地の固定資産税が6分の1に抑えられる。これが空き家の撤去を阻んでいるといわれる。たとえば更地にしても3年間は優遇を続けるとか、逆に空き家になれば優遇をやめてしまうとかいろんなアイデアがある。法案には『必要な税制上の措置を講ずる』としか書いていない。制度設計は税制改正プロセスで議論すればいい」

空き家把握、自治体に権限を いびつな税制が撤去阻む :日本経済新聞

 

徐々に空き家問題の真相があぶり出されてきた

 

税制優遇を見直すことで税収減とか、空き家の認定業務が増えるとか、自治体側からすると現代風に制度をアップデートするのは結構なパワーが必要なんだと思います。「このままでいいよ」という現状維持派を巻き来んで制度改正していくプロセスはかなり骨が折れる作業だと思います。ならば、空き家問題について社会の関心が高まる今だからこそ見直すグッドタイミングです。空き家対策特別措置法案が今年秋の臨時国会に提出予定、5年に1度の住宅・土地統計調査結果が7月下旬に発表され、最新の空き家データが公開される、都内23区初の老朽空き家代執行が行われ、「空き家放置の理由は不合理な税制優遇だった」ことがわかった、などなど徐々に空き家問題の真相があぶり出されています。

 

各党とも基本的には法案について賛成の意向を示しているが、一部野党からは固定資産税の特例の扱いをどうするか、方向性をはっきりさせるべきとの声が出ている。このため与野党はこの夏に自治体などから意見を聴くなどして国土交通省、総務省や税務当局などを含めて詰めの作業に入り、秋の臨時国会にも提出、15年度の税制大綱に固定資産税の扱いについても盛り込みたいとしている。

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