欧米型バケーションスタイルで地域経済を潤す
日本の企業文化では有給休暇を取ることが悪であるみたいな風潮がまだまだ根強いです。それに引き換え欧米では1ヶ月単位のまとまったバケーションが珍しくなく、経済大国ドイツでは年間30日の有休休暇を消化し、たとえ仕事が残っていても休みます(もちろん仕事が残っている原因を考えて解決策を出してから)。
そして欧米ではロングバケーションなので滞在期間が長いため、旅行先の地域のスーパーなどで買い物をして自炊したり外食したりするので地域経済にとって良い影響をもたらします。
欧米型バケーションのメリットは、滞在期間が長いから、旅行者が“地元民”になることだ。つまり、地元で買い物をして自炊したり、外食をしたりするのでスーパーやレストランが繁盛し、地元経済が潤うのである。
日本では「1泊2日夕食・朝食付き」が基本、飲食やお土産購入など旅館内で完結してしまう
日本ではそもそも長期間休めなかったりしますが、基本的な旅行スタイルは「1泊2日夕食・朝食付き」の旅館やホテルに泊まるというのがオーソドックスだと思います。で、旅館やホテル内にレストランやバーとか土産物屋なり一通り揃っているので、そこで消費する分、地元の飲食店や土産物屋の売り上げは下がります。
一方、1泊2日が基本パターンになっている日本の場合、観光地の旅館の大半は「夕食・朝食付き」が原則で、素泊まりや朝食のみの宿泊ができない。しかも、宿の中に土産物屋やカラオケルームなどがあり、すべて旅館内で完結するので宿泊客は一歩も外に出ることがなく、町が寂れてしまう。
「空き家を観光客の宿泊施設に」は現行法令上は違反→ならば「空き家を観光客に一定期間使用レンタルする」
ということで各地域に点在している空き家を活用して観光客の宿泊施設として使うことができないかと考えています。しかし、旅館業法などの規制があるため、文字通り「空き家を観光客用の宿泊施設として使う」ことは現行法令上は違反となる可能性が高いです。
”個人住宅・賃貸物件の空き家を観光客の宿泊施設に”空き家を活用して観光立国を実現する - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ
そこで、実例を出しながら「空き家を観光客に一定期間使用レンタルする」という契約形態の可能性を探りたいと思います。
実例1.株式会社STAYCATIONの「一日一組の貸し別荘」
株式会社STAYCATIONでは「空き家を貸し別荘にする」というプロジェクトに取り組む不動産サービス会社です。
(画像引用元)暮らすように旅する新しいスタイルのバケーション。
つまり空き家に泊まることで、単純に立派な旅館やホテルに泊まるだけでは味わえない、地元ならではの生活や歴史、文化といった生活の一端を体験できるというサービスです。
そして普通の旅館やホテルと違うところは「建物をたくさんの人たちで一日一組ごとに借り合う、区分賃貸(賃貸を準共有する)という考え方で、一軒家を共有する仕組み」により「住宅を一時使用の賃貸借の集合体」としているところです。
(画像引用元)街に”暮らし(stay)”+”旅する(vacation)”。
もう少し具体的に言うと、同じく株式会社STAYCATIONが手がける「海辺のリゾート貸別荘Nowhere resort」の使用形態は「一時使用を目的とした賃貸借契約」という契約形態を取ることで通常の旅館やホテルとは一線を画したサービスとなっています。
(画像引用元)ホテル・旅館等と異なり、お客さんに対して物件を”一時的な生活の本拠として賃借するもの。
実例2.京町家ステイの「町家で過ごす、暮らすような滞在を体験」
京町家ステイとは京町家を一棟貸切にすることで「暮らすような滞在を体験」することができるサービスです。
(画像引用元)「期間を定めた賃貸借契約」ということで普通の旅館と違う。
2010年8月に京都市が市内全域を対象に京町家の実態調査を行った結果、約5万軒残存していますがそのうち10.5%が空き家。さらに毎年2%(1000軒程度)の割合で取り壊されています。
そんな減り行く京町家に誰もが「京町家暮らし」の体験を楽しめるようにとつくられたのがこのサービスです。
(画像引用元)ホテルや旅館と違い「期間を定めた賃貸借」。
実例3.飛騨里山オフィスプロジェクトの「古民家サテライトオフィス」
飛騨里山オフィスプロジェクトは、飛騨の古民家をサテライトオフィスとして貸し出すサービスです。さらに生活に必要な道具も備えてあるので旅行でのステイからリゾートオフィスとしても使えます。
イケダハヤトさんが実際に一週間滞在されました。
飛騨古川「里山オフィス」に一週間滞在したわけですが、豪邸すぎて文豪になった気分でした : まだ東京で消耗してるの?
(画像引用元)クリエイティブな滞在スペース。
旅館やホテルのような宿泊や食事サービスに主眼を置いたものではなく、空き家となっている古民家や伝統的価値のある民家の位の体験やサテライトオフィスとしての活用が趣旨です。そのためまるごと貸し出しのため「期間を定めた賃貸借契約」を結びます。
(画像引用元)民家1棟まるごと賃貸。
「期間を定めた」「使用目的」「賃貸借」
以上見てきたように、宿泊というスタイルではなく「期間を定めた使用目的賃貸借」という契約スタイルを取ることで別荘や京町家、古民家などの空き家を活用することが可能です。そしていずれも「暮らすように旅する」新しい旅行スタイルを実現しています。このような契約形態ならば旅館業法を始めとする既存の法令にも抵触することなく、空き家を観光客に一定期間使用レンタルすることが可能になります。
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