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空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家問題と相続とは密接な関係、親が子どもたちに持ち家をどうしてほしいか事前に話し合うことが大事:ざっくり分かる!NPO法人空家・空地管理センター事務局長が語る、空き家問題の現状

放送日:2014年7月29日

番組:NHK総合、NEWS WEB

 

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画像引用元

 

7月29日に最新の「総務省住宅・土地統計調査」が公開され最新の空き家率が出て、空き家問題について社会的に関心が高まり始めています。

最新の空き家率は過去最高の13.5%で7戸に1戸が空き家だけどピンチをチャンスに! - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

 

そしてその翌日である7月30日に「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)の著者であり不動産コンサルタントの長嶋修さんがゲスト出演してラジオで空き家問題を語りました。

空き家を放置する理由の7割が「なんとなく」:ざっくり分かる!不動産コンサルタントが語る、空き家問題の現状 | ラジおこし

JAM THE WORLD : J-WAVE 81.3 FM RADIO

 

最新の統計結果の公開はかなりインパクトがあったようでニュースや新聞、ネットなどでたくさん報道されていました。その中でも10分くらいでざっくりまとまっていたのでNHK総合『NEWS WEB』の2014年7月29日放送分を「ラジおこし」さんにならって文字起こしします。

 

日常的に空き家の所有者から空き家の管理などの依頼を受けていて「空き家問題の現場」を最も良く知る人の一人である「NPO法人空家・空地管理センター」事務局長の上田さんの丁寧な解説をご紹介します。

 

 

しゃべるひと

 

 

全国の空き家820万戸、実は身近な空き家問題

鎌倉: そもそも空き家はなぜ増えているのか?住宅事情に詳しい富士通総研上席研究員の米山秀隆さんによりますと

  • 核家族化が進行して親が亡くなっても家が引き継がれずそのままになる
  • 解体に多額の費用がかかる
  • 住宅を取り壊して更地にすると固定資産税が最大で6倍もかかる

こういったことが空き家が増える背景にあるというふうに指摘されています。

 

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石井:820万ってもの凄い大きいですよね。今日このニュースをやるということで実はうちも空き家を持っている、抱えているんですね。周りにもいるぐらいの数です。

 

鎌倉:結構そういう方も多いと思います。歩いていて空き家を見かける機会も本当に多いですからね。

 

今日はスタジオには住民や自治体から空き家に関する相談を受けているNPO法人(空家・空地管理センター)の事務局長・上田真一さんにお越しいただいています。こんばんは。よろしくお願いします。

 

上田:よろしくお願いします。

 

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石井:実際は空き家は増えていると思います。そして現時点で問題になっているわけですよね。実際に空き家があることのデメリットは地域の人々にとってどういったものがあるんでしょうか?

 

上田:私どものところによくご相談いただくのはですね。多いのは樹木が生い茂ってしまっていてそこに蜂が巣を作ってしまったりだとか、枝がどんどん越境してきてしまうとか、動物が出入りする、ごみが捨てられる・・・。

 

石井:動物ってのはどういったような?

 

上田:例えば猫ですね。野良猫が結構住み着いてしまって、臭いも異臭も出てきたりだとか、そういった人がいないことで様々なデメリットが生まれてきてしまいますね。

 

 外見はそうでもないけど建物の中は劣化が進んでいる

鎌倉:あのこちらの写真なんですけども、こちらは上田さんが実際に相談を受けた物件ということですね。

これ結構古いんですか?見た感じは(そうでもないように見えますけど)・・・。

 

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上田:そうですね。築40年位経っている建物でして見た目は外からはそうでもないんですけど、やはりちょっと屋根の上が結構雨が入ってきてしまう状況になってまして。雨が入ってくると建物はどんどん劣化していってしまいますのでちょっと強度が足りなくなっていってる。これが進むと倒壊の危険性も出てくるような(物件です)。

 

鎌倉:これあの写真で見えますか?ロープですか?屋根とベランダの手すりを縛っている状況なんですよね。

 

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上田:そうですね。こちら所有者の方にご相談いただいたのが「台風で屋根が飛ぶかもしれない」ということで。トタンの屋根だったんですけど、屋根が飛ばないようにロープで応急処置をすたという状態で、今もその状態が続いているというお宅です。

 

石井:例えばよく台風のときに屋根が飛んだなんていう話がありますよね。普段完全にその家が悪くてその家のせいだっていうのがわかっていれば補償とか家の人がやると思うんですけど。例えばかなり大きな台風で空き家の屋根が飛んで怪我した場合とかっていうのは誰が一体補償してくれるんでしょうか?

 

上田:例えば大きな地震とか台風とかで周りも一緒に被害が出てしまっているっていう状況になるといたしかたなかったねという状況で。結局、誰が補償するというわけでもなく。天災という形で。

 

石井:そこにいた自分が悪かった。治療費も自分で払わなければならないと。

 

空き家の増加が地域全体の資産価値を下げる、管理が不十分だとゴミの投棄などエスカレートしていく悪循環

石井:その中で現時点でコミュニティの中で資産価値という事に関しても色々問題があるとお聞きしたんですけども。

 

上田:そうですね。例えば自分が空き家の隣に家を持っていると考えていただくとわかりやすいと思うんですけども。木とか凄い生い茂っていて屋根も崩落している空き家の隣に家を買いたいと思う方ってあまりいらっしゃらないので。そうすると値段が2割とか3割とか下がってしまうケースは多くあります

 

石井:そんなに下がるんですか。

 

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鎌倉:つまり自分が空き家の持ち主じゃなくても、その近くに住んでいる人であればその人の(土地・建物の)資産価値も下がってしまうんですね。

 

上田:そうですね。特に管理されていない空き家なんですけどもそういったものが地域に増えてしまうと、地域全体の資産価値が下がってしまうという原因になります

 

石井:それは雰囲気とか、さっきおっしゃっていた猫がいるとか。

 

あと放火が凄く多いとか。前にちょっとお聞きしたんですけど、火事の一番の原因が放火で、その中で最も放火されやすいのが空き家であるというような話を聞いたんですけど、なんでそういったことが起きるんですか?

 

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上田:やはりあの、先ほど話したようにゴミの投棄があったりだとか、あとはポスト(の郵便物)誰も取る方がいらっしゃらないでそこに紙が詰まっているとか。そういったところに敷地内に入らずに放火出来てしまったりだとか。あとは放火でなくても煙草をポイ捨てしてしまってそこに偶然枯れた草がそのままだったり、投棄されたゴミがあったりっていうので火事になってしまうっていうケースは多いですね。

 

石井:それは僕も今言われて思い出しましたけども、学校の帰り(道に)あったんですよ空き家が。そうするとそこに小学生のときなんて学校でもらったプリントを捨ててあったりね(笑)。

 

鎌倉:小学生ですよね?

 

石井:でも実際に空き家っていうのは物を捨てる場所になりやすいですよね。

 

鎌倉なんとなく捨ててもいいんじゃないかなとなっていっちゃう。

 

上田:やはり人の目がないので、注意をする人がいないというか、そういう風になると一つゴミがあるとまたゴミがゴミを呼んでくる形でどんどんエスカレートしていってしまうというのはあると思いますね。

 

空き家と相続とは密接な関係、所有権者が複数いると貸すにしろ解体するにしろ合意形成に多大なコストがかかる

鎌倉:あの今ツイートで「家が余っている一方で住む家がなくて困っている人がいる。どうにかして両者をうまくくっつけられないのかな?」という素朴な疑問がありますけれど、これはじゃあ空き家を抱えている人は貸したり出来ないものですかねぇ?

 

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上田:そうですね。例えばですね、私どもの場合多いのが「元実家」っていうケースが多くてですね。これを相続をされたご兄弟で共用しているっていうパターンが多いんですね。そうすると家を貸すためには所有者全員の合意が必要になってきたりだとか。あとはまだ仏壇が置いてあるだとか。あとはその昔からの思い出がまだ全部残っていて遺品の整理が出来ていないとか、そういうケースでなかなか「じゃあ、貸しましょう」という形にもなかなかなりにくいというのが現状です。

 

石井:僕さきほど空き家を所有していると申し上げましたけれど、あれなんかはですね、親戚なんですけども親戚がかなり高齢になって、んで老人福祉施設に入ったんですよ。そうするとそこは空いちゃうわけですよね。そのおばあさんはまだ生きているので、そうすると(家を)潰すわけにもいかないんだけども古いのに10年ぐらいあれになって(老朽化して)本当倒れそうなんだけど潰せないっていう・・・。これから高齢化の問題なんてありますけど(こういったケース)さらに増えるような傾向って今みたいな原因であるんでしょうかね?

 

上田:そうですね。やはり空き家の問題というのは相続の問題と密接に関係していますので、例えば施設に移ってしまっただとか、相続が起きて新しい方たちに(所有権が)移っていったとしても共有者の合意が得られずにそのままの状態で長く置かれてしまうっていうのはあると思いますね。

 

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空き家適正管理条例を根拠に各自治体では対策に乗り出す、しかし解体費用500万円などコストが多大

鎌倉:こういった状況の中、行政としても対策に乗り出していまして国土交通省によりますと、空き家の適切な管理について定めた条例を制定している自治体というのは今年の4月1日現在、355に上っているんです。

 

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ナレーション:去年、空き家対策の条例を施行した東京都大田区。今年5月には法律に基づき強制的な撤去に初めて踏み切りました

 

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老朽化して屋根の一部が剥がれ落ちるなどしていたため再三、安全対策を勧告したものの所有者が応じなかったためでした。

 

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かかった費用はおよそ500万円。所有者に請求する予定ですが回収のめどは立っていないということです。

 

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石井:(「解体にお金かかりすぎる」というツイートを見ながら)こういうツイートがありますけど1回500万円。行政は全てこれを(老朽空き家の強制撤去)出来るんでしょうか?

 

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上田:やはり行政代執行というものはなかなか費用の回収が難しいという側面があるので、空き家問題をこの行政代執行を使って全て解決していくというのは無理があるかなと思います。

 

石井:現実、かなり(行政代執行)されているんでしょ?国(地方自治体)が負担して解体というのはあるものなんでしょうか?

 

上田ケースとしては非常に少ないですね。例えば先ほど820万戸の空き家という調査結果が出ていましたけど、全国でも100はいかないんじゃないでしょうか。

 

石井:たったそれだけですか。それはどういった所が優先されてるんですか?

 

上田:やはりですね。子どもの通学路になっているだとか、人がたくさん通る大通りに面しているとか、もしくは線路の裏とかですね、そういったインフラの部分に影響が出てくるような場合っていうのは優先して行政代執行されているというのが現状です。

 

鎌倉:本当に切羽詰まった所から(行政代執行される)というのが現状なんですね。

 

今後必要な空き家対策は「空き家をどのように管理していくか」「空き家状態をいかに脱するか」親と子とで相続に関する事前の話し合いを

鎌倉:あの、ツイートでこんな声があります。「建てる前から不安になります。将来、土地やら建物、マンションをどうするのか。相続人がいない。」

空き家は増え続けているわけですけどもこの問題どうやってじゃあ解決していけばいいんでしょうか?

 

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上田:そうですね。やはり「空き家を作らない」というのはなかな社会構造上難しいので「出てくる空き家をどういう風に管理をしていくか」、あとは「空き家になってしまったものをどうやって早くその状況から脱せられるか」という所だと思うんですよね。

 

なので空き家というのは所有者の方の実家になりますのでそういった方たちがきちんと話し合いをするというのが一番重要かなと思います。

 

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鎌倉先延ばしせずに話し合いをなるべく早めにしていくと。

 

上田:特に親の方が子どもたちにこの家をどうしてほしいかという部分を直接伝えていくということが大事だと思います。

 

鎌倉:増え続ける空き家の問題についてNPO法人(空家・空地管理センター)事務局長の上田真一さんに伺いました。ありがとうございました。

 

上田:ありがとうございました。

 

(放送後記メモ)

鎌倉さんの静岡の実家は親が引っ越して数年空き家だったそうで、売りに出していたのですが駅から遠い(30分)、スーパーも近くにないということでずっと売れなかったため放置状態だったそうです。そうしたら空き巣が入るという事件があったそうで。現在は最近ようやく買い手が見つかったそうですが、やはり放置された空き家というのは犯罪や不法投棄、放火などの温床になります

 

石井さんからは、ある出版社から「廃屋マニア」用の本(写真集)が出版されるというお話がありました。「鉄道オタク」みたいな感じで「廃屋の固定ファン」は確実にいるので売れる部数がわかるからビジネスになる(確実に売れる)。これは「古民家マニア」がいますよね。

 

そして石井さんは作家ということで文学チックなお話に。上田さんのお話にもあったように「廃屋」に子どもが入ってしまうとかっていうのは何か少年心をくすぐる不思議な場所なのかもしれないとのこと。石井さんいわく「廃屋」はグレーゾーンスポットというか民俗学で言う「境界」「周縁」の概念に当たる部分だと思う。だから物が捨てられる。なるほど、こういう捉え方も面白いですね。

 

石井さんはエロ本などをよく近所の「廃屋」に捨てていたそうで、小学校6年のときに初めて親に見つかったエロ本が「プレイボーイ」だったそうです。それから20年経って作家になって初めて大きな連載を持ったのは「プレイボーイ」だったというドラマチックな展開。”廃屋のロマン”を感じます。(注)この番組で伝えたかったことはあくまでも空き家の放置を解消しましょうということです。

 

ただ「空き家活用」についてはこの民俗学の捉え方や廃屋のロマンといった部分が大きな魅力につながるのも確かだと思います。空き家の適切な管理が必要という地域社会に求められる部分と空き家を活用して文学的に表現していくっていう部分。特に空き家活用には”遊びの要素”も大切かなと思いました。

 

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NPO法人 空家・空地管理センター【月々100円で管理できます】

 

番組情報

NHK「NEWS WEB」|総合テレビ 月~金 23時30分~24時00分(祝日も放送)

 

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