マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

住宅が価値を持つ条件とは

”フローからストックへ”舵を切り出した住宅政策

 

現在の住宅市場には全体計画が存在しませんが住宅政策の指針として「住生活基本法」(2006年施行)という法律が定められています。この法律がつくられた理由は人口・世帯数減少と空き家が増加している状況において住宅政策を転換する必要が生じたということです。

 

つまり新しい建物を「作っては壊す」という住宅政策は環境への負荷や欧米に比べて短い住宅寿命長期間の高額な住宅ローンなど問題が多いため方針転換を図ったということです。

住生活基本法 - Wikipedia

 

中古住宅流通市場の制度改革もだんだん本格的になってきています。

 

2013年6月には国土交通省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定したほか、2014年2月には長期優良住宅化リフォーム推進事業も始まった。消費者が安心して中古住宅を購入できるような環境づくりを目指す取り組みが、ようやく本格的に動き出したといえる状況だろう。

中古住宅流通市場の制度改革が動き出した!これからの中古住宅に消費者が望むものは? | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】

 

こうした状況の中、住宅の資産価値を維持・向上していくような意識や知識・ノウハウが住宅オーナーにますます必要とされるようになると思います。

 

住宅が価値を持つ条件

 

不動産コンサルタントの長嶋修さんの著書「これから3年 不動産とどう付き合うか」からメモします。

 

(1)履歴

 

まずは「各種書類が整備されていること」が大前提です。書類がなければ適正な評価の土台に乗りません。

これから3年 不動産とどう付き合うかp126

 

具体的には設計図書(竣工図書)は必須で、工事の際に必ず施工者から譲り受ける必要があります。現実には売り主が新築時の竣工図書を保有しているケースは意外と少ないようです。有償で建築士などの専門家に図面を起こしてもらうこともできますが、詳細図の作成には限界もあるようです。修繕やリフォームを行った図面や契約書類も必ず大切に保管することが重要です。

一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会

 

(2)点検とメンテナンス

 

建物は当然時間の経過に従い、劣化します。劣化を放置していれば、さらなる劣化を招く元凶になります。また、雨漏りや水漏れなどの問題が発生してから補修を行う対症療法より、未然に防止するほうがコストも低くなるし、結果として建物の寿命も延びます。こうした建物のメンテナンスの努力が中古住宅の評価につながります。

これから3年 不動産とどう付き合うかp130

 

例えば「点検口の有無」を事前に業者に確認して、点検口が突いていない場合は近所の工務店に依頼して設置してもらったり、年1回は建物の一通り点検を行うなど地道な取組が必要です。今後、中古住宅流通市場が広がっていけばこうした地道な点検とメンテナンスをやっている中古住宅は高い評価を得ることになると思います。

 

(3)建物の形状

 

複雑な形状の建物は必然的に角や隅の部分が多くなるため、その分だけ雨漏りの可能性を増やします。例えば外壁の大規模修繕などを行う場合、たくさんの足場を組む必要が生じます。修繕費の内訳を見ると、およそ半分以上がこの足場代ですから、複雑な形状の建物は足場代がかさみます。

これから3年 不動産とどう付き合うかp132

 

望ましいのは「直方体」などシンプルな建物だそうです。清掃や点検、修繕のしやすい形状の建物のほうが良いということです。

 

(4)素材

 

大切なのが、建物に使われている「素材」です。メンテナンス期間が長い素材や仕様であるかどうかということです。

これから3年 不動産とどう付き合うかp132

 

部品などが破損して交換が必要になった場合、取り寄せるのに時間がかかったりするのは避けたいです。汎用性の高い素材を使うことがポイントです。

 

(5)省エネ性

 

遅ればせながら、日本でも20年にはすべての新築住宅について省エネ基準が義務づけられることになっています。そのレベルはまだ決まっていませんが、エネルギーコストの一層の高騰が見込まれる中、世界のトレンドは「省エネ」で、この流れに日本も追随していくこととなるでしょう。

そうなれば、省エネ性の高い住宅は住宅ローン金利や各種税制で優遇されることとなり、資産性も保たれやすくなります。もちろん、光熱費を抑制できランニングコストは低くなります。結露などの不具合も起こしにくいことから建物の寿命も延びます。

これから3年 不動産とどう付き合うかp133

 

省エネ性能が高い住宅ほど税制などが優遇されるなど資産価値の向上にもつながるということです。火力発電に代表される化石燃料依存を減らすためには高い省エネ性能が求められます。

  

関連記事はこちら。

住宅はオーナーが適切な点検と修繕を意識的に行えば資産になる - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

日本の住宅市場には全体計画が存在しない - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

必要以上に新築を造りすぎる理由は「日本の新築住宅建設は景気対策の道具だから」(そもそもなぜ空き家が増えるのか?) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ