「空き家率」だけでは空き家問題の実態はわからない
「空き家問題」というと過疎化、人口減少、高齢化を抱えている地方での課題と思う方も多いと思います。現に(別荘等の二次的住宅を除いた)「空き家率」が高いのは上から山梨県、愛媛県、高知県などです。全国平均の空き家率13.5%を軒並み上回っています。埼玉県、神奈川県、東京都といった大都市の「空き家率」10%前後と全国的に見ると低いです。
(画像引用元)空き家率=総住宅数に占める空き家の割合。
しかし「空き家数」で見てみると、
山梨県 : 92,900戸
愛媛県 :123,400戸
高知県 : 69,800戸
埼玉県 :355,000戸
神奈川県:486,700戸
東京都 :817,200戸
ということで圧倒的に地方より大都市の「空き家数」は多いです。そもそも大都市は人口も多ければ住宅数も多いのでこのような結果になります。
この東京都の総空き家数817,200戸という数字は、
世田谷区と大田区にある全ての住宅の数を足した数(813,200戸)よりも多い数字となっております。
※世田谷区と大田区の住宅数は平成20年の数値です。また、全国で16番目の人口を有する長野県の全世帯数よりも多い数値(793,000世帯)ですので、
数字の上では長野県に住む全ての人が東京の空き家に移住できる計算になります。やはり大都市は母数となる総住宅数が多いので、空き家率が平均(13.5%)以下であっても
実際の空き家数は多くなっています。
東京では単身世帯の増加に住宅供給が追いついていない
東京都が今年3月に発表した都内世帯数の長期予測によると一人暮らしの増加で世帯数は2030年まで増え続けるとしています。
都は国勢調査をもとに世帯数の長期予測を5年に1度発表しており、今回は10年の国勢調査を前提に予測した。総世帯数は30年に685万6千に達すると予測しており、10年より約50万世帯増える。
その多くは単独世帯の増加によるもので、中でも65歳以上の一人暮らしは30年に96万3千世帯と10年より30万世帯以上増える。若年層でも晩婚化が進み、単独世帯は30年に全体の47.2%に及ぶという。
現時点でも単身世帯が全体の半数近くに上っています。
(画像引用元)
一人暮らしの高齢者が安心して住める住宅が少ない、というか空き家はあるのでうまくマッチング出来ていないという問題があります。
東京では住宅のミスマッチが起きている。単身世帯の増加に住宅供給が追いついていないのだ。特に顕著なのが一人暮らしの高齢者。東京では全世帯の約46%を単身者世帯が占め、そのうち約4軒に1軒に65歳以上の居住者がいるが、一人暮らしの高齢者が安心して住めるすまいは少ない。空き家が増え続けているにもかかわらずである。
空き家を高齢者向けの自立援助ホームとして有効活用している「NPO法人自立支援センターふるさとの会」がこうした都市部ならではの空き家問題の解決に取り組んでいます。
ふるさとの会は1990年から単身の生活困難者の支援を続ける。単身困窮者が地域で住み続けるためには住宅支援が不可欠。その中で空き家の活用に行き着いた。現在ふるさとの会の支援をうける単身困窮者は1134人。約7割が60歳以上で、ほとんどが生活保護受給者だ。
(画像引用元)
アパートなどに空き室があったとしても、一人暮らしの高齢者は部屋を借りづらいため「家賃保証」をふるさとの会が担当します。そして「トラブル対応」や食事の提供、日常生活の支援なども含めた「ケア付きの住まい」 を提供しています。
ふるさとの会常務理事の滝脇憲さんは「いかに大家さんの不安を解消するか。それさえできれば、単身高齢者でも借りられる空き家は多い」と語る。重要なのは、単なるマッチングではなく、生活支援や見守りといったソフトを同時に提供することだ。現在では空き室に悩む貸し主側から依頼を受けて、アパートの管理を一括受託する案件も出てきた。
空き家は地域の資産
大都市部では単身世帯、特に単身高齢世帯の急増が避けられない状況の中、大量にある空き家を上手く有効活用する取組が急務です。
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