マネーの羅針盤というテレビ東京の番組で「空き家特集」していました。要点をまとめます。
しゃべる人
- 蟹瀬誠一さん
- 秋元才加さん
- 塩田真弓さん
- 牧野知弘さん
空き家急増
塩田:現在の空き家数は800万戸を超えています。2020年東京オリンピック後、空き家は急増します。国土交通省は2050年に1500万戸以上(3軒に1軒以上)が空き家になると試算しています1。
大都市東京で空き家が増加しているのはなぜ?
蟹瀬:海外でも空き家問題はあるが、大都市であり首都である東京で空き家が問題になっているのは非常に珍しい。首都に人は集中しているのに空き家が増えているのはどういうことですか?
牧野:東京の空き家率は11.1、全国平均が13.5%なので少ない数字だと考えがちです。東京は非常に人が多いです。空き家を実数に置き換えますとなんと80万戸が空き家になっているのが今の実態です。
蟹瀬:80万戸!東京というと23区が中心になっていますけど。
牧野:はい。そのうちの7割が23区の空き家と言われているんです。
蟹瀬:意外ですね。
豊島区が進める「リノベーションまちづくり」
塩田:深刻化する空き家問題。都内でも今後を見据えた対応が始まっています。
ナレーション:日本でも有数の繁華街・池袋を有する東京都豊島区。ところが今年5月、有識者から成る日本創成会議から都内で唯一、消滅の可能性がある自治体として名前が挙げられました。一体なぜ?
実は現在、豊島区には2万を超える空き家が存在。さらに、65歳以上の一人暮らしの高齢者が多く、将来的に空き家数が増加するであろうことが懸念されています。
塩田:この現状に豊島区はどのように取り組んでいるのでしょうか?
豊島区担当者:豊島区としては「リノベーションまちづくり」を推進していきたいと考えています。
塩田:既存の建物を改修して魅力あるものに変えるリノベーション。家主からすると建物の価値を高めることが出来、借り手は間取りや内装など自分の好みに出来るというメリットがあります。
ナレーター:豊島区は区内の空き家に共同住宅が多いため、施策の焦点を共同住宅のオーナーに当て、空き室を入居希望者のニーズに沿った物件に改修していくことを後押ししていくとしています。
そのモデルケースとなった築30年以上経つという共同住宅を訪ねました。
共同住宅オーナー:サービスを始める前は空室率は3割くらいに迫る勢いでした。人が入っていないので賃料収入が入ってこない。まぁ切実ですよね。本当に。
改装自由で空き室解消
ナレーター:そこで入居者が間取りや壁の色などを自由に選べるリノベーション物件に転換しました。
共同住宅オーナー:一年くらいで空室率3割が限りなくゼロに近くなるような状態になって今はだいぶ入居待ちが続いているような状態です。本来はより暮らしやすいというか、入居者が楽しめるような家であったり街であることが前提として大事だと思うので、そういう視点になることがたぶん大事なのかなと思います。
塩田:入居者の感想は?
入居者:(DIY改装を)やれることは全部やったので充実してますね。もう可能な限り長く住みたいと思っています。
塩田:今後、豊島区では空き家改修に必要な条例や制度を随時整備。共同住宅のオーナーなどを対象としたリノベーションスクールの開催も予定しています。
はたして全国の空き家対策の先駆けとなれるのでしょうか。
ナレーター:日本が世界で初めて直面する深刻な空き家問題待った無し。
高齢化が集中する首都圏
塩田:牧野さんにお伺いしますが、なぜ人の集まる大都市で空き家が増加しているんでしょうか?
牧野:はい。一見、首都圏と言いますと若い人が非常に多いというイメージがあると思いますが、実際には65歳以上の高齢者の方が約778万人もいらっしゃるんですね。このうち団塊の世代といわれる1947年〜49年にかけて生まれた方が約256万人いらっしゃいます。
蟹瀬:我々がね、若いとき、仕事を求めて大都会に来てとにかく家を持つっていうのが夢だったわけですよね。マンションに住むか一戸建てに住むか。その結果がこういうかたちで出てきている。
牧野:この方々(団塊の世代)も2020年以降くらいになりますと後期高齢者になってきます。そうしますと今住んでいる家を離れてケアホームや医療施設といったところに移って行くと加速度的に空き家が増えてくることが予想されますね。
蟹瀬:まぁ本来であれば相続されて息子さん娘さんのほうへいくっていうのが当たり前だったんでしょうけどね。今はなかなかそうはいかないようですね。相続税も上がってますしね。1月から上がりますよね。
不動産は”負動産”?
牧野:実はですね。「負動産」というように最近”ふ”の字が変わってきています。以前ですと親の家、それに都内にありますと非常に資産価値が高いというふうに言われたんですけれども、最近では親の家を相続しますと、困った厄介なもの、あるいは負の遺産というような呼ばれ方をされるようになってきています。
蟹瀬:税金を払わされるというのもあるし、不動産の価値自体もかつてのように右肩上がりで上がっているわけではないですからね。
牧野:そうですね。特に、相続が発生してしまいますと、来年の1月1日からは相続評価額基礎控除額も減額になりますし、多くの方々、特に首都圏で相続税の支払いを余儀なくされる方が増えると予想されています。
秋元:更地にしてしまったほうが楽ということはないんでしょうか?
空き家放置を助長するいびつな税制
牧野:はい。当然、空き家のまま放置しておくことは治安や景観の問題も出てきますので更地にしちゃおうという方多いんですが、今、住宅用地というのは敷地の200平米までは評価額が6分の1で税金が計算されています。これが更地になりますと住宅ではないということで税金6倍になっちゃうんですね。
蟹瀬:古い家が建っているために別の利用が出来ないということになってしまうということですね。
牧野:一般的には首都圏で家をお持ちの方、年間で税金(固定資産税)15万〜20万くらいお支払いになってますけども、これが6倍になってしまいますと当然それを賄うだけの収入も必要になってきますし、非常に大きな問題ですね。
私権が強い日本の法制度
蟹瀬:それと不動産の場合はね、当然所有者が居て所有権というのがある。所有権というとその人しか持っていないというふうになってしまうために行政も土地を処分するとか活用するとかっていうのが日本の場合不可能なわけですね。
牧野:日本は私権が非常に大きいので、この私権をもう少し柔軟にしてあげて活用、不動産を利用しようというような動きにならないと、なかなかこの問題厄介な問題だと思いますね。
蟹瀬:ドイツなんかは所有権の義務があって、公共の福祉のために使わなければいけないっていう規定がある。憲法で決められているんですけども。日本はなかなかそうはいかないんですねぇ。
牧野:そうですね。どうしても自分のものは自分のものっていうふうに考えがちですよね。
蟹瀬:これからは公と民のバランスっていうのをどうやっていくのかが空き家問題の解決の糸口になるかもしれないですね。
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豊島区の「リノベーションまちづくり」が紹介されていました。豊島区など都内23区は共同住宅の空き室が多いですから、オーナーさんの理解の上で”改装自由なリノベーション物件”にすることで付加価値を持たせています。空き室率3割が解消したリノベーション物件の事例に、空き家活用のヒントが詰まっていると思います。おそらく東池袋のロイヤルアネックスという賃貸マンションのことです。
このロイヤルアネックスの事例が豊島区のリノベーションまちづくりという試みにつながっているようです。民間がモデルをつくって行政が制度化するという流れは定式化しつつあります。
(画像引用元)
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