マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

進化するリノベーション住宅「リノベーション・クロニクル・リアルトーク」(後編)

リノベーションビジネスの発明

 

10月29日に行われたリノベーションEXPOのイベント「リノベーション・クロニクル・リアルトーク」のまとめ後編です。前編はこちらをご覧ください。前編では1975年に京都で始まったリフォームの動きから90年代には東京の裏原宿や大阪の御堂筋などでメインストリートから外れた路地裏でサブカル的に自分のお店をDIYでリノベーションしようという動きが始まってきたことについて書きました。今回は90年代後半から現在までをまとめます。まとめるといってもHOMES総研の「STOCK&RENOVATION2014」から備忘録風に書き出していきます。


STOCK & RENOVATION 2014【HOME'S総研】

 

21世紀に入り裏原系カルチャーは衰退していきますが(2000年前半に衰退し始め2006年に終焉)、リノベーションは盛り上がって行きます。口火を切ったのが株式会社アートアンドクラフトと株式会社ブルースタジオです。ますアートアンドクラフトが1998年に大阪で日本初となるリノベーション済みマンションの第1号物件「クラフトアパートメントvol.1北区同心町」を手掛けます。

 

f:id:cbwinwin123:20141106190234p:plain

ABOUT US|大阪~阪神間のリノベーションやコンバージョンならアートアンドクラフトへ!「クラフトアパートメントvol.1北区同心町」は中古マンションを買い取りスケルトン(骨組み)状態まで解体した後、リノベーション工事を施したうえで販売されたそう。

 

そして株式会社ブルースタジオは1997年に大地山博さんが創業した会社でそこに美術大学建築学科の同級生の大島芳彦さんと石井健さんが2000年・2001年にそれぞれ合流し、リノベーションビジネスを行う設計事務所としてスタートします。

 

f:id:cbwinwin123:20141106195331p:plain

ブルースタジオ:blue studio第1号物件は大島さんの実家が営む貸しビル会社の所有する賃貸マンションをリノベーションした「Tex Mex Tacos」。

 

アートアンドクラフトは建設業(施工)、宅地建物取引業(不動産)、今では古物商や宿泊業も業務メニューに加えています。もともとデザイン会社だったブルースタジオは一級建築士事務所でかつ宅地建物取引業を持つ不動産会社でもあります。複数の専門性を使って従来の設計事務所の枠内に収まらない業態を展開しています。

 

f:id:cbwinwin123:20141106200025j:plain

当日の様子。手前が大島さん。

 

「建築」と「不動産」との距離が近くなっていったこと、リノベーション費用を住宅ローンに組み込めるように金融季刊に働きかけて行ったこと、インターネットを活用して広告販促に力を入れていたこと、書籍の出版にも取り組む、などリノベーションビジネスの先駆けです。

 

R-プロジェクト、不動産証券化

 

2000年代に入るとサブカルチャー的だったリノベーションが表舞台に登場してきます。その震源地とされるのが「R-プロジェクト」です。

 

R -プロジェクトは、外資系金融機関から不良資産化したビルの再生を相談されたインテリアショップのIDÉEの黒崎輝男が、自ら主催するTDB(Tokyo Designers Block)というデザイン展示会に参加していた馬場正尊・竹内昌義・田島則行ら建築家やキュレーター、デザイナーなどに声をかけて集めた、いわば任意の研究会的な活動だった。

STOCK & RENOVATION 2014【HOME'S総研】P184

 

R-プロジェクトの活動を源流に持つCET(Central East Tokyo)というアートイベントでは、若いクリエイターやアーティストが拠点を移し、ギャラリーやアトリエ・スタジオ、そこで働く人たちが集まるカフェなどが集積するクリエイティブなエリアとして知られるようになります。

 

CETとは、神田から馬喰町・東日本橋辺り一帯の空きビルだらけで寂れていた卸問屋街を、地元の不動産オーナーたちの協力を得て空きビルにアート作品を展示して、まち全体を使って開催された期間限定のアートイベントである。

STOCK & RENOVATION 2014【HOME'S総研】P185

 

2000年代始めの頃はバブル崩壊の精算は決着しておらず、都心部には不良債権化したまま塩漬けになった不動産が無数に存在していました。そして、都心のオフィス賃料と住宅賃料が逆転しバブル期にオフィスビルによって郊外に追いやられた住宅が再び都心に戻ってくる「都心回帰」と言われる現象が起こり始めます。そこで不動産証券化が始まり、投資マネーがこの流れの大きな駆動力となっていきます。

 

東京R不動産、株式会社リビタなどプレイヤーが次々と生まれる

 

そして2000年代には「東京R不動産」「株式会社リビタ」の設立。「株式会社インテリックス」のリノベーション済み再販マンションの本格展開など様々なキープレイヤーが現れてきます。

 

社会背景としては耐震偽装問題をきっかけにした2007年の建築基準法改正、2008年のリーマンショックにより住宅不動産市場は大きなダメージを受けます。これにより2009年以降は市場の中心が実需型のリノベーションビジネスに入れ替わって行きます。

 

日本初のリノベーション業界団体設立

 

2009年7月に日本初のリノベーション業界団体である「一般社団法人リノベーション住宅推進協議会」が設立されます。そして国土交通省でも2012年に発表された「中古住宅・リフォームトータルプラン」以降、ストック重視の住宅政策が矢継ぎ早に実行に移されています。

 

f:id:cbwinwin123:20141106205350j:plain

そうそうたるメンバー。

 

最近の流れ

 

そして最近では「DIY・カスタマイズブームと施主参加型家づくり」「リノベーションまちづくり」「大手の参入」などリノベーションは今まさに熱くなってきています。

 

関連記事はこちら。

進化するリノベーション住宅「リノベーション・クロニクル・リアルトーク」(前編) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

「リノベーションEXPO首都圏」(10/25〜11/3)で多くのことを学ぶ - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ