マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

”周縁こそクリエイティブになり得る”実験的な取組が出来る場所にクリエイターは集まる

理屈は置いておいて

 

リチャード・フロリダやチャールズ・ランドリー、そして佐々木雅幸教授などが研究されていますクリエイティブシティ論はいったん置いておきます。クリエイティブシティで目指していることって、要するにクリエイターが街に集まり定着することで様々な魅力的なコンテンツが生産される。それに付随して飲食店など生活に必要な店舗やクリエイターの発表の場所なども出来る。そしてクリエイターを見に来るお客さん(ファン・フォロワー)が訪れたりサービスやプロダクトを買う。そういう点から面へとエリア一帯にお金が循環していく状態のことなんじゃないかと思います。ざっくり言うと。

 

空き家だらけだったニューヨークのソーホー地区が芸術家の街に

 

アメリカのニューヨーク市マンハッタンにあるソーホー地区は今でこそ高級の街のイメージがありますが戦後は繊維工場の市外移転などで空き家が目立っていました。しかし、1960年代から70年代に掛けて「芸術家の街」として注目されるようになっていきます。その背景にあるのが「空き家」と「安い賃料」です。キャストアイアン建築という19世紀に建てられた建物は上層階にあるロフトの天井が高く窓も大きいです。明るい部屋で大きな作品の制作が可能ということで、次第にお金のない芸術家やデザイナーたちの居住空間やアトリエとして使われるようになっていきます。

参照:ソーホー (ニューヨーク) - Wikipedia

 

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行政の後押しもあった

 

ニューヨーク市の後押し(側面支援)もありました。ロフトは本来工場であるため居住目的には使用できずソーホーは住居地区でもないため、芸術家達の居住は”不法居住”でした。最初はニューヨーク市もそういった芸術家達を排除しようとしました。しかし結局は1971年にニューヨーク市文化局などの公認を受けた芸術家に対してはロフトでの居住と制作活動を認めるようになります。

 

これは居住実績の無い空き家を不法占拠するスクワットに対する行政の関わり方のヒントになると思います。

参考:放置空き家を不法占拠(スクワット) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

 

芸術家が集まる→レストランやギャラリー、ライブハウスが出来る→お客さんが来る

 

芸術家達が集まってからはレストランやギャラリー、ライブハウスが出来てたくさんの個展や朗読会が開かれたそう。そういえばジョン・レノンはビートルズ解散後70年代に活動拠点をニューヨークに移し、ソーホーの隣であるグリニッジ・ヴィレッジのアパートで暮らし始めました。当時のソーホー地区は世紀のクリエイター(アーティスト)も集まる街だったのです!

 

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画像引用元)ソーホーにあるロックの殿堂で”ジョンレノン展”が行われたときの写真です。ネットから引用させていただきました。

 

そしてジェントリフィケーション

 

クリエイティブシティの目的は達成したと思いきや、その後は富裕層や観光客の増加でのどかな雰囲気は急速に失われるようになります。街がにぎやかになるのはいいですが、落ち着いて仕事や美術鑑賞のできる雰囲気ではなくなります。致命的なことには地価が急騰します。その結果、芸術家達は家賃が払えなくなり別の地区へ追い出されることになります。”裏原宿カルチャー”が衰退したのと同じですね。

 

ニューヨークではここ何十年かでおなじみになってしまったことだが、安い地区に若者が集まった後でそこが有名になり、地価が上がり、住民が追い出されて、最後には進出してきた高級店や高級アパートしか残らないといったジェントリフィケーション(高級化現象)が玉突き状に起こっている。 

ソーホー (ニューヨーク) - Wikipedia

 

家賃を抑制する法律を制定

 

この流れに対してニューヨーク市では1982年に住民の家賃を抑制する「1982年ロフト法」を制定して高級化(ジェントリフィケーション)によって芸術家達が追い出されないようにしています。

 

まとめ

 

”表通りではなく裏通り”、”中心ではなく周縁”。家賃が安いことだけではないと思いますが、自由な活動が出来る余地があるエリアにクリエイターは自然に集まってきます。都市の余白は狙ってつくれものでもないかもしれません。しかし、遊びの部分というか、実験的な取組を許容する環境や文化があるエリアこそクリエイティブシティになり得ると思います。

 

関連記事はこちら。

クリエイティブシティって何だよ?「創造都市論-what the hell is "creative city"!?」(前編) - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ