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空き家を活用して新しい価値をつくる

私の考える”空き家再生”「夢の賃貸住宅」学生コンテスト2014レポートpart3

空き家を活用してまちのポテンシャルを引き出す

 

さて「”空き家再生”学生アイデアコンテスト」のpart3を書いていきます。空き家をシェアする地域に開く多様な人たちが集うプラットフォーム(場)になる、そしてリノベーション(改修した上で新しい付加価値を加える)といったポイントが各発表で共通している思想というか考えのような気がします。そしてまち(エリア)の有形・無形の資源(ポテンシャル)を活かそうとしている点も大きいと思います。

part1はこちらをご覧ください。

part2はこちらをご覧ください。

 

8 Nomadic Lifestyle 夫婦の遊牧生活

早稲田大学芸術学校・行方順之介さん

 

まずは、全国にある空き家を活用して退職した夫婦が1〜2ヶ月毎に移り住む”遊牧生活(Nomadic Lifestyle)”を可能にしようというアイデア。「暮らすように旅する」Airbnbのような民泊スタイルが今後定着していけば段々広がって行きそうなアイデアです。普通のホテルや旅館と違って各地域の住宅に住むということで、まさに暮らすような旅行が出来るわけですね。キッチンやトイレ、風呂など使えて、夕飯はその地域で人気のお店に飲食しにいく、そして現地の人もいるし、地元感を味わえますね。

 

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空き家を複数の人で共同出資で借りるということで、「転貸」のスタイルをとっているようです。転貸ならば大家さんは入居者の有無に関わらず家賃収入が見込めます。その代わり改装可能・原状回復不要にするとか家賃を下げるとか、継続できる事業なのかの見極めが大事な気がします。既存の不動産市場が手を出さない空き物件に価値を見いだす取組は「MAD City」の「MAD不動産」が参考になります。 

 

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全国の空き家は約820万戸。数の上では相当な”余白”が全国に散らばっています。しかしそこは所有権の壁が立ちはだかります。使ってない、活用していなくても空き家は所有者のもの。近隣に危険や迷惑を及ぼしがちな空き家は利害関係者である近隣住民や行政が適正管理や除却を促すことが出来るようになりますが、活用については所有者に多くの裁量があります。そういう意味では危機感を持った空き家所有者とコラボしてこういった「暮らすように旅する」空き家活用ビジネスを実現できるのかもしれませんね。やる気のある空き家所有者さんよ来れ。

 

こちらは「住宅新報社賞」。対象を「退職した夫婦」に絞っていましたが全世代的にニーズはあると思います。会社に縛られた働き方だとなかなかまとまった休みは困難かもしれませんが。でもこの空き家活用ビジネスが広がれば旅行者も空き家所有者も地域(宿泊して飲食すればお金も落ちる)も嬉しいという「三方良し」です。

 

9 週末店主のための週末住宅

日本福祉大学・黛純平さん

 

平日は会社員など定職を持ちながら週末に自分の趣味や好きなことを活かし店主として店に立つ「週末店主」。そんな週末店主のために空き家を店舗兼週末住宅として活用しようというアイデア。平日は活用しないの?というツッコミはありますが、やはりこれも空き家所有者の意向との調整次第なんでしょうね。コミットメントの濃度というか。

 

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定職を持ちつつも仕事が休みのときに週1、2回のみ営業するという空き家を使ったリアル店舗。純粋に自己満足なお店って感じですね。それがかえって名物になったり希少性というかレア感を演出できるとファンがついてくれそうですね。

 

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改修費用800万円。投資回収するためには平日も含めて複数の店舗が儲けを出していく必要がありそうです。

 

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業態はレストラン、カフェ、エステ、雑貨屋など。店主は主婦や会社員、高齢者など。空き家というハコの中で細かく人や店舗内容を変えることで事業継続が出来るという考えだと思います。時間、人、店舗内容、場所など隙間を埋めるようにサービスで満たしてあげることがポイントです。

 

こちらは「特別賞」でした。

 

10 でっかちハウス

芝浦工業大学大学院・守屋真一さん

東京工業大学大学院・鈴木愛子さん

 

8の「暮らすように旅する」空き家活用と似ているこのアイデア。「居住」という長期的な概念の「賃貸」を「ショートステイ」のような「短期的」な要素と取り入れた賃貸スタイルの提案です。

 

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「二拠点居住」(ただ移動のコストが難点)なんてのもありますし魅力的ではあります。合宿とか地方のイベントとかで利用出来ると都市部の人がお客さんになるかもしれませんね。飛騨里山オフィスなどまさに実例として挙げられると思います。

 

こちらは「GORON賞」。

 

11 私のまちの物語

大阪市立大学大学院・西野雄一郎さん

 

残すはあと2つです。当然ですが空き家になる前は住宅としてまたは店舗として活躍してきたわけです。移築、増築、居住者の変遷など歴史と物語がある。そんな歴史と物語を受け継ぎつつ空き家を活用していこうというアイデアです。ポイントは自転車を中心とする店舗付き賃貸住宅へのリノベーションです。

 

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自転車は生活感のある身近な乗り物ですから地域に溶け込みやすいのかもしれませんね。

 

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空き家を単に住空間として刷新するだけでなく、まちの魅力を高め、特徴づける「兆し」としての再生計画が必要ということです。対象の地域は大阪の中心に近いものの最寄り駅からバス20分+徒歩10分の所。アクセスが悪い地域に「自転車」というまちを変える「兆し」を投入することがこのアイデアのポイントです。サイクリング好きな人たちが集まるまちですね。空き家を自転車屋、ドミトリー、カフェなど住まいと店舗が融合した場所を生み出します。ニッチなニーズですがサイクリング・自転車好きにはたまらないまちです。

 

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サイクリングを楽しむ人たちのサロンのような空間が生まれます。それがきっかけとなってまちに活気が溢れるという。空き家活用はセルフリノベで5〜10年程度の定期借家をイメージしていて、循環していく点もいいですね。

 

こちらは「東京都支部長賞」。

 

12 畑はまちのリビングへ

横浜国立大学大学院・川端俊輝さん

 

最優秀グランプリです。対象は農と住が混在した郊外住宅地。虫食い状態で空き家が発生する郊外住宅地において有効な解決策になりうるアイデアです。

 

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後継者のいない農地の一部を街区に分割し、近隣住民と共有の庭を作り、家庭菜園や花壇、ドック欄などに活用します。そして近隣の空き家や空き室、などを使って賃貸住宅として貸し出す。運営は地域住民や土地所有者などで構成された住民組織(NPOですね)。農地を地域で共有するということで多くの人が関わりを持つことで自然と活気が涌いてくるというイメージですかね。

 

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農園付きの保育所やデイサービス施設、新鮮なとれたて野菜の直売所、すぐ調理して食べられるキッチンやレストラン、カフェなどいいですね。生活していく上で密接な食と住を踏まえている点がポイントだと思います。

 

まとめ

 

セルフリノベ、農と食、シェア、持続可能な仕組み、近隣住民を巻き込む、などが空き再生には大きく関連してくると思います。まぁ空き家活用や空き家再生も大事なのですがもっと大事なのはそこに住む人たちが生き生きと生活することです。そういった生き生きとした生活をする人たちが集まってくれば魅力的なまちになります。空き家を有効活用することでそういったまちづくりに貢献できると思います。

 

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