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空き家を活用して新しい価値をつくる

リノベーションまちづくり塾@豊島区第1回レポートpart2

『「編集」の時代』

 

先日参加しました「リノベーションまちづくり塾@豊島区」の第1回目の講義をまとめます。リノベーションまちづくりとは何か?を書いたpart1はこちらをご覧ください。今回はいよいよ本編、リノベーション事業の先駆者ブルースタジオの大島芳彦さんのお話をまとめていきます。

 

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2012年11月1日放送 ブルースタジオ 専務取締役 大島 芳彦(おおしま・よしひこ)氏・執行役員 石井 健(いしい・たけし)氏|カンブリア宮殿:テレビ東京

 

上の画像はテレビ東京の人気番組「カンブリア宮殿」にブルースタジオの大島芳彦さんと石井健さんが出たときに村上龍氏が書き残した一言です。『「編集」の時代』。賃貸物件しかり空き家や空き室が増え続けている現代においてはスクラップ&ビルドではなく既にある住宅を編集するという発想と手法が有効である、と。あらゆるものが不足ではなくあふれている今、既にある資源や素材を取捨選択し相互に関連づけ、構成を練ったり、調整したりして活用していくことが重要です。まさにキュレーションの時代ですね。

 

リノベーションは「老朽家屋の原因療法」

 

大島さんはリフォームが手段ならばリノベーションは目的だ、とおっしゃいます。「Re form」は物質的でハードウェアの更新に主眼があって対症療法なのに対し「Re innovation」は革新的でソフトウェアの更新がポイントで原因療法であると分類分けされています。リノベーションのほうがより先を見据えて新しい価値を生み出す経営の感覚が必要とも。

 

リフォームは「修繕の延長」。対して「状況を捉えて、いま何をすべきか考える」のがリノベーションだ。例えば「築40年、10坪、3DKファミリータイプ」という物件があるとする。今の時代、畳をフローリングに変える「リフォーム」をしても家族はこうした狭い3DKには住まない。そこで時代のニーズに合わせるため、10坪というハードウェアにインストールされている3DKというソフトウェアを1回消去し、ディンクスやSOHOを持ちたい人に好まれる1LDKというソフトウェアに入れ換える。これが「リノベーション」。リフォームはその「リノベーション」の中にある手段の1つと考えればいい。
「医学の世界に例えると、リフォームは対処療法でリノベーションは原因療法。手段はリフォーム以外にもいろいろあるので、必ずしもお金がかかるリフォームがリノベーションというわけではないのです。」

人とまちを活かすリノベーション建築ストックを社会資産として活用するということ | イベントレポート | イベント | d-labo

 

「物件」を「物語」へと編集

 

次に住宅を「物件」として見るのではなく、歴史の時間軸の中の1ページとして捉える「物語」としてデザインしようという考え方のお話です。時間が立てば住み手のニーズや社会事情も変化していきます。住宅が建てられた経緯やオーナーの思い、日常の風景といった歴史を、リノベーションによって物語へと昇華させてしまうようなものなのかなと思いました。

 

やわらかなつながり

 

東日本大震災以降なにかと「絆」とか「つながり」が叫ばれました。しかしがっちがちの強いつながりは息苦しさを感じるでしょう。そこで大事なのが「ウィークタイ(やわらかなつながり)」です。互いが自立した上で利便性や個人の興味などを優先したようなつながりのあり方です。持家のマンションだと各住戸の住人は「区分所有者」となり、横のつながりが希薄化します。大家さんが理念を反映させ、住み良いようにデザインする賃貸住宅では「共同体としての価値」が生まれます。価値観の共有は他人が新規に入っていきやすく、共感の輪が広がっていきやすいということです。

 

まとめ

 

シビック・プライド、CSV(共有価値の創造)といった不動産オーナーが持つべき感覚のお話もありました。大家さんが主体的になって老朽家屋を編集していくこと、それをリノベーションの専門家がサポートしながら物件を物語へとデザインする。一見手間のかかる作業ですが、豊かな社会でより満足のいく生活をおくるために、こうした取組を楽しめるようになるといいですね。次回は具体的なリノベーション事例を書いていきます。

 

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