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”街が栄えている”とは「土地と文化が生き残る状態」part2

”地方が栄えている”とはどういう状態か?

 

宇野常寛さんの「未来授業」の動画まとめpart2です。part1はこちらです。”地方が栄えている”とはどういうことかを大学生たちに問いかけています。大学生たちからの応えは、

 

  • ちょっと年老いた人たちも活躍出来る所
  • 農業や漁業などの一次産業が栄えている状態(生活を支えているから)
  • 地方が持つ資源を活用出来ていれば栄えている

 

などでした。これに対して宇野さんは”地方が栄えている”や”地方が生き残る”ということの定義を「土地と文化が生き残る状態」であると定義を捉え直しました。2年前に宮崎県高千穂町の有志から村おこしイベントに呼ばれた宇野さん。高千穂は古事記の舞台(日本神話)という強力な資源を持っているが典型的な地方都市の衰退(過疎化、観光資源を上手く活用できていない、工場も戦後誘致されたが撤退)に直面していたそうです。

 

そこで宇野さんが「『街が栄える』とは何か、を問い直すべきだ」と提案します。

 

高千穂の森や棚田、神社、夜神楽が生き残ること

 

つまり「高千穂が栄える」ということは「高千穂の土地と文化が生き残る」ということで、具体的には「高千穂の森や棚田、神社、夜神楽が生き残ること」だと宇野さん。

 

そしてこうした”高千穂らしさ”を確保し発展させていくために必要な人口は1000人くらいだとします。現在の高千穂町の人口は15000人くらい。棚田と森林を維持し、神社と伝統芸能を守り、観光客にサービスを提供する人間さえいれば、高千穂は高千穂でいられるということです。

 

f:id:cbwinwin123:20141220221019p:plain「高千穂峡」という渓谷。

 

f:id:cbwinwin123:20141220221514p:plain高千穂町の中心部から天岩戸神社まで行く県道沿いにある棚田。

 

f:id:cbwinwin123:20141220222016p:plain天岩戸神社。古事記・日本書記に記される天岩戸神話を伝える神社。

 

f:id:cbwinwin123:20141220222335p:plain夜神楽。里ごとに氏神(うじがみ)様を神楽宿と呼ばれる民家や公民館にお招きし、夜を徹して三十三番の神楽を一晩かけて奉納する、昔からの神事。画像引用元:高千穂町観光協会

  

日本の農村や漁村に、万単位の人口を養うだけのポテンシャルがある土地はどれほどあるのか?

 

役所の人からすると”地方が栄えている”とは駅前商店街がすごく栄えていて、工場が誘致されて、まるで都市部と変わらないような状態のことをイメージしがちです。しかし高千穂の歴史は1500年以上、2000年近く維持されてきました。1500年前の当時は15000人も住んでいたとは考えられないわけですね。

 

近代になって日本の人口は爆発してきていて、1970年代にはどの地方にも鉄道が引かれ、駅前商店街があって、工場が誘致されていて、土建屋が労働のセーフティーネットとして機能しているという状態が完成されます。これが田中角栄の列島改造論、国土の均衡ある発展を目指しました。

 

あれから40年、土地のポテンシャルとして日本の農村や漁村に万単位の人口を養う実力はなく、それは悪いことではないと宇野さん。つまり1500年以上、森や神社を維持してきているわけだから、見た目の人口が多いことはそれほど重要なことではないのです。

 

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高千穂のこと書いた宇野常寛さんの新聞記事。(画像引用元:たかはるハートム) 

 

高千穂の土地と文化を守れる人が1000人住めばいい

 

そして宇野さんからの具体的な提案です。

 

まず、ほとんどの人間は地方の中核都市に移り住む。次に土地のアイデンティティや文化を守れる人間(森が大好き、神社が大好き)には生活が出来るように補助金を出してクリエイティブな仕事をしてもらう。そういう人だけが住めばいい。そして、近隣の中核都市や東京からやって来る観光客からお金を取る。1000人の土地と文化を守るクリエイティブな仕事をする人とその外に住む10万、世界中に100万人のファンがいればいい。例えば”高千穂ファンクラブ”で年会費1万円払うと高千穂の美味しい食べ物や夜神楽の案内、旅館の宿泊チケットなどが送られてくるとか。そうすれば回っていける。発想の転換が必要。

 

これから高千穂に住むのは、”高千穂らしさ”を保持していくために必要な人と、高千穂でなければ行きていけない人々だけでいいと宇野さん。たとえ人口1000人の街でも日本中、世界中に10万、100万人のファンがいればたぶん街は成り立つし、それがほんとうの意味で「街が栄える」ということだということ。だから街おこし、村おこしを考えるときに重要な視点は1万人の人口を維持することよりも人口10万人のファンがいる街を目指すことなんでしょうね。

 

f:id:cbwinwin123:20141220220311p:plain画像はYouTubeから。

 

都市と地方のつなぎ方を変える

 

10万人のファンと街とを結ぶためにはメディアの存在が重要です。問題なのは結び方、関係を変えるしかないと宇野さん。

 

メディアがあるから初めて想像力が遠くまで届く。しかし今はその回路が上手くいっていない。今まで通りの中央と地方の関係では単に負けるだけ。駅前商店街が栄えているなんて状態は別に高千穂じゃなくてもいい。いつのまにか国土の画一化がなされて街のアイデンティティが揺らいでいる。都市と地方とのつなぎ方を変える、新しい都市と地方との関係のビジョンを再構築しないと地方は衰退するしかない。

 

まとめ

 

テレビ、ラジオ、新聞といったマスメディアに加え、インターネットを活用したソーシャルメディアも駆使することで日本中、世界中にファンを作ることが可能になりました。ブログや動画やSNSを使って日本中に、世界中に高千穂の魅力を発信することが手軽に出来ます。きっと手元にある資源を再発見または再編集することに街の再生や発展のヒントが隠されています。そのためにはとにかく人口を増やすばかりではなく、街の土地や文化の魅力を発信したり次世代に引き継いでいくといった役割を担う人たちが住めば街は持続し続けるのだと思います。

 


【未来授業】 宇野常寛 明日の日本人たちへ~VOL2 - YouTube

 

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