マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

エリアマネジメントによる空き家の有効活用の取組5選

地域で進める空き家の有効活用

 

空き家の有効活用というと、空き家所有者の思いを無視した上から目線的な議論に思う場合もあるかもしれません。この点は当然、空き家所有者やその家族の気持ちや考えに寄り添っていかなくてはいけないことは言わずもがなです。

 

さてそれを踏まえた上で空き家の有効活用を進めていくにあたって「エリアマネジメント」つまり地域一帯で持続的に空き家とその所有者およびご家族へとアプローチしていく必要があります。

 

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再掲) 

 

(1)富山県高岡市「空き家活用推進協議会」

 

まずは富山県高岡市の「空き家活用推進協議会」という取組。特に、密集市街地・中心市街地で増加する空き家対策が急務になっていて、自治体単独では限界があることから宅地建物取引業協会、建築士会、司法書士会、土地家屋調査市会、そして富山県と連携しています。

 

空き家管理サービス相談窓口空き家談義フォーラム勉強会ワークショップなどが行われています。もっと若者層や女性を呼び込めると取組が加速していくのかなとも思います。参加者の写真を見ると中年男性が多いので。大学生や子育て世代とか巻き込むことが課題かと。

 

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高岡市空き家活用推進協議会

 

(2)横浜市栄区湘南桂台自治会

 

次は自治会の取組です。横浜市栄区の湘南桂台自治会は昭和53年に設立され現在は約1,600世帯(4,000人)が暮らしています。会員率はほぼ100%というのが凄いです。「まちづくり委員会」を組織して良好な居住環境の維持を担っています。自治会で空き家の数や所有者を把握しています。また、空き家管理サービスも有償で受けられます。

 

横浜市栄区の湘南桂台地区においては、地区のブロックごとに空き家と空き地の件数を把握している。また、転居する場合も、自治会への退会届に転居先を記入してもらう等しているため、住宅が空き家になった場合も迅速に連絡をとれるようにしているのが特徴である。
さらに、空き家や空き地の所有者は、通常の自治会費(月額 400 円)の半分の額を負担することで、自治会にて定期的に空き家を見守ってもらうことができる。 

自治体の空き家対策に関する調査研究報告書 | 公益財団法人 東京市町村自治調査会p54

 

(3)京都市「地域連携型空き家流通促進事業」

 

京都市の空き家対策は進んでいます。アーティストの居住・製作・発表の場として空き家(京町屋)を有効活用しているHAPSの取組などが代表的です。というのも空き家の掘り起こしや不動産事業者のサポートのもと、空き家所有者や地元のニーズに応える空き家の活用方法の提案や空き家所有者と入居希望者とをスムーズにつなぐ役割を果たしています。

 

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画像引用元:京都市六原学区(東山区)の取組

 

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京都市:京都市地域連携型空き家流通促進事業

 

京都市の空き家対策は本当注目されていて朝日新聞の特集記事にもなっています。


(大峯伸之のまちダネ)空き家と闘う5:朝日新聞デジタル

 

京都市の場合は自治連合会やNPO(HAPS)を軸に行政や大学、不動産や建築、法律の専門家集団がサポートしていくというイメージです。

 

(4)世田谷区「空き家等の地域貢献活用モデル事業」

 

東京都世田谷区も積極的です。一般財団法人世田谷トラストまちづくりが行う「地域共生のいえ」は空き家、空き部屋、家の一部などを地域に開放しています。子育て中の親子が集まったり、高齢者施設に入居する人がおしゃべりしたり、地元のサークル活動の場になったり。空き家オーナーの主体性がポイントです。

 

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地域共生のいえ|活動拠点紹介|トラストまちづくり事業|一般財団法人世田谷トラストまちづくり

 

世田谷区社会福祉協議会が行う「ふれあいの家」も区に寄贈された住宅などをサロンなどとして活用しています。そして「世田谷らしい空き家等の地域貢献活用モデル事業」に選ばれた団体は最大200万円の助成を受けられます。助成金は空き家の改修費用や備品購入費に使うことが出来ます。

 


世田谷区空き家活用フォーラムに見る、空き家等の地域貢献活用のこれから | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】

 

世田谷区は保坂区長が積極的なのがいいです。

 


「空き家」を地域コミュニティの交差点に - 太陽のまちから - 朝日新聞デジタル&w

 

(5)島根県江津市「ビジネスプランコンテストを通じた空き家活用」

 

最後は島根県江津市です。空き家活用はあくまでも「手段」で、目的は「定住促進」です。田舎暮らししたい人もいる、空き家もたくさんある、そこをマッチングしようとNPO結まーるプラスが移住希望者に対する空き家の情報提供と紹介を行います。行政は所有者の住民と交渉して空き家を登録してもらう役割。不動産事業者は賃貸・売買の契約を担当するという3者3様の役割を果たすことでスムーズな空き家活用に取り組みます。

 

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画像引用元:空き家を活用した定住対策〜その意義と具体的な手法〜

 

空き家活用の仕組みが出来ても仕事がなければ移住者は増えない、ということで「働く場がないならつくればいい」と考えてつくられたのがソーシャルビジネス・コンテストです。

 

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創業支援部/NPO法人てごねっと石見(いわみ)

 

定住促進が軸にあって、”守り”の事業として空き家活用があって”攻め”の事業として人材誘致があります。江津市の空き家活用の取組は国土交通省も注目していて個人住宅の空き家の流通促進策として採用されています。

 

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