今年も世田谷区の空き家活用フォーラムに行ってきました。昨年の様子はこちら。
平成26年度世田谷らしい空き家等の地域貢献活用モデルの採用団体2団体と、世田谷区外から2団体の事例発表がありました。今回は世田谷区外の2団体のうち、西東京市内にある築150年以上の古民家を改装してデイサービス、学童保育、スペース貸しとして活用している「和のいえ櫻井」(JR武蔵境駅から徒歩15分)についてまとめます。
介護と教育をつなげる
東京都西東京市内にある築150年以上の古民家。持ち主である先代が亡くなられて空き家に。そして「地域に役立つ施設として活用できないか」と日本民家再生協会(JMRA)に相談があります。そして建物の規模と敷地を見てぜひ活用させてほしいと名乗りを上げた上げたのが建築士であり「和のいえ櫻井」の代表である山田哲矢さんです。
(出典は日本民家再生協会の情報誌「民家」82号より)
「和のいえ櫻井」のウェブサイトの「挨拶」に書かれているように介護や教育に対する関心の高さ、そして介護と教育を固有の問題として扱う事に対する疑問が根底にあります。
本当の介護・教育にとっては、違った性別、違った世代、違った生活環境・価値観の人々が寄せ集まり、日常を過ごす、『人の対流』が重要であると私たちは考えます。そして、その関係が交差する中で、誰かが誰かの介助をし、誰かが誰かに物事を教授することが自然と行われる、そのようなコミュニティを日本の民家にて形成しようと思い『櫻井』を設立しました。
ここにデイサービスと学童保育の融合という新しい(本来的な?)サービスのかたちの理念があります。
エリアの情報を知り綿密に事業計画を立てる
理念は素晴らしくとも取組や活動が持続していかなければ絵に描いた餅になってしまいます。代表の山田さんはエリアの情報や競合するデイサービスの情報などを調べた結果、需要があることを見つけます。
まず、この民家が経済的に自立しなければいけません。具体的に改修、人件費、備品などの金額を落とし込んで収支を考え綿密に事業計画をたてました。この地域の情報や介護保険を受けているお年寄りの数、さらに競合するデイサービスの収容人員を調べ、その結果、需要があることが分かりました。
(日本民家再生協会の情報誌「民家」82号)
デイサービス、学童保育、スペース貸し
平日はデイサービスと寺子屋(学童保育)、休日はイベント会場などのスペース貸しとして開放しています。
「HOME'S介護」や「介護DB」、「オアシスナビ」などの介護サービス情報サイトでも”都内初の古民家を再利用したデイサービス”として紹介されています。
小学校1年生〜6年生まで10人〜15人の受け入れ体制だそうです。豊かな自然や築100年以上の古民家、そして多世代との関わりなどはなかなか体験出来ないと思います。こちらのサイトでも紹介されています。
貸し出しスペースは蔵や和室(10畳)や施設です。蔵はギャラリーとして35,000円(1週間)。施設貸しは土、日曜日に15,000円です。
保全が念頭
「和のいえ櫻井」代表の山田さんは古民家を保全したいというオーナーの意向を尊重し、あくまでも”固定資産税にすこしプラスが出るくらい”の賃貸契約を結びます。
賃貸契約を提案させていただく際、あくまでも固定資産税にすこしプラスが出るくらいで設定しました。空き家になっていて固定資産税を払っていたところに、私が改修して家賃を払うということを了解していただき、あとは建物を保全していきたいという持ち主の意図と合致させていきます。
(日本民家再生協会の情報誌「民家」82号)
初年度は赤字でしたがその後は黒字に。傷んだ部分を直し、耐震補強の工事を施しましたが、間取りや設備はほとんど変えていないそうです。