「新築建設は経済効果高いよねー」の根拠となる「産業連関表」。住宅の生産誘発効果は2倍弱と。しかし今となっては、新築が造られればその分空きや対策費、街の価値毀損、インフラ修繕など行政効率悪化などのマイナスを含めたら、こんなに高いはずない pic.twitter.com/vhsSJ0Jkwr
— 長嶋修 不動産コンサルタント (@nagashimaosamu) 2015, 6月 2
一方で「リフォーム」。ドイツではなんと8倍の経済効果があるとして国策として強力に推進中。内訳は次ツイートのとおりですが、8倍ですよ8倍。
— 長嶋修 不動産コンサルタント (@nagashimaosamu) 2015, 6月 2
【100ユーロ投入した場合】 A. GDP500-1,180万ユーロ(90%が地域の中小企業) B. 雇用100-217人(同じく中小企業) C. 社会福祉削減効果100-220万ユーロ(失業手当や生活保護など) D. 税収増加88-200万ユーロ(消費税や所得税など)
— 長嶋修 不動産コンサルタント (@nagashimaosamu) 2015, 6月 2
不動産コンサルタントの長嶋修さんのツイートを三連投。これは何を言っているかというと、景気対策として有効だとされている新築建設ですが、実は新築が作られればその分空き家対策のコストや街のイメージ低下などから景気対策としての効果は疑問であるということです。そしてドイツでは新築ではなくリフォームを中心とした住宅市場であるため、リフォームに伴って不動産価値が向上し経済波及効果もあるという好循環が生まれています。
新築中心の高度経済成長モデル
日本の住宅市場は未だに新築中心の高度経済成長モデルです。中古住宅の流通促進や空き家活用の動きもありますが、まだまだメインストリームは新築にあります。つまり、中古よりも新築に価値がある住宅市場です。
今現在では5,000万世帯数に対してストックが5,700万戸以上、約800万戸近くの住宅が空き家になっています。住宅が余っているのに作り続けている状態というのは、前回のコラムでもお伝えした通り、ワルラス的調整状態であり、地域の資産価値は下落し続けることになります。
ドイツでは新築建設をコントロールしている
一方、ドイツでは需要と供給のバランスを合わせるために都市計画等で住宅の供給量をコントロールしています。
ドイツの場合、需要と供給のバランス合わせるために、都市計画等で住宅の供給量をしっかりコントロールしています。2009年現在の世帯数4019万世帯に対して、住宅のストック数は4,018万戸。住宅は余っていません、というよりも余らないように行政によってコントロールされています。
人口動態を見ながら世帯数と人口が増加している地域でのみ新築させるようにしています。それに加え、リフォーム需要を上げていくような政策も同時に行います。
単純に新築の住宅数を制限するだけの政策をうってしまうと、建設雇用が激減してしまいます。そこでドイツでは新築住宅を減少させるタイミングと合わせて、リフォーム需要を上げていくような政策を同時に行っています。例えば2000年前半頃からは、新築住宅に対しては補助金や金利優遇、金利免除などの支援策はほぼ廃止されています。非常に省エネ性能が良い住宅にだけ、ほんの僅かな利子免除があるだけ。一方、リフォームの場合は補助金も利子免除も金利優遇も非常に手厚くなっています。リフォームの場合も省エネ性能が上がるほど、補助金や利子免除が増加します。しかも新築よりも、リフォームローンの方が金利も低くなっています。
需要と供給をバランスさせることで不動産価値を安定化させる
ドイツの住宅市場は需要と供給をバランスさせることで不動産価値を安定化させています。そして価値が安定化しているので住宅オーナーは資産価値を向上させるためにリフォームに対する意欲が高まるわけです。
ドイツの住宅政策は、古典経済学的にはマーシャル的調整というモデル。需要と供給をバランスさせることができれば、価値が安定する。つまり、世帯数と住宅ストック数のバランスをとることによって、その地域の不動産価値を安定化させているのです。
次の図を見るとわかりますが、日本では世帯数(需要)とストック数(供給)とにギャップ(空き家)が生まれていますが、ドイツでは世帯数とストック数が均衡しています。
(画像引用元)
5,000万戸以上の断熱リフォーム需要が存在
つまりドイツのようなリフォーム中心の住宅市場へと転換する必要があります。例えば「次世代省エネ基準」に合った断熱リフォームを制度化することができれば200兆円もの建設需要が生まれるそうです。
次世代省エネ基準という、国の推奨基準の住宅はストック数の5%に満たないとされています。つまり、5,000万戸以上の断熱リフォーム需要が存在しています。ドイツと同じ政策を日本で制度化することができれば、瞬時に200兆円もの建設需要が生まれ、向こう40年間にわたり年間10兆円以上の省エネリフォーム市場を作り続けることも可能です。