マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

都市は豊かな生活をするための手段!「都市をたたむ」を読んで

今回は首都大学東京准教授で都市計画学者/プランナーの饗庭伸さんの著書「都市をたたむ-人口減少時代をデザインする都市計画」を読みましたので、印象に残ったところをまとめます。”都市をたたむ”っていう表現は、一旦はたたむけれど、いつか開くかもしれないという期待も含まれています。これまでは人口増大社会でしたので、市街地もどんどん広がって(スプロール化)いったわけですが、人口減少に転じてからは、まさに都市をたたむ必要が出てきたわけです。コンパクトシティの議論が盛り上がりを見せ、最近では空き家や空き地が増えることで都市がスカスカになってしまう”都市のスポンジ化”を防ぐための議論も始まったところです。「老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路」の野澤千絵さん同様、”都市のスポンジ化”を防ぐための議論の論客であり実践者である饗庭伸さんの著書は読み応えがありました。

都市は豊かな生活をするための手段

都市はどのように誕生したのかという問いを突き詰めると、豊かな生活をしたいと思ったときに、それを実現するために発明されたもの、です。つまり、都市は目的ではなく手段ということです。著書の中でわかりやすい例えが書かれていました。

「都市はどのように誕生したのか」という問いを突き詰めていくと、都市とは、そもそもコメとニクとヤサイの人たちが、「カレーを食べたい=豊かな生活をしたい」と思ったときに、それを実現するために発明されたものである。それらがやがて連担して都市をつくり、城下町を経て、日本の都市は巨大化していく。

都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画p.13 

都市を維持することがぼくたちの豊かな生活につながるわけではありません。フランスの建築家のル・コルビュジェが提案した「輝く都市」や、イギリスのエヴェネザー・ハワードが提案した「田園都市」などは日本の都市の目指すべき目標像になりましたが、これらも都市の理想像のモデルであって、これらを実現したからといって豊かな生活という目的が達成されるわけではないのです。

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(画像引用元:第二回発表用「コルビジェという巨匠」

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(画像引用元:エベネッザ・ハワードの田園都市構想 | V.D.H

一方でアメリカのジャーナリスト、ジェイン・ジェイコブスの著書「アメリカ大都市の死と生」で提案しているのが「計画されていない都市の魅力」、または「目的を持たないでつくられた都市」です。趣のある路地がたくさんあることや、古い建物と新しい建物とが混在していることなど、それはそれで魅力的です。しかし、これも理想の都市像の一つにすぎない。

彼女は、都市再開発でゴミのように壊されようとしていたニューヨークの街角を観察することを通じて、いい都市をつくるための有名な4つの原理、「地区は2つ以上の機能を果たすことが望ましい」「街路の幅が狭く、曲がっていて、一つ一つの街区の長さが短いこと」「古い建物と新しい建物が混在していること」「人口密度が十分に高いこと」を提唱する。

都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画p.16

つまりどんな都市も人為的につくられていることに変わりはなくて、出来てから時間が経てば経つほど空間をつくった目的は忘れられていくき、かわりにそれを自然であると、元からあったかのように誤解する人たちが増えてくる、と饗庭さんは著書の中で指摘しています。都市は自然に生成されたわけではない。だから都市計画が必要というわけです。

都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画

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