- 「LIFULL HOME'S空き家バンク」がリリース
- LIFULLの他にアットホームも、しかしそもそも…
- 全国各地に広がる空き家バンク情報の統一化
- 参加登録受付開始1ヶ月程度で300以上
- そもそも空き家バンクを実施している自治体数はどのくらい?
- リノベーションや民泊へつなげる、物件情報の網羅度アップも
- まとめ
「LIFULL HOME'S空き家バンク」がリリース
昨年夏頃から話題になっていた「全国版空き家・空き地バンク」ですが、平成29年度国土交通省全国版空き家・空き地バンクの構築運営に関するモデル事業の実施事業者に選ばれた株式会社LIFULLが、このたび「LIFULL HOME'S空き家バンク」をリリース(2017.9.27)しました。まだ掲載情報は少ないですが、今後どんどん増えていくと思われます。
(画像引用元:https://www.homes.co.jp/akiyabank/)
LIFULLの他にアットホームも、しかしそもそも…
この全国版空き家・空き地バンクですが、LIFULLの他にもアットホーム株式会社が実施事業者に選ばれています。アットホームのほうはどんなウェブサイトになるのかこちらも楽しみです。しかし、よくよく考えると全国版の空き家バンクといえば、一般社団法人移住・交流推進機構が公開している「ニッポン移住・交流ナビ」があるんですが、どういった点が違うのでしょうか。まさか空き家バンクにまで行政の縦割り構造、官僚制の弊害があるのか?
すでに全国空き家バンクを作っている、(一社)移住・交流推進機構と(一社)地域活性化センターは、総務省管轄で、今回始まる全国版空き家バンクは国交省管轄であるという、身も蓋もない話。
— 田中瑠海 (@nukalumix) 2017年7月22日
(画像引用元:ニッポン移住・交流ナビ JOIN - 田舎暮らしを応援します -)
全国各地に広がる空き家バンク情報の統一化
全国各地にある空き家バンクですが、それぞれ自治体によって形式や仕様が異なるため、横断的に空き家バンクを調べたいときに不便だったわけです。そこで物件情報の掲載項目を標準化して、全国の物件をワンストップで検索できるようにするために全国版空き家・空き地バンクを構築しようという話です。
これまで空き家バンクは全国の市町村が個別に設置しており、公開形式や情報のフォーマットが統一されず使い勝手が悪かった。新サービスでは登録したすべての自治体の空き家情報を、物件の所在地や築年数、広さや写真などを統一した形式で公開する。
居住目的や、民泊や古民家レストランなどの事業で空き家を利活用したい顧客は、全国の空き家情報を一つのウェブサイトで収集できるため比較、検討が容易になる。
(画像引用元:国土交通省>空き家・空き地等の流通の活性化の推進>概要説明(PDF))
参加登録受付開始1ヶ月程度で300以上
LIFULLの井上高志代表取締役社長へのインタビュー記事が公開されていて、これによると今年7月に自治体からの参加登録受付を開始して1ヶ月程度で300以上の自治体からの登録希望があったそうです。これを多いと見るか少ないと見るか。
そこで、LIFULL HOME’Sのデータベースを流用して全国統一のプラットフォームを作ることにしました。自治体の情報掲載は無料。スタートから1カ月程度ですが、300以上の自治体から使いたいとのお声を頂いています。
そもそも空き家バンクを実施している自治体数はどのくらい?
そもそも空き家バンクって全国にどれくらいの数があるのでしょうか。調べたところ3件の情報が出てきました。
一般社団法人移住・交流推進機構『「空き家バンク」を活用した移住・交流促進事業自治体調査報告書(平成26年3月公開)
一般社団法人移住・交流推進機構による『「空き家バンク」を活用した移住・交流促進事業自治体調査報告書(平成26年3月)(PDF)によると、都道府県は35/47が、市町村は1,158/1,719がアンケートに回答、移住・交流促進施策について都道府県は85.7%、市町村は51.4%は「実施している」と回答、そして空き家バンクの実施状況は都道府県は16.7%、市町村は62.9%が「現在、実施している」と回答しています。つまり全国の空き家バンクの実施数は、都道府県では5(35×0.857×0.167)、市町村では374(1,158×0.514×0.629)です。こちらの調査期間は平成26年1月〜2月なので、3年以上経った現在はもっと増えていそうです。
株式会社うるる「平成28年 空き家バンク運営実態調査」(2016年11月公開)
わりと新しい調査でいうと株式会社うるるの「平成28年 空き家バンク運営実態調査」があります。調査対象は「空き家バンクを運営する750自治体」ということで、うるるが独自に選定した自治体への調査となっています。この750の算定根拠が知りたいですが。
公明党「公明新聞記事」(2017.7.20付)
公明党の機関紙である公明新聞の記事「空き家バンク“全国版”へ | ニュース | 公明党」では、空き家バンクは、全国1740市町村の約4割に当たる685の自治体で実施済み(2015年時点)とあります。
374、750、685とばらつきはありますが、LIFULL HOME'S空き家バンクは300といわず、全部の自治体の空き家バンク情報を網羅してほしいです。
(画像引用元https://www.homes.co.jp/akiyabank/b-60/)LIFULL HOME'S空き家バンクは、統一したフォーマットで全国各地の空き家バンクが閲覧できる。
リノベーションや民泊へつなげる、物件情報の網羅度アップも
さて、なぜLIFULLが全国版空き家・空き地バンクに乗り出しのか。それはこちらの記事にもあるように、空き家をリノベーションするときに取引のある施工会社を紹介したり、民泊をする場合は自社が絡んでいる民泊事業へとつなげる、そして空き家バンクを作ることで物件情報により厚みが出ると、こういうことです。
といってもボランティアではなく、LIFULLとしては空き家をリノベーションしたい場合には、LIFULL HOME’Sでお取り引きのある施工会社をご紹介したり、民泊で活用できる場合には、楽天とのジョイントベンチャーである民泊サービス「楽天LIFULL STAY」へとつなげることで収益を確保していく考えです。空き家バンクを作ることで、物件情報の網羅度も上がります。
まとめ
すでに存在している移住促進を目的とした全国版の空き家バンクとの違いが曖昧だったり、そもそも空き家バンクの数が少ない、さらに空き家バンクの稼働状況が芳しくない、空き家バンクに登録されていない空き家こそたくさんあること、など課題はあります。個人的には空き家バンクに載ってこない空き家をどう流動化するのか、相続人がたくさんいて売却も賃貸も解体もできずに塩漬けになっている空き家をどう活用・再生につなげていくのか、法律や税制改正、行政施策の面からの、ITやテクノロジーといった面からのアプローチなど模索していきたいです。
(参考サイト)