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空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家が火事で近隣住宅が全焼した場合の損害額は6,000万円以上

空き家が火事で近隣住宅に燃え移る

最近、空き家が火事になるというニュースをちらほら見ます。空き家が放火を誘発するという場合も多々あります。人目も少なければなおさらです。今回考えたいのは、空き家が火事になったとして、近隣住宅に燃え移ってしまった場合の損害賠償の話です。住宅はもちろんのこと家財や、焼失家屋の解体・処分、加えて近隣住宅に住まわれている方が死亡や怪我してしまったとすると、死亡逸失利益、慰謝料など損害賠償が生じることになります。

2日夜にも同じ村の空き家が全焼し、周りの林にも燃え移りました。さらに、隣の群馬県下仁田町では、空き家と隣接する物置が全焼する火事もありました。

木造の空き家で火災 同じ村でおとといも…放火か

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(画像引用元:木造の空き家で火災 同じ村でおとといも…放火か

民法717条

では具体的にどういう法的責任があるかというと、民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)が根拠となります。つまり、空き家が本来有しているべき安全性を欠いていること(建物周辺や建物内に木くずや紙くずなど燃えやすいものがある、など)で近隣住民などの他人の住宅や身体に損害を発生させた場合、損害賠償しなければいけなくなるのです。

第717条1項
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

民法第717条 - Wikibooks

「空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査」

損害賠償金額の目安として参考になる調査が、公益財団法人日本住宅総合センターが2012年8月から翌年3月にかけて行った「空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査」です。こちらの調査では空き家が火事になってしまい隣家家屋が全焼し、そこに住む夫婦が死亡してしまったという想定で損害額を試算しています。それによると、物件損害等で1,000万円以上、人身損害で5,000万円以上、合計6,000万円以上の損害額が発生するとしています。

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(画像引用元:火災による隣家家屋の全焼・死亡事故(想定)<PDF>

2016年の全国の総出火件数は36,831件、出火原因の1位は「放火」

では火事は全国でどれくらい起こっているのでしょうか。総務省消防統計によると、2016年の総出火件数は36,831件(前年より2,280件減少)、総死者数は1,452人(前年より111人減少)、出火原因の1位は「放火」(3,586件の9.7%)です。「放火」と「放火の疑い」を合わせると5,814件(15.8%)ですが、出火原因で一番多いのは「その他の原因」(40.9%)なので、一概に放火が断トツに多いわけではないです。

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(画像引用元:平成28年(1月〜12月)における火災の状況<PDF>

空き家所有のリスク

具体的に損害額がわかると、空き家を所有するリスクがより鮮明になります。空き家を放火から防ぐためには、木くずや紙くずなどの燃えやすいものは置かないようにしたり、管理者を明示して管理されていることをアピールするなどの対策があります。空き家の火災保険を取り扱っている保険会社も多いみたいです。いずれにしろ空き家の放置は建物の劣化も進むし、管理に手間がかかるし、放火などの温床にもなります。早めに活用なりの検討をすることが重要です。