マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

ゼンリン(地図情報会社)と自治体が連携して空き家データベースを作る

1000軒以上の点在している空き家所有者への連絡が取れないことが捜索を難しくさせている

愛媛県今治市の松山刑務所造船作業場から受刑者が逃走した事件は、発生から1週間が経ってもまだ行方がわかっていません(2018年4月15日現在)。指名手配された容疑者が潜伏しているとみられる広島県尾道市向島には、延べ5000人の捜査員が投入されています。それでもなかなか見つからない要因の一つに、1000軒以上の点在する空き家の所有者に連絡が取れないため空き家の中に入るなどして捜索ができないことが挙げられています

また島外に移り住んだ人の家など1000軒以上の空き家が点在。捜索には所有者や管理者の許可が必要で連絡が取れない場合は「外観に目立った異常がないか、目視で済まさざるを得ない」(捜査幹部)という。

受刑者逃走1週間:空き家1000軒捜索妨げ 広島・向島 - 毎日新聞 

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(画像引用元:受刑者逃走1週間:空き家1000軒捜索妨げ 広島・向島 - 毎日新聞

空き家データベースの必要性

今回のニュースから見えてくるのは、点在する空き家の所有者の連絡先を事前に把握していないと犯罪捜査の妨げ、ひいては治安の悪化につながるということです。こういった問題を防ぐために空き家の所有者の連絡先はもとより、空き家の具体的な場所や建物の状態などを網羅した空き家データベースないし空き家台帳を各自治体は備えておく必要があります。

(参考記事:自治体が作成する「空き家データベース」には販売・賃貸用の空き物件は含まれない(ただし周辺の生活環境に悪影響を及ぼしているものはデータベースの対象になる) - 空き家の活用で社会的課題を解決する

空き家バンクに登録されている空き家+特定空き家+それ以外の空き家

では具体的にどのように空き家データベースを作るかですが、当たり前ですが販売・賃貸用の空き物件は不動産市場に出ているため不動産管理会社しかり大家がちゃんと存在していますので、行政が対象とすべきなのは不動産市場に出ていない空き家になります。不動産市場に出ていない空き家は大きく3つに分けることができます。

  1. 空き家バンクに登録されている空き家
  2. 特定空き家
  3. それ以外の空き家

平成29年に国土交通省が実施した地方自治体の空き家対策等に関する調査によると、全自治体の4割(763自治体)が既に空き家バンクを設置しており、約2割(276自治体)の自治体が空き家バンクを準備中及び今後設置予定となっています。 空き家バンクに登録されている空き家は自治体のウェブサイトなどで基本情報が公開され空き家の利用希望者を募っているため、当然空き家の所有者の連絡先は把握しています。問題なのは2.特定空き家、3.それ以外の空き家、です。2と3に関しては不動産市場にも出ていない、空き家バンクに登録もされていないため、空き家の所有者の前向きな意思が不在です(そもそも所有者不明というケースも多くある)。そのため空き家実態調査を行うなど自治体が主体的に空き家の情報を集めていかなくてはいけません。

ゼンリンの力

と言っても空き家の情報を集めるのは大変です。2015年に空き家対策特別措置法が施行されて自治体は、空き家への立入調査や税務部局が保有している固定資産税課税台帳の情報を元に空き家の所有者の情報を取得可能となるなどしましたが、ノウハウの蓄積がないので負担は大きい。そこでゼンリンなどの地図情報会社の力が存在感を放ちます。ゼンリンは家一軒一軒の表札情報を網羅する住宅地図を唯一全国規模で製作する企業であり、1日約1000人のスタッフが歩いて現地調査を含めた情報収集を行っているそう。空き家のデータベース作成に当たってもゼンリンの力を自治体が借りることでスムーズかつ正確な成果につながります。実際に北海道の本別町ではゼンリンと連携することで精度の高い空き家データベースを効率的な構築を進めています。

木南氏は「ゼンリンは地図づくりやデータベース構築で多くの実績とノウハウを保有しており、全国の空家情報も収集されています。このため、ゼンリンと一緒に取り組むことで、ゼロからローラー調査をせず必要な部分の調査実施で、精度の高い空家データベースを時間とコストを削減して構築できると考えました」と話す。

自治体活動をささえる。~ゼンリン自治体支援プロジェクト~ 地域から、日本の未来を【ゼンリン】

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(画像引用元:自治体活動をささえる。~ゼンリン自治体支援プロジェクト~ 地域から、日本の未来を【ゼンリン】

防犯以外にも防災、移住促進、サービス誘致につながる

空き家データベースを作成することで防犯以外にも防災、移住促進、新しいお店や施設などの誘致など、様々なメリットにつながります。

「空家の状況は刻一刻と変化するので、ゼンリンに定期的な調査をお願いし、台帳情報を更新していきます。今回のシステムは空家の写真を閲覧できるため、家屋状況の悪化や改善が把握でき、次の手が打ちやすくなりました。また、空家情報があるおかげで、大雪時に倒壊リスクのある物件を優先的に見回りするなど、災害対応の迅速化にも役立っています」

自治体活動をささえる。~ゼンリン自治体支援プロジェクト~ 地域から、日本の未来を【ゼンリン】

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(画像引用元:自治体活動をささえる。~ゼンリン自治体支援プロジェクト~ 地域から、日本の未来を【ゼンリン】