空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

空き家を活用して社会的課題を解決したり、新しい街のコンテンツに生まれ変わらせる。そんな観点から書いているブログです。

都市を再編集する

都市を再編集する

宇野常寛さんが主宰する批評誌PLANETSのメルマガ「都市を再編集する」が面白いです。不動産プランナーの岸本千佳さんの連載なのですが、街の中に点在している使われていない建物に対してこれまでと同じ使い方ではなく、街の状況や歴史を踏まえて新しい使い方を企画・提案し、管理や運営までトータルプロデュースしていく様が描かれています。

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賃貸マンションの1階奥の駐輪場が…素敵なバーに!

例えば、賃貸マンションの1階奥にある駐輪場が…

f:id:cbwinwin123:20180610092201p:plain(出典:駐輪場がバーになっちゃった 岸本千佳(フリーな不動産屋) – OURS.KARIGURASHI MAGAZINE

駐輪場?倉庫?の味のある鉄扉や天井の低さなどアンダーグラウンドな雰囲気を活かせないかとオーナーに貸出を提案し募集した結果、掲載翌日に問い合わせがあり成約、素敵なバー「OLBONECAFE」に変貌。

f:id:cbwinwin123:20180610092401p:plain(出典:駐輪場バー | addSPICE

線路沿いのボロボロの木賃アパートが…音を出せるシェアアトリエに!

線路沿いのボロボロの木賃アパートが…

f:id:cbwinwin123:20180610093949p:plain(出典:岸本千佳『都市を再編集する』第2回 不動産を通じて街の課題を解決する:Daily PLANETS:PLANETSチャンネル(PLANETS/第二次惑星開発委員会) - ニコニコチャンネル:エンタメ

電車音が激しいため住むには適さない、前面道路はとても狭いため建物を撤去しても駐車場として活用できない、建て替えもできない、一方で建物には昭和感の漂う雰囲気狩り、テレビドラマ「すいか」に出て来そうな階段もある、こうした状況を活かして音を出せるシェアアトリエ「SOSAK KYOTO」にリノベーション。京都は建物が密集しているけれど、芸術系の大学が複数あり芸大生やクリエイターにとって音を出せるなど存分に制作に打ち込めて家賃も安いアトリエに対するニーズがあったわけです。

f:id:cbwinwin123:20180610094752p:plain(出典:SOSAK KYOTO | addSPICE

建物のポテンシャルを引き出し使われ方をアップデート

この2件の再生事例から見えてくるのは、建物のポテンシャルを引き出し使われ方をアップデートしていることです。一見するとなんの変哲もない駐輪場は万人受けする空間ではないけれど刺さる人には刺さる、線路沿いでうるさいボロアパートは住むには適さないかもしれないけれど芸大生やクリエイターの創作の場としてならむしろ最適なのではないか、そういった建物ひいては都市を再編集する…この方法は全国の使われなくなった空き家が新しいコンテンツとして生まれ変わったり、街の課題を解決することにつなげていくための大きなヒントになります。

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事業として経営が成り立つことがとても大事

空き家が増え既存住宅の利活用がますます必要になって行くに連れ、既存の不動産屋さんのやり方とは違った岸本千佳さんの不動産プロデュースというアプローチは先駆的です。駐輪場をバーに、ボロアパートをシェアアトリエに、といった発想は誰でもできるわけではないですが、都市を再編集する、街の状況や歴史を踏まえるといった見方をすることで新しく見えてくるものがあるのだと思います。あととても大事なのが事業として経営を成り立たせることです。シェアアトリエのケースでは住宅として貸し出す場合とアトリエとして貸し出す場合を比較検討した結果、音を出していいという価値付けをして初期投資を抑えて最低限のリノベーションを施し入居者による改装可能なシェアアトリエとして募集しました。創造的な使い方の一方で投資回収の見通しをしっかり立てることでオーナーの安心にもなり、持続的に街に存在できるようになるのだと思います。

シェアアトリエとして活用することは、経済的に合理性もあるのです。

京都駅から10分という好立地は、正直、宿泊施設でも、住居でも、店舗でも、何でもそれなりにうまく活用する可能性が無くはないとは思います。

しかし例えば、住宅として活用するとなると、防音工事をはじめ多額の費用が発生します。そして、防音工事をしたところで、建物自体は築古の木造アパートで綺麗にするのには限界があります。住宅にすることでアトリエよりは設定家賃を上げられるかもしれませんが、工事費用は倍かかったところで、月額総家賃は5万円増えるかどうかというところでしょう。

それなら、音を出していいという価値づけをして、初期投資を抑えて最低限のリノベーションを施し、それなりの家賃を回収した方が効果的です。結果、10ヶ月で満室になり、オーナーさんは3年以内に初期投資が回収できるというコストパフォーマンスの高い物件になりました。たとえ素晴らしく素敵な作品をつくったとしても、それだけでは活用する意味がない。事業として経営が成り立ってはじめてオーナーさんは喜ぶ。そこでようやく自分も喜べるということを、私は大事にしています。

岸本千佳『都市を再編集する』第2回 不動産を通じて街の課題を解決する:Daily PLANETS:PLANETSチャンネル(PLANETS/第二次惑星開発委員会) - ニコニコチャンネル:エンタメ