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「世界の空き家対策」刊行記念トークイベントに行ってきた

注目のお二方のトーク

 2018年11月11日(木)、紀伊国屋書店新宿本店9階イベントスペースで開催された『世界の空き家対策〜公民連携による不動産活用とエリア再生』刊行記念トークイベントに行ってきました。この本の編著者である富士通総研経済研究所上席研究員の米山秀隆さんと東京財団政策研究所研究員兼政策オフィサーの吉原祥子さんが登壇されました。

 米山さんは2012年頃から空き家問題について研究をされていて、前々から研究レポートやオピニオン、ご著書から学ばせていただいています。吉原さんについてもご著書である『人口減少時代の土地問題ーー「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ』から土地の所有者不明化問題について知り、特に東京財団研究所のウェブサイトは定期的にチェックしています。今回はそんな日々学びを得ているお二方が出演されるとのことで、イベント情報がウェブサイトに掲載された8月下旬の時点ですぐに申し込みました。 

世界の空き家対策: 公民連携による不動産活用とエリア再生

世界の空き家対策: 公民連携による不動産活用とエリア再生

  • 作者:米山 秀隆,小林 正典,室田 昌子,小柳 春一郎,倉橋 透,周藤 利一
  • 出版社:学芸出版社
  • 発売日: 2018-08-31

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「世界の空き家対策」から学ぶ

 日本の空き家率は13.5%もある(2013年住宅・土地統計調査)わけですが*1、各国の空き家率はどのようになっているでしょうか。米山さんのスライドを見てみると、意外なことにアメリカの空き家率は12.7%と高く、その他の空き家率も5.4%と日本と同水準です。

 しかし他の国は軒並み一桁台ですので日本の空き家率の高さが際立ちます。日本の空き家率は2033年に27.3%に上昇する予測もされており、空き家を不動産市場に流通させていくことや空き家をこれ以上増やさないための対策などを具体的に実践していく必要があります*2

 中古比率を見ると日本は14.7%と非常に低いです。一方アメリカは83.1%、フランスは68.4%、イギリスは87.0%、諸外国では中古住宅市場がちゃんと整備されていることがわかります。もちろん統計の取り方が国によって違いますので厳密に比較できるものではないですが。

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まちづくり(都市計画)の考え方の違い

 ヨーロッパではどこでも住宅を建てていいわけではない、空き家を放置させない対策を取っている 、ということを米山さんはご指摘されていました。日本では戦後、高度成長期の住宅不足に対応するため、まち(市街地)を広げ、新築を大量に作ってきました。人口減少局面に入ると空き家がまるでスポンジの穴のように増えてきました(都市のスポンジ化)。

 一方ヨーロッパでは郊外へと無秩序にまちを広げていくのではなく、古くからあるまちをずっと使っています。空き家を放置させない対策もしっかりしていて、ドイツでは住宅の維持管理が義務とされていて所有者に対し建物近代化や修繕の命令、それができない場合は取り壊し命令を自治体が出せたり、フランスでは空き家に対する課税、自治体が強制的に利用できる制度が、イギリスでも空き家に対する課税、空き家の利用権を自治体が強制収容する制度などがあります。

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2つの放置

 次に吉原さんからは所有者不明土地問題についてお話がありました。基準地価が27ぶり上昇したとニュースになっていましたが、人口減少に伴い中長期的には地価は下落する。朝日新聞で「負動産時代」という特集記事も組まれるなど、土地を所有することのメリットというのがどんどん変化している。

 今年は明治維新から150年目ですが、明治から築いてきた日本の土地制度が現代社会に適応できなくなってきていること。2017年12月に提言をまとめた所有者不明土地問題研究会のパート2が2018年6月からスタートしていることなどご指摘されていました。

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*1:住宅・土地統計調査は5年毎に行われる標本調査で、最新の2018年版の調査結果は2019年夏頃公表される予定です。参考記事はこちら

*2:空き家を流通させようとする取組は国では、空き家対策当別措置法全国版空き家・空き地バンク住宅セーフティネット制度安心R住宅既存住宅・リフォームの活性化に向けた取組など、民間ではNPO法人尾道空き家再生プロジェクト長野市善光寺門前のエリアマネジメントMAD Cityプロジェクト宇都宮もみじ通り吉原住宅有限会社NPO法人空家・空地管理センターといった事業者や取組、家いちばスペースマーケットリノべるリビタイエシルDIYP東京R不動産ツクルバなどのサービスがあります。もちろん他にもたくさんあります。