マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

再開発事業で取り壊される予定のビルの1階で「空き家問題・遊休不動産」をテーマにイベント開催

取り壊し予定のビルの1階でイベント

2018年10月31日(水)、原宿の神宮前交差点という超一等地にあるビルの1階のスペースで「空き家問題・遊休不動産」をテーマにイベントが開催されましたので行ってきました。こちらのビルは実は東急不動産による再開発事業(神宮前六丁目市街地再開発事業)の敷地ということで、ゆくゆくは取り壊され2022年度までに店舗などが入る新施設が建設される予定です。

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イベントが開催された1階スペースは、再開発事業着手までの期間限定で誰もが気軽に立ち寄れる街の情報発信拠点・地域の交流スペース「subaCO(スバコ)」 として2018年9月に開設されました。昼間はスマホの充電をしてNPOや原宿のまちづくりに取り組む団体への寄付を受け付ける場所として、夜は日替わりで今回のようなイベントが開かれています。会場中央の机には認定NPO法人フローレンスNPO法人green birdなどのパネルと充電器、ノートなどが置いてありました。

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中古住宅の価値が評価されない

まずはリノべる株式会社執行役員の今井良樹さんからは空き家増加の現状と原因、必要な対策についてお話がありました。現状については、全国に空き家が約820万戸あることや売却や賃貸に出されていない個人住宅である「その他の住宅」の空き家が特に増加傾向にあること、全国と比較するとやや低い空き家率である東京都はそもそも空き家数が多いということ*1、などをおっしゃっていました。

次に空き家増加の原因として、(太線は筆者)

  • 需給バランス(人口減少、住宅供給過剰)
  • 新築ニーズ
  • 中古物件の価値が評価されない
  • 税制上の問題(固定資産税の優遇措置)
  • 解体費用の負担
  • 不動産登記の任意性
  • 土地建物に対しての権利意識

私としては最近、「中古住宅の価値が評価されない」というのが最も大きな原因だと考えています。戦後の住宅不足を背景に住宅が大量供給される過程で住宅の質が劣化していったことや、バブル経済により土地の価値が不当に高まり質の低い住宅でも売れ続けたこと、ひたすら市街地を広げてきた都市計画などにより、日本は新築住宅中心の住宅市場となっています。(詳しくはこちらの記事

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大事なのは物件価値を上げる仕組み

最後に対策のお話として、物件価値を上げる仕組みをつくることが重要ということをおっしゃっていました。単純に空き家バンクに掲載しているだけではダメでいかに市場に戻すのか、老朽化が酷いなどにより市場から脱落する物件をいかに減らすかが大事というお話が印象的でした。中古住宅のリノベーションにより空間資産の向上・再生を図るのがリノべるならば、スペースマーケットは空間資産の利活用がメインの領域です。

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1時間単位で貸し借り

株式会社スペースマーケット経営企画の積田有平さんからは、スペースマーケットのビジネスモデルや具体的な時間貸しの事例などについてお話がありました。使われていないスペースの情報を可視化することで、空きスペースを活用したい人とパーティーや会議などといった目的に合う場所を探している人とを結びつけることが可能になりました。リアルタイムで使っているか見えるというのがシェアリングエコノミーの特徴です、というお話がありました。 

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スペースマーケットのサイトを見てみると2018年11月5日現在10268件のレンタルスペースが掲載されています。時間貸しプラットフォームで掲載数No.1です。

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使用目的としてはパーティーや会議以外だと、写真撮影、ロケ撮影といった撮影場所に合った空きスペースも多く掲載されています。

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1時間単位で利用できるというのが手軽でいいですね。日中は職場のオフィスで働いているサラリーマンのオシャレな自宅をスペースマーケットに掲載して、すごく利用されているというお話がありました。このオシャレな自宅はかっこよくリノベーションされた感じのお部屋で、人気になるのも頷けました。

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飲食、設備、IoTなどの周辺サービスとコラボレーションすることでスペースの価値がさらに高まります。

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事例として紹介されていた空きスペースはどれも月何十万円の売り上げがあり、やはりお部屋の清潔感や写真の撮り方に気を配っているようです。古民家ASAGOROみんなの古民家fika上北沢fika桜上水代々木デザイナーズラウンジ、などが紹介されていました。どれも素敵な空間です。よくある住宅街のマンションや戸建でもコンセプトをに基づいて壁や床、インテリアなどに手を加えて行けば人気のスペースをつくれるかもしれません。

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*1:平成25年住宅・土地統計調査によると全国の空き家率は13.5%、東京都の空き家率は11.1%。最新の平成30年住宅・土地統計調査の結果公表時期は2019年夏頃です