空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

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持ち家信仰の歴史は浅い

持ち家に対する信仰にも似た志向性って戦後出来上がった価値観に過ぎません。戦中から戦後にかけての持ち家率の状況について詳しい戦後住宅政策の比較制度分析という論文の中からポイントをまとめます。

1941年の持ち家率は22.3%

  • 戦後住宅政策においては特に持ち家政策が特徴的
  • 日本の持ち家率は戦後高い値で推移しておりこれが高度成長に果たした役割も大きい
  • 戦後日本経済システムの起源は1930年代から1940年代にかけての戦中期にある
  • 戦後システムは戦中期のシステムとある種の連続性を持つという味方が広まった
  • 戦後、若いときには社宅や民間賃貸住宅に住み、結婚し家族を持つようになると住宅を取得するという人生のステージに応じた住居に関するパターンが存在した
  • 少子高齢化などによる定常化社会へ移行しつつある日本では単身者が増加し、戦後の日本において社会の中間組織の役割を果たした家族や会社という組織が揺らぐ中、来るべき住居のあり方についての議論がなされている→地域社会圏
  • 東京R不動産に代表されるように、既存の建築物の改修またはリノベーションにより定常社会に対応した住まいとライフスタイルの提案と実践がなされている
  • 戦後の住宅政策について多くの研究書がある神戸大学の平山洋介教授の著書「都市の条件」によると戦後一貫して持ち家率は6割前後という高い比率で推移しているが、戦前の特に都市部では民営の借家の比率が高く持ち家率は低かった*1

f:id:cbwinwin123:20181125132851p:plain(出典:戦後住宅政策の比較制度分析:赤囲いは筆者による加工)

戦後の持ち家率の高さはの起源は戦中期にある

  • 野口悠紀雄著「1940年代体制」、平山洋介著「住宅政策のどこが問題か」などによると、1939年に地代や家賃の高騰を防ぐために国家総動員法の規定に基づき地代家賃統制令が公布、施行された
  • 1941年には借地法・借家法の改正が行われ、地主や家主の解約権に制限が加えられた
  • これらは戦時体制を整えるため、特に世帯主が応召された家族を保護するために実施されたと考えられているが、これを契機に借家人に対する払い下げが進み一気に持ち家率が上昇した
  • ここからわかるように戦後の持ち家率の高さの起源は戦中期にあり、他の戦後日本経済システムと同様に住宅システムもまた戦中期から連続性を有する制度

戦前である1941年の時点では借家が中心だったこと、戦中期の政策が起源となり持ち家率が上昇していったことがわかります。

江戸時代の土地は全て幕府の所有物

1873年の地租改正発布により日本で初めて土地に対する私的所有権が確立しました。土地が個人の財産となり売り買いや担保に入れたり土地に流動性が生まれました。江戸時代の土地は基本的に全て幕府の所有物でした。明治から大正時代の住宅土地統計データがなかなか出てこないですが、こちらのレファレンスによると、

1922(大正11)年に東京府が官公庁吏・教員・会社員・銀行員といった中級階級の人々を対象に行った住まい調査によれば、借家率は93%で、持ち家に住んでいた人はわずか7%しかなかった。

明治30年~40年代にかけて、人々はどのような住居に住んでいたのか。当時流行していた(明治31年に提... | レファレンス協同データベース 

 とあり、借家中心の住宅事情が伺えます。

戦後システムの耐用年数は過ぎた

まとめると、

  • 土地の私的所有権という考え方は江戸時代にはなく明治に入って初めて認められた
  • 明治、大正時代の住宅土地統計データはなかなか出てこないが1922年時点で借家率93%だったというレファレンスの情報があった
  • 1941年の大都市住宅調査によると借家率が約76%、持ち家率が約22%
  • 戦中期の政府の政策により1948年以降、持ち家率が約60%で推移するようになった

ということで戦後、持ち家率が借家率を抜くわけですがもはや土地神話は過去のものとなり、人口減少や不動産登記制度の不備などを背景に所有者不明土地など「負動産」問題がメディアを騒がせ、新築・持ち家優遇中心で中古・賃貸住宅市場を育ててこなかった住宅政策や住宅市場や無秩序な市街地開発を許してきた都市計画などにより過剰な住宅供給がなされた結果、空き家が増加し、住宅ローン減税延長などにより新築住宅建設を後押ししつつ空き家対策で公費を支出しているという将来ビジョンも一貫性もない政策が続けられています。

もはや戦後の延長上ではなく現代の情報環境やグローバル化、テクノロジーの進展などを踏まえて価値観や政策、サービスを更新させていく必要があります。

*1:1941年に全国24都市を対象とした「大都市住宅調査」から。