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韓国で進む空き家整備事業と小規模住宅整備事業

 2018年9月に刊行された「世界の空き家対策」 の「第6章 韓国 スピード感のある空き家整備事業」から、韓国の空き家に関する事業についてまとめます。著者は明海大学不動産学部教授の周藤利一さんです。以下、黒字強調は筆者によります。

2016年1月に空き家対策を初めて立法化

 韓国では2016年1月に空き家対策を初めて立法化しました。これにより、空き家所有者に対する是正措置に法的な裏付けが得られるようになりました。 

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>1 空き家対策の立法化

  • 韓国政府は、日本の建築基準法に相当する建築法を2016年1月19日に改正し、次のような空き家対策を初めて立法化した
  • 基礎自治体の長は、1年以上誰も居住または使用していない住宅または建築物が公益上有害な場合や都市美観・住居環境に著しく障害になる場合、住居環境または都市環境改善のためにインフラを整備する必要がある場合には、建築委員会の審議を経て、空き家所有者に対し撤去等必要な措置を命じることができる
  • この場合、所有者は、特別な理由がない限り、60日以内に措置を履行しなければならない

事業法としての性格が強い「小規模住宅整備法」

 さらに2018年2月には小規模住宅整備法が施行されています。これは空き家だけではなく老朽・不良建築物も対象としていることや、空き家や老朽・不良建築物の整備のために事業手法を新たに導入したことなどが特徴的です。

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>2 小規模住宅整備法と空き家整備事業>(1) 法制定の経緯と特徴

  • さらに、建築法の改正だけでは不十分であるとして、議員立法により空き家および小規模住宅の整備に関する特例法(略称:小規模住宅整備法)が2018年2月9日から施行されている
  • この法律では、「空き家」を、地方自治体の長が居住または使用の有無を確認した日から1年以上誰も居住または使用しない住宅と定義している
  • 大きな特徴は、第一に空き家だけでなく老朽・不良建築物も対象としていること、第二に空き家や老朽・不良建築物の整備のために事業手法を新たに導入したこと
  • これは、再開発やマンション建替えなど都市の再整備を一元的に規律する都市および住居環境整備法が規定していた街路住宅整備事業と小規模再建築事業を移管したうえで、事業手続きを簡素化し、建築規制の緩和や支援などのインセンティブを拡充したもの
  • 日本の空家等対策特別措置法と比較すると、事業法としての性格が強い

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>2 小規模住宅整備法と空き家整備事業>(2) 空き家整備計画

  • 市長・郡守等は、空き家を効率的に整備または活用するために、空き家整備の基本方向、空き家整備事業の推進計画および施行方法、空き家整備事業に必要な財源調達計画を含む空き家整備計画を策定して施行することができる

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>2 小規模住宅整備法と空き家整備事業>(3) 空き家等の実態調査

  • 実態調査では、必要に応じて空き家やその敷地に立ち入ることができ、住民登録電算情報(住民登録番号、外国人登録番号等の固有識別番号を含む)、国税、地方税、水道・電気料金等の資料・情報を収集・利用することができる

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>2 小規模住宅整備法と空き家整備事業>(4) 空き家情報システム

  • 広域自治体の長は、実態調査の結果に基づいて空き家を効率的に整備するために情報システム(空き家情報システム)を構築することができ、関係行政機関の長や公共機関の長に対し、システム構築のために必要な資料や情報の提供を要請することができる
  • 要請を受けた機関の長は、特別な理由がない限り、これに応じなければならない

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>2 小規模住宅整備法と空き家整備事業>(5) 空き家整備事業の施行方法

  • 空き家整備事業は、市長・郡守等または空き家所有者が直接施行したり、韓国土地住宅公社、地方公社といった公的デベロッパー、建設業者など民間デベロッパーも施行することができる

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>2 小規模住宅整備法と空き家整備事業>(6) 空き家の撤去

  • 市長・郡守等は、崩壊・火災等の事故または犯罪発生の恐れが大きい場合や後衛騎乗有害な場合または都市景観や住居環境に対し著しく障害となる場合には、空き家整備計画により、その所有者に対し、撤去等の必要な措置を命じることができる
  • この場合、所有者は、特別な理由がない限り60日以内に措置を履行しなければならず、履行しないときは市長・郡守等が職権で撤去することができる

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>2 小規模住宅整備法と空き家整備事業>(7) 小規模住宅整備事業

  •  「小規模住宅整備事業」とは、老朽・不良建築物の密集地域で施行する以下の事業を言う
  • ①自律住宅整備事業
  • ②街路住宅整備事業
  • ③小規模再建築事業

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>2 小規模住宅整備法と空き家整備事業>(8) 事業活性化のための支援策

  • 補助・融資
  • 共同利用施設使用料等の減免
  • 改築・用途変更の特例
  • 建築規制の緩和
  • 賃貸住宅建設における容積率の特例
  • 整備支援機構
  • 賃貸管理業務等の支援

都市再生事業の一種として

 例えば街路住宅整備事業は、小規模住宅街を街区単位で整備する都市再生事業の一種として導入されました。空き家や老朽・不良建築物単体ではなく、面的にアプローチする方法が多く採用されているように思います。

≪2  空き家整備の事業手法を立法化>3 空き家整備事業の推進状況

  • 都市および住居環境整備法に基づき2012年に導入された街路住宅整備事業は、道路と接する小規模住宅街を街区単位で整備する都市再生事業の一種
  • 当初は「ミニ再建築」と呼ばれ、大規模再開発・再建築事業の代案として注目されたが、事業規模が小さく、事業費調達が困難で、分譲が売れ残るリスクも大きいため、一時は市場で無視されていた
  • しかし、自治体が事業費、移転費用、鑑定評価費用に対する補助などの支援策を打ち出し、事業の法的根拠が小規模住宅整備法に移管されて手続きが簡素化されたことから、事業条件が改善され、市場でも注目されるようになった

「世界の空き家対策」(学芸出版社)198ページ

「世界の空き家対策」(学芸出版社)198ページ

 

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世界の空き家対策

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  • 作者:米山 秀隆/小林 正典
  • 出版社:学芸出版社
  • 発売日: 2018年08月31日