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大規模水害リスクの高いエリアは新築住宅建設を禁止すべき

江東区水害ハザードマップのインパクト

 11年ぶりに改訂された*1「江戸川区水害ハザードマップ」について、”ここにいてはダメです”というフレーズに対する反響がニュースやSNSで伝えられています。江戸川区は荒川、江戸川、そして東京湾に囲まれており7割が海抜ゼロメートル地帯です。過去には昭和24年8月のキティ台風、昭和22年9月のカスリーン台風では甚大な浸水被害をもたらしました。巨大台風や大雨などにより河川が氾濫したり高潮が発生したら区内のほとんどが水没すると予想されています。

f:id:cbwinwin123:20190611195102p:plain(出典:江戸川区水害ハザードマップ

江戸川区だけじゃない

 江戸川区の他にも墨田、江東、足立、葛飾を加えた江東5区エリアの大規模水害リスクは、2018年8月に発表された江東5区大規模水害ハザードマップで既に指摘されているところです。250万人が被災すると予測されています。このときも結構ニュースになりました。

f:id:cbwinwin123:20190611200257p:plain(出典:江戸川区水害ハザードマップ

長いところでは2週間以上浸水が続くことに

 キティ台風しかりカスリーン台風は8、9月といった夏場に発生しています。つまり、蒸し暑い季節に大規模水害の危険性は高まります。マンションの上層階だとしても、水道・電気・ガス・トイレといったライフラインが満足に使えない状況となり、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。

f:id:cbwinwin123:20190611211725p:plain(出典:江戸川区水害ハザードマップ

河川氾濫や土砂災害の危険性がない区外へ避難を

 ではどうすればいいかというと、浸水リスクの低い区外へ避難することが必要です。しかし避難先は各自で確保することになっていますので、避難先を見つけることができるかどうかがハードルとなります。この点、一時避難場所として空き家しかりマンションやアパートの空室が活用できるはずです。

f:id:cbwinwin123:20190611212233p:plain(出典:江戸川区水害ハザードマップ

大規模水害リスクの高いエリアは新築住宅建設を禁止すべき

 このような大規模水害リスクの高いエリアでは、新築住宅建設は禁止すべきです。そもそもこれから本格的に人口減少していく中で新築住宅の総量規制がされず、緩い都市計画は機能せず、とにかく建てて売ろうという不動産業界、漫然と長期の住宅ローンを組んで新築・持ち家を欲しがる消費者、中古住宅を適正に評価できない金融機関など、様々なアクターによる合成の誤謬ともいうべき状態に陥っています。災害リスクといった観点からでも、住宅の総量規制を自治体レベルで本格的に考えていくことが何より重要です。

防災のために住宅の新築を禁止するといった土地利用の規制は、私権の制限という観点からではなく、将来世代へのメッセージとして残すという観点からとらえることも重要です。災害リスクといった観点から、居住地としての総量をこれ以上増やさないようにするにはどうすればよいのかについて、私たち一人一人が真剣に考える必要があるのです。
老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)P156