空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

空き家を活用することで新しい価値を生み出し、社会的課題解決へつなげる好循環をつくるために書いているブログです。

少なくとも空き家に関する調査の精度は前回よりも上がっている(平成30年住宅・土地統計調査)

社会課題カンファレンス「R-SIC2019」を聴講

 2019年7月27日、28日はリディラバが主催する日本最大規模の社会課題カンファレンス「R-SIC2019」を聴講してきました。在宅介護やオルタナティブな教育、海洋プラスチック、教員や官僚の多忙化する働き方、そして住宅など様々な社会課題に日々向き合っている方々のお話はとても面白く、それぞれの社会課題に対する認識の高まりや解像度を上げることにつながりました*1

「空き家はそんなに増えていない」のか?

 しかし一点気になってモヤモヤしたのが『借りられない、暮らせない――。
危機に瀕する「高齢者の住まい」』というセッションです。登壇者のお一人であるR65不動産の山本遼さん中川寛子さんの記事などで知っていました。家賃の支払いや居室内での死亡事故などへの懸念から高齢者の入居に家主の7割が拒否感を持っているという国交省の調査結果が示すように、住宅を所有していない高齢者の住まいの確保は簡単に解決できない社会課題です。山本さんの生のお話は初めてでしたのでとても興味深く聞けて、今後も注目していきたいと思わせられました。

f:id:cbwinwin123:20190801100245p:plain(出典:リディラバが見る、社会課題の最前線 | R-SIC2019

 で、気になったモヤモヤというのが大東建託株式会社賃貸未来研究所の宗健さんの空き家に対する捉え方です。セッションの中盤に差し掛かったくらいに山本さんが増えている空き家を活用することについてふれたのですが、そこで宗さんは「空き家はそんなに増えていない」、「空き家問題はない」、という発言をされました。総務省による5年に1度行われる住宅・土地統計調査による空き家の調査方法が外観調査をメインとしていることがその理由ということをおっしゃっていました*2。これに対し、最新の平成30年住宅・土地統計調査の空き家に関する調査内容の精度について検証します。

空き家に関する法律施行や住生活基本計画における空き家の成果目標設定(初)が背景に

 2019年4月に公開された「平成30年住宅・土地統計調査」(以下、平成30年調査)と前回の「平成25年住宅・土地統計調査」(以下、平成25年調査)の大きな違いは、前提として空き家に関する法制度が整備・強化されているかいないかです。空き家対策特別措置法が2015年6月に完全施行され、2016年3月に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)において空き家に関する成果目標が初めて設定されました*3。このように前回調査時よりも住宅・土地統計調査における空き家把握に関する重要性が増大していることにより、平成30年調査ではこれまではなかった世帯からの視点(所有者側からの視点)を加えました。つまり、調査員による外観調査だけではなく空き家所有者からの直接回答を追加しました。平成30年調査の調査の進め方や内容については調査実施前に4回行われた「平成30年住宅・土地統計調査に関する研究会」における議論で詳しく紹介されています。

f:id:cbwinwin123:20190801114123p:plain(出典:平成30年住宅・土地統計調査に関する研究会(第1回)資料3-4 調査事項の主な検討内容(案)(PDF:836KB)

現住居以外の住宅で「居住世帯のない住宅」の項目を新規追加

 平成25年調査までの空き家に関する調査は調査員による外観調査だけでした*4、しかし平成30年調査はそれに加えて調査対象世帯に書いてもらう調査票に、現住居以外の住宅で「居住世帯のない住宅」の項目を新規追加し、空き家に関する調査の質を上げています。

f:id:cbwinwin123:20190801115805p:plain(出典:平成30年住宅・土地統計調査に関する研究会(第2回) 資料1 調査項目見直しの基本的な考え方(案)(PDF:414KB)

建物調査票による空き家と世帯調査票による空き家

 これまでの調査方法と同様、調査員が外観などから判断する建物調査票における空き家と、今回新たに空き家に関する調査項目を追加した世帯調査票における空き家の2種類が明らかになるはずです。電話で問い合わせてみたらこちらのデータの公開は2020年1月とのことです。

f:id:cbwinwin123:20190801123227p:plain(出典:平成30年住宅・土地統計調査に関する研究会(第3回) 資料1-3 平成30年住宅・土地統計調査の「空き家」の捉え方(PDF:379KB)

同じ「空き家」でも各々の統計調査の対象や方法から違ってくる

 以上、少なくとも平成30年調査では空き家に関する調査の精度は前回よりも上がっているということをまとめてきた。平成30年調査はまだ概数集計が公開されただけであり、今後より詳細なデータが公開される予定です。一言で空き家と言っても国や自治体でそれぞれ統計調査の対象や方法は違います。そのため単純に数字だけを比較してどちらかがフェイクだかのように判断するのはよくない。

*1:社会課題に特化したウェブメディアであるリディラバジャーナル面白いです。社会課題を多面的、多角的、多層的に構造化して記事としてまとめて情報発信してくれています。定期購読料は月額1000円くらい。おすすめです。

*2:具体的な論拠は「住宅・土地統計調査空き家率の検証」という論文が公開されています。

*3:2023年に約500万戸まで増加すると予測されている個人住宅の空き家を2025年までに約400万戸に抑制する、と明記されています。

*4:楽待の記事によると厳密には調査員が空き家の所有者に面接するよう努めたり、近隣住民や建物の管理者に確認するなど、だいぶ手間をかけていることが伺われます。また、アパートやマンションなどは管理人に確認することで空き室を把握しています。