マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

MENU

空き店舗を後継者にバトンタッチできるか問題

「不動産のいろは」に記事を寄稿

 「不動産のいろは」というウェブメディアに記事を寄稿しました。東京都大田区池上にある1933年築の木造2階建て元そば屋が店主の高齢化に伴い2014年に閉店しその後空き家になっていたのですが、古くから池上本門寺の参拝客や地元の方々に親しまれてきたお店であり建物であることから地元住民主導で保存プロジェクトが発足し、新しい事業者を探し、必要な掃除や修繕、改修を経て2015年10月に「古民家カフェ蓮月」としてリニューアルされた経緯をホームズプレスなどの既出記事を参考にまとめました。今回は実際にお店にも行って写真を撮ってきました(2019年8月時点)。

fudousan-iroha.jp

f:id:cbwinwin123:20190822095556j:plain▲「古民家カフェ蓮月」の外観。この日は8月の日曜日で猛暑日でした

空き店舗を問題だと考えているのは所有者ではなく周りの人

 空き家や空き店舗が蓮月のような居心地のいい場所へと生まれ変われば多くの人の満足につながるし、地域経済も回るし、街の歴史や文化や記憶も引き継がれるし、良いことづくめです。現行制度では不動産所有者が空き家や空き店舗を貸そうとしない限り、第三者が勝手に借りることはできません*1。 
 空き家や空き店舗の所有者による「貸す意志」がスタート地点となります。しかし実際問題として貸す意思がない場合が多いというのが実態です。平成30年度商店街実態調査*2によると、商店街では人口減少や後継者不足により空き店舗の増加が問題としつつも、地主や家主等貸して側の都合による空き店舗が埋まらない理由の2番目が「所有者に貸す意思がない」だからです。1番目は「店舗の老朽化」、3番目は「家賃の折り合いがつかない」です。
 つまり、空き店舗を問題だと考えているのは所有者ではなく周りの人たちが多いということになります。

f:id:cbwinwin123:20190822095316p:plain(出典:https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2019/190426shoutengaiA.pdfp.6)

後継者に引き継ぐという文化と制度をつくっていく

 商売している、していないの差はあるにせよ空き家や空き店舗を後継者に引き継ぐという文化や制度をつくっていく必要があります。今回、記事としてまとめさせていただいた蓮月は地元住民たちが自然発生的に保存に向けて動きが起きましたが、こういったケースばかりではなく、ほとんどの空き家や空き店舗はそのまま放置されがちです。建物は使わなくなったら次の代に引き継ぐ文化だったり、税制などの制度により政策的に引き継ぐことを促していく、引き継ぐことが合理的となる、または引き継がないことが不合理となるようにするといったことが重要です。
 商店街においては肝心の後継者対策はほぼ講じていない状況です。しかし店主の高齢化は進んでいきますので空き店舗は増えていくことは明らかです。全国で空き家や空き店舗を再活用しているキラリと光る取組は散らばっています。そう行った取組のプロセスを記事としてまとめ、発信していくことで空き家や空き店舗の再活用に取り組む人たちのお役に立てれば本望です。また、自分でも空き家を借りて社会的課題解決に取り組んでいきたいと考えています。

akiya123.hatenablog.com

f:id:cbwinwin123:20190822151750p:plain(出典:https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2019/190426shoutengaiA.pdfp.14)

*1:一方で国土交通省土地政策分科会企画部会では、所有者不明土地や空き家などを公共組織や民間企業、個人が利用しやすくしたり、流通しやすくする方向で土地基本法改正などが議論されています。(参考記事

*2:昭和45年から開始された調査で平成30年度で13回目となります。