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空き家を活用して新しい価値をつくる

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空き家を活用して待機児童問題を改善する

 2019年末、寒空の下、都内に13箇所ある空き家を活用した小規模認可保育所である「おうち保育園」を回ってきました。具体的には、周辺を歩き外観を写真で撮り、空き家活用の経緯などをネットで検索、編集し記事として「不動産のいろは」へ寄稿しました。

fudousan-iroha.jp

機動的、低コスト、きめ細かな保育ニーズに対応 

 待機児童は都市部に集中しており、その大半が0〜2歳児です。一方で都市部は相対的に地価が高く、定員20人以上の大型保育園に見合う土地を確保するのはなかなか困難です。しかも保育ニーズはゲリラ的に発生するため予測が難しく、せっかく保育園を作っても定員割れしてしまうリスクも伴います。
 2018年住宅・土地統計調査では全国の空き家数は848万9千戸、空き家率は13.6%と過去最高を更新しています。既存ストックを活用することができれば機動的に低コストできめ細かな保育ニーズに合わせて保育サービスを提供することが可能です。この理屈を2010年から実践し、2015年には「子ども・子育て支援新制度」として国の待機児童政策として全国展開されているのが認定NPO法人フローレンスの「おうち保育園」です。 

隣り合った2室を一体的に使う

 再開発によりタワーマンションが林立している江東区豊洲エリアでも保育園用地の確保は困難でした。そこでUR協力の下、豊洲4丁目団地の空室を「おうち保育園とよす」へ転換することで機動的かつ低コストに保育サービスを提供することに成功しています。隣り合った2室を一体的に使うことで規制をクリアしている点などは、共同住宅の空室活用による小規模保育所立ち上げの際に参考になります。

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人口流入エリアにピンポイントで開設

 大崎駅と五反田駅の中間くらいにあるURのマンションの空室を活用した「おうち保育園ごたんだ」。こちらのエリアも再開発で大型マンションなどが建ち共働き世帯が急増しており、ピンポイントに保育サービスを提供しています。人口が増えている、しかも子育て世帯が増えているとあれば、必然的に保育ニーズも高まります。高まる保育ニーズに素早く対応できるという利点が発揮されています。

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一緒に保育園をつくる作業

 中野新橋駅から徒歩5分の「おうち保育園なかの新橋」は賃貸ビルの空室を活用しています。元々はオフィス・店舗用だったためリフォームしています。親や子どもたちも参加した壁塗り体験は「おうち保育園」初のイベントだったそうです。壁塗り体験を通じて一緒に保育園をつくる作業に関わるという経験はなかなか味わえないものです。

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子育て支援への予算拡充が急務

 2019年の出生数は86万人となりました。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計よりも減少ペースは2年早いなど、少子化がさらに加速化しているのが現状です。にもかかわらず日本の家族関係社会支出は諸外国に比べて低い状況です。
 年金や医療、介護はもちろん重要ですが、未来の世代へ投資を傾けていかないと生産人口が確保できないですし、新しいサービスやプロダクトの創造にもつながらず、経済も回っていかない。子育て支援への過少投資が問題です。

f:id:cbwinwin123:20200114201646p:plain(出典:第1部 少子化対策の現状(第1章 2): 子ども・子育て本部 - 内閣府

社会起業と政策起業

 最後に、今回記事を作るにあたって「政策起業」という概念を知りました。社会的課題をビジネスの手法で解決するのが社会起業だとすれば、社会起業の現場で障壁となる制度や規制に対し、政治や行政の思考原理や行動様式を踏まえて制度や規制のアップデートを戦略的に進めていくのが政策起業なのではないかと考えました。
 「おうち保育園」を立ち上げ、政治家や行政職員へ働きかけをしつつ、小規模保育の業界団体を作り、その長となることで有識者として審議会のメンバーとなることで、国や自治体の制度設計にスタートから関わり政策をより良い内容にしていくというプロセスこそ政策起業です。
 ここら辺、こちらの本が参考になります。