待機児童問題と空き家問題を一気に解決する「おうち保育園」が都内各地に出来て欲しい
マンションの空き部屋や戸建て空き家や医院、事務所用途の物件など、様々な“空き物件”を有効活用して保育園につくりかえている認定NPO法人フローレンスの「おうち保育園」。
地価が高く、そもそも空いている土地が少ない都会では点在する「空き家」を活用することでスピーディかつ低コストで「場所」「スペース」を確保することが可能です。
「空き家」を活用することで、待機児童問題が深刻な地域にピンポイントで開園が可能となります。さらに言うと様々な要因で人口は増減を繰り返します。例えばある地域の人口が減少してきて待機児童数がゼロになればスピーディかつ低コストに撤退することも可能です。このような人口動態の変化にも柔軟に対応することができる仕組みが”空き家を活用した「ミニ保育園」の経営です。
現在(2014年4月)「おうち保育園」は都内5区に13園が開園しているが・・・まだまだ足りない
都内13園の内訳を見ると、豊島区4園、江東区3園、品川区3園、中野区2園、台東区1園、と設置している区に偏りがあります。
一方、都内で待機児童数ワースト3(2013年4月1日時点)は世田谷区884人、練馬区578人、大田区438人ですが、この3つの区には待機児童問題と空き家問題のソリューション「おうち保育園」が一つも無いのです!
世田谷区からの回答
3区とも1週間以内に返事をくれました。今日は待機児童数ワースト1の世田谷区からの回答を全文掲載します。
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区民の声26−0222
平成26年5月16日
舟橋 拓 様
世田谷区子ども・若者部
保育計画・整備支援担当課長 田中 耕太
日頃から、世田谷区政にご理解とご協力をいただき、誠にありがとうございます。
「区長へのメール」は区長が毎日確認し、担当所管へ必要な指示等を行っています。
お寄せいただきましたご意見につきまして、担当所管として次のとおり回答をさせていただきます。
近年、子育て世代の就労の状況や就労形態の変化に加え、転入等により区における乳
幼児数が増えていることなどから、保育サービス施設利用希望者が非常に多くなってお
ります。
平成26年4月の認可保育園の入園申込者数は5,363人で、待機児童は昨年の884人
から1,109人と増加し、多くの保護者の皆様に多大なご迷惑をおかけしており、誠に申
し訳なく思っております。
小規模保育事業につきましては、子ども・子育て支援新制度において、地域の実情に
応じた多様な目的に活用できる仕組みとして制度化され、区としては現在、具体的な運
営手法とあわせ、建物の耐震性、消防関係法令、建築関係法令等との整合性などの課題
を踏まえ、整備手法等について検討しているところです。
なお、今年度につきましては、公有地を活用した整備を行うとともに、民有地を活用
した施設整備にも取り組み、区民要望の高い認可保育園の整備を中心に約1,400人分の
受入枠の拡大を見込んでおります。
区といたしましては、今後とも、安心して子どもを生み、育てることができ、また子
どもが心身ともに健やかに成長できるよう、子育て支援に努めてまいりたいと考えてい
ます。何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。貴重なご意見をいただきあり
がとうございました。
【問合せ先】保育計画・整備支援担当課
保育計画・整備支援担当
電話 5432−2323
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高まる保育サービス施設ニーズ、「子ども・子育て支援新制度」の動向、根強い”認可”保育園人気
世田谷区からの回答のポイントとしては3つあると思います。
(1)高まる保育サービス施設ニーズ
これまで専業主婦だった人も共働きになったり、世田谷区外から引っ越しなどで移り住んできた子育て世帯の増加などにより保育園に子供を預けたい親が増えています。現在(2013年発表)夫婦共働き世帯数は1,000万世帯を超えています(専業主婦世帯は約800万)。
1000万世帯突破…共働き世帯の増え方をグラフ化してみる(2013年発表版)(最新) - ガベージニュース
また、「他地域からの転入、あるいは他地域への転出によって生じる増減」をそれぞれ「社会増」「社会減」と言いますが、世田谷区は現在、社会増気味です。結果、子育て世帯もますます増えます。
(2)子ども・子育て支援新制度の動向
認定NPO法人フローレンスの駒崎さんもおっしゃっているように約70年ぶりの”保育改革”である「子ども・子育て支援新制度」は2015年度から実施されます。これからは「おうち保育園」のようなミニ保育園が「小規模保育」(定員6~19人)として制度上位置づけられます。その結果、公費(税金)が投入され施設面や保育士の確保などが充実することになり、多様な保育サービスの量的拡大と質の向上につながることが期待されています。
(子ども子育て支援)新制度で、子育て家庭には様々な変化が及ぶ。
一つは、保育の利用手続きの仕組みが変わり、今秋から申請も始まることだ。保育を利用するには、現在は希望の施設名を伝えて申し込むと、市町村が「当否」を決めるのが一般的だ。新制度では利用したい人はまず「保育の必要性」の認定を市町村から受け、認定されたら原則、全員が利用できる仕組みに変わる。
また、保育が必要ない3~5歳の子の家庭も「教育」の利用が認定される。
二つ目は、保育を利用できる要件が広がり、パート勤務や在学中の人なども対象となる点だ。フルタイム勤務なら1日最大11時間利用できる「保育標準時間」、パートなど短時間労働者でも同8時間の「保育短時間」の認定が受けられる。条件が全国で統一され、都市部はフルタイム勤務でも入れないといった状況が是正されていく。
三つ目は、保育の定員や種類が増えることだ。市町村は、0~2歳児が対象の「小規模保育」(定員6~19人)や「家庭的保育」(同1~5人)など新たな保育事業を導入できることになり、国の給付を受けられる。待機児童解消だけでなく、子どもが減る過疎地でも地域事情に応じた保育を行えると期待されている。
この新制度では市区町村が主体的に動くことが前提とされていることから、小規模保育向け物件の選定などに時間と手間がかかっているんだと思います。耐震性の問題や消防法や建築基準法などの法令に抵触しないかなど課題は多いですが一つ一つクリアしていくほかないです。
(3)根強い”認可”保育園人気
認可なら安全、認可外は危ないという構図は幻想です。確かに現時点では認可保育園には公費が大量に投入されているのでその分保育料が安かったり、広い庭があるなど施設面がしっかりしているなどメリットがありそうです。しかし結局は認可でも認可外でも保育園はそれぞれ違うということです。今すぐにでも子どもを預けないと働きにいけない親の存在を考えると悠長にしている時間はまったく無い。
先日のベビーシッターの事件にも言えますが、認可外保育園の利用や面識の無いベビーシッターに子どもを預けることは”やむにやまれず”という側面があるということです。経済的な事情や就労形態、家庭の状況などによりこのようないわゆる”傍流”の保育サービスを利用せざるをえない人は確実にいます。そういった人たちに対するセーフティーネットとして機能はすべきはまずは政治・行政です。
もはや政治・行政に担えない社会的課題は山積しています。フローレンスのように”NPOがまず社会的課題解決を実践してみせ、ロールモデルをつくり、それを政治・行政が制度化して他地域へ横展開”という構図にしか「いま、ここ」で起きている社会的課題の解決は無いのではないかと思っています。
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