「空き家対策法案」を通常国会で提出
空き家対策には大きく分けて、
- 管理が行き届いていない問題のある空き家の撤去や適正管理促進
- 腐朽・破損状況が良好なまだ活用し得る空き家の有効活用
という2つの方向性があります。
今後「空き家対策法案」が制定される見込みということで、市町村に立入り調査の権限を認められたり、「空き家利活用データベース」が整備されるなど”空き家の情報収集”や管理不全な問題のある空き家に対する撤去や修繕、立木伐採などの措置などが強化されることになります。
参照記事:2014年度は今後の空き家対策の重要な節目、「空き家対策特別措置法案」を通常国会へ提出 - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ
空き家管理条例は272自治体で施行(2013年10月1日時点、国土交通省調べ)
全国の地方公共団体(地方自治体)の数は1797。空き家管理条例を施行している自治体は272ということで一見少ないように見えます。しかし、2012年度施行が74件、2013年度施行が122件と最近になってきて制定・施行が急速に広がっています。
行政の空き家対策の課題、空き家活用の対策が少ない、空き家所有者情報の行政機関内部での使用が困難
ただし自治体の空き家管理条例は管理不全な問題のある空き家の撤去や適正管理促進といった対策が主眼です。そのため空き家の活用といった観点からの対策は空き家の撤去・適正管理促進に比べると少ないです。
また、空き家所有者が不明で連絡先もわからないケースというのも当然あります。その場合、不動産登記がしっかりなされていれば登記所で申請をすれば空き家所有者の氏名や所在地はわかると思いますが、連絡先(電話番号など)まではわからないはずです。
空き家:吉祥寺駅徒歩5分。
空き家:三鷹台駅徒歩5分。
このように登記情報からたどれなくても固定資産税の課税情報から空き家所有者の連絡先がわかる場合がありますが、税情報をその目的外に使用することは禁じられています(地方税法22条)。ですがこれはあくまでも原則です。問題のある空き家の撤去や適正管理を促すという”公益目的”のために空き家所有者情報(具体的には氏名、連絡先)を目的外使用することは一律に禁止されるものではないはずです。しかし現行ではそういった実例が少ないことから二の足を踏んでいる自治体が多いのが実態だと思います。
来年4月から施行される京都市の「空き家条例」が上記2つの課題をカバー
京都市の空き家対策については以前書きました。地域の自治会や不動産業者、NPOなどと協力しながら”面的に”空き家対策に取り組んでいます。その京都市で自治体としては珍しい”空き家活用”も盛り込んだ「京都市空き家の活用、適正管理等に関する条例」が来年4月から施行されます。
京都市の空き家条例の先進的なところはまず第一に「空き家活用」も条例の中に盛り込んでいる点です。具体的には第10条で空き家の所有者や事業者、市民などに対して空き家活用の理解を深めるような対策などが明記されています。
第二に「空き家の所有者等を確知することができない場合の対応」も条例の中に盛り込んでいる点です。具体的には第16条で、
<京都市空き家の活用、適正管理等に関する条例 第16条3項>
市長は,空き家の所有者等又はその連絡先を確知することができない場合において必要があると認めるときは,固定資産税の課税その他の空き家の適正な管理に関する事務以外の事務のために利用する目的で保有する情報で空き家の所有者等又はその連絡先を確知するために有用なものについては,京都市個人情報保護条例第8条第1項の規定にかかわらず,この節の規定の施行に必要な限度において,自ら利用し,又は提供することができる。
読みづらいですねー。これは何を言っているかというと、空き家所有者の氏名や連絡先がわからない場合に所有者の氏名や連絡先を把握するために(原則的に同じ行政機関内でも個人情報保護の観点から利用してはいけない)固定資産税などの課税情報を利用できるということです。
このように「所有者特定の目的で課税情報を目的外使用できる」という規定を設けることでスムーズに空き家所有者情報を収集できることになります。
市民から見ると同じ○○市に出した情報を○○市の内部部署間で共有できていないことは不思議に思うかもしれません。「縦割り行政」といわれる所以もこういった所にも原因があるんでしょうか。
空き家対策特別措置法の制定・施行が待たれる
京都市の空き家条例はたしかに先進的ですが、空き家活用の件も所有者情報の目的外使用の件も「空き家対策特別措置法案」には含まれています。したがって、空き家対策と区別措置法が施行されれば全国で一斉に総合的な空き家対策が進むことが予想されます。今年の通常国会は幕を下ろしましたが継続審議がなされると思います。
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