空き家の増加がやがて犯罪を誘発する(割れ窓理論)
空き家率が高い地域は犯罪率も高い
管理が不十分な空き家の増加はやがて、建物の劣化による屋根や壁の崩落や雑草の繁茂、獣害虫の発生、不法投棄の温床、景観の悪化など、近隣住民にとって他人事では済まない問題へと発展していくおそれがあります。
そして放火や不法侵入といった犯罪の温床にもつながります。ヤフーニュースに空き家問題と「割れ窓理論(ブロークンウインドウ理論)」とを絡めた記事がありました。
この理論によるとまさに空き家のままで窓ガラスが割れたり壁が崩れた状態を放置しておくと、近隣のみならず地域全体の治安レベルが低下してしまい、大げさかも知れませんが日本そのものの安全というイメージまで損なわれそうであります。従って空き家問題は不動産の問題のみならず防災や防犯や観光戦略などの問題につながるような気がしてなりません。
つまり窓ガラスが割れたり壁が崩れているような特に外観上、管理が不十分な空き家だと小さな犯罪からやがて凶悪犯罪へとつながってしまうという話です。空き家の増加が犯罪の増加につながるかどうかを調べてみたところこんなデータ(ブログ記事)がありました。
これによると総務省の「2008年版住宅・土地統計調査」の空き家データと「統計でみる市区町村のすがた2011」の都内23区の犯罪認知件数とを関連づけて空き家率と犯罪率の相関図が掲載されています。
(画像引用元)空き家率が高い区ほど犯罪率が高い傾向にあります。
地域の犯罪の原因は空き家の増加だけではないと思いますが、空き家率が高い地域では犯罪率も高い傾向にあることはわかりました。
(画像引用元)空き家から誘発される軽微な秩序の乱れ(空き家に放置されたゴミ、手入れがされていない庭木、崩れた塀や外壁、割れた窓ガラスなど)がやがて大きな犯罪につながるかもしれません。
管理不十分な空き家が犯罪の温床になった事例
今年4月のニュースから。空き家に外国人集団が不法侵入し「大麻工場」に改造されていた事件がありました。
(画像引用元)空き家には人の目が無いので長期間放置されていると放火や不法侵入などの犯罪につながりやすい。
直近の8月のニュースから。ちょっとショッキングな事件ですが、神奈川県内で男性が1年以上前から行方不明になっていた事件で空き家(アパート)がその男性の遺体遺棄の現場になっていたというケースもあります。
アパートの向かいには大型のショッピングセンターがあり、多くの買い物客らが行き交うが、アパート前の道路を通る人はそれほど多くはない。
近くで生まれ育った主婦(78)によると、アパートは十数年前まで、全ての部屋に住人がいたという。建物自体は古く、主婦が生まれたころには既に存在。大家は東京都内に住んでおり、今では全てが空き部屋となって人の出入りが途絶え、敷地内には雑草が生い茂っていた。
(画像引用元)外観上は普通の戸建て住宅に見えても、管理が不十分だと犯罪につながりかねません。
そもそも「割れ窓理論(ブロークンウインドウ理論)」とは?
「割れ窓理論」とはつまり、窓ガラスが一枚割れているだけでもそれを放置しておくと小さな犯罪を呼び込み、地域の関心も薄れていき、やがて重大な犯罪へと発展していくという学説です。
ご存知の方も多いと思いますがこの「ブロークンウィンドウ理論」とは、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングという人が提唱した考えで、割られた窓ガラスを放っておくと地域への関心が薄れて同様の軽犯罪を招き、やがては凶悪犯罪につながるという学説であります。
ニューヨーク市で94年に就任したルドルフ・ジュリアーニ前市長が治安回復のためにこの考え方を取り入れ、「小さな犯罪からしっかり取り締まろう」ということで落書きや駐車違反などの軽犯罪を徹底的に取り締まった結果、その後は殺人事件などの凶悪犯罪が大幅に減少し、NYは安全な街に生まれ変わり観光客も大幅に増えたようです。
道やその辺に空き缶やペットボトルのゴミが少しでも捨ててあると、つい一緒に捨ててしまって、それがさらにゴミを引き寄せてどんどんエスカレートしていくようなイメージですね。
空き家管理・撤去・活用のコーディネーターが必要
空き家を管理するにせよ撤去するにせよ活用するにせよ、空き家が地域一帯に広がる前になんらかのアプローチをすることが重要です。空き家オーナーがいずれかの対策に乗り出すのが一番手っ取り早いのですが、オーナーが高齢や遠い場所に空き家があるなどで難しかったり、相続したはいいけど兄弟姉妹間で話し合いがまとまらず管理責任が不明確であったり、撤去しようにも費用がかかったり、活用しようにもそもそも売れない・貸せない状態だったりと八方ふさがりな感があります。空き家問題は個別具体的で非常に複雑です。
今年の秋の臨時国会で議論されるであろう「空き家対策特別措置法案」では適切に管理されていない空き家を「特定空き家」と指定することで市町村が空き家オーナーに除却や修繕を促す機能を強化する仕組みを創設するそうです。
しかし、相続や税制、不動産市場との兼ね合いなど空き家オーナーだけの自助努力でなんとかなるような問題ではなくなっていると思います。行政が空き家対策の制度を整備したうえで空き家管理や撤去、活用をコーディネートしていく機能・役割を持った専門的な空き家仲介NPOなどの力が必要だと思います。
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