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空き家を活用して新しい価値をつくる

日本の住宅市場には全体計画が存在しない

日本は人口減少先進国

 

日本の総人口は2004年12月をピークに既に減少しつつあります。総世帯数も2019年をピークに減少すると予測されています。そして2050年には総人口が約25%、3300万人減少します。

 

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画像引用元)2050年の高齢化率40%。 

 

これからは”人口減少が前提の”事業なり政策が意義を持ちます。

 

需要と供給のミスマッチが空き家の増加を招く

 

単純に考えて、今の住宅市場は需要(人口や世帯)に対して供給(住宅)が過剰なため空き家が増加しています。立地や建物の状態などで淘汰されている物件もあると思います。市場に出ていない個人住宅の場合は高齢化や核家族化などの影響で空き家になっているケースも多いです。人口減少がトレンドの現代そして未来においてこうした空き家が管理されず放置されるとやがて近隣や地域に悪影響を及ぼし始めます。そしてそうした空き家が活用されないのはもったいないです。

 

一般にモノの値段は「需要」と「供給」で決まります。住宅の価格も需要よりも供給が少なければ上がるし、多ければ下落します。

ところが、需要面では人口が急減する一方 、供給面では新築住宅の建設が止まりません。この結果、空き家が膨大に発生することは必至です。この空き家対策について、多くの自治体は真剣に取り組まなければなりません。住宅市場は空き家急増という大きな問題を抱えているのです。

これから3年 不動産とどう付き合うかp80

 

空き家の増加は”住宅市場の欠陥”が招いています。

 

日本の住宅市場は「新興国モデル」のまま

 

現在の住宅市場では新築住宅が毎年100万戸近く建設されています。かたや空き家率13.5%で7戸に1戸は空き家状態。各自治体を中心に空き家適正管理条例を制定して老朽空き家の解体費用に助成金を出すなど空き家対策に取り組んでいます。なんとも計画性の無い住宅市場です。不動産コンサルタントの長嶋修さんは将来ビジョンが無い日本の住宅市場の問題点を指摘しています。

 

日本には「今後10年間で世帯数や住宅数はこうなる。取り壊しはこのくらい行われる。よって新築住宅を10年間でこのくらい建設しよう」といった将来ビジョンがありません。長期的な目標や計画が存在しなければ、「前年より着工数が増えればいいね」といった有り様になります。日本の住宅市場は、いわば「新興国モデル」のままといえるでしょう。

これから3年 不動産とどう付き合うかp81 

 

不動産・建築業界としては新築住宅建設は大きな仕事(儲かる仕事)だから減らしたくない。政府としても新築住宅建設は経済波及効果が高い(といわれている)ので住宅ローン減税などで後押ししたい。このような考え・精神性が業界と政府に根付いていると思います。

 

長嶋修さんの提案「人口動態などの指標に基づき、住宅総量目標を設定する」

 

OECD(経済協力開発機構)に加盟している国々の大多数は10年間の「住宅需要」と「住宅建設見込み」を推計しているそうです。

 

(OECDの諸外国は)世帯数や住宅数の現状と将来見込みを勘案し、今後の住宅滅失数や新築供給量、省エネ性能など誘導する住宅の質を決定、それに基づき税制や融資制度によってコントロールしています。

これから3年 不動産とどう付き合うかp81

 

新築住宅建設にはある程度の経済波及効果はあると思いますが、同時に空き家対策に取り組むことなどを考えるとトータルで見ると費用対効果は必ずしも高いわけではないと思います。

 

欧州の世帯数当たり新築住宅着工の指標をみると、低いほうでスェーデンの5.6%、イギリス7.2%、イタリア8.3%、多くの国は10%台を見込んでいます。我が国がイギリスと同じ7.3%なら、年間着工は35.9万戸、イタリアと同じなら41.47万戸、10%ならば49.9万戸となります(『経済調査研究レビュー』別冊「ヨーロッパいおける高層集合住宅の持続可能な再生と団地地域の再開発」翻訳版より長嶋修事務所が計算)。

これから3年 不動産とどう付き合うかp81 

 

最近の年間新築住宅建設は70万〜90万戸で推移していますが長嶋さんがおっしゃるには日本の適正な新築住宅着工戸数は40万〜50万戸程度としています。

 

コンパクトシティ・コンパクトタウンに合った住宅市場を

 

財政破綻した北海道夕張市では2012年に人口減少に対応したコンパクトシティを進める計画(夕張市まちづくりマスタープラン)を全国で初めて策定しました。人口減少を前提とした計画はこれまで自治体で全く作られてこなかったわけです。現在の人口1万人以下で高齢化率45%という夕張市からコンパクトシティに向けた具体的な取組が始まっています。全国に波及していくと良いです。”住宅総量目標の設定”など各政策を人口減少への対応をデフォルトとして考えていくようしていく必要があります。

 

これから3年 不動産とどう付き合うか

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