リノベーション・ニュージェネレーション
今回は10月27日に行われたリノベーションEXPO2014の「リノベーション・ニュージェネレーション」で聞いたお話をまとめます。イベントの副題が「リノベ界のレジェンドが訊く。君たちいったい何モノ?」ということでリノベーションビジネスのレジェンドである中谷ノボルさん(アート&クラフト)が若手の中村真広さん(ツクルバ)、宮崎晃吉さん(HAGISO)、連(むらじ)勇太朗さん(モクチン企画)に最前線のリノベーション事情を聞くというスタイルでした。
今回は中谷さんいわく、もっとも”何モノ??”と思う取組をされている連勇太朗さん(モクチン企画)の取組をまとめます。
「木造賃貸アパート」は重要な社会資源
60年代から80年代にかけて都市の急激な人口増加に対応するために建てられた「木造賃貸アパート(モクチン)」。最近では、老朽木造住宅が密集しているなどで地震などの災害の際に危険となるエリアが公表されたりマイナスなイメージがあります。しかしNPO法人モクチン企画では重要な社会資源と捉え、再生に向けて様々な取組を進めています。
都内に約16万戸のモクチン
総務省住宅・土地統計調査(2008年)によると、都内の住宅総数(空き家は含まない)は約594万戸存在します。その内、木造住宅は約54万戸、防火木造は約167万戸です。都内の住宅の37.1%は木造または防火木造住宅ということになります。
さらに共同住宅(アパートやマンション)に絞ると、木造アパートは約13万戸、防火木造アパートは約48万戸です。こちらも住宅総数で割ってみると、都内の住宅の10%が木造または防火木造アパートとなります。
これに加え、空き家数は約75万戸です。その内、木造アパートの空き室は約5万戸、防火木造アパートの空き室は約11万戸です。都内の空き家の21.3%は木造または防火木造アパートなんですね。(都内に約16万戸の”モクチン”が存在しています!)
木賃ベルト
高度成長期にたくさん建てられた”モクチン”は都心周辺を円を描くように広がっています。このドーナツ状のエリアを「木賃ベルト」と呼ぶそうです。
MOKUCHIN/モクチン企画/MOKU-CHIN KIKAKU
首都圏では”今後30年間にM7程度の地震が起こる確立は70%”と言われています。確かにそうなのですが、燃えやすい木造住宅を積極的に前向きに活用していこうという取組は大きな意味を持ちます。
災害に強いのは燃えない、逃げられる街 [住みたい街 首都圏] All About
様々な改修メニューをカタログ化した「モクチンレシピ」
2011年から改修のためのデザインリソースである「モクチンレシピ」をウェブ上で公開し、地元の不動産管理会社や工務店などに提供することで豊かな都市環境を目指しています。
その「モクチンレシピ」ですが、老朽化した木造賃貸アパートの各部屋の必要な改修メニューが”レシピ”として現在54個が表示されていて、自由に組み合わせてオリジナルな改修が可能になっています。ユーザーの創意工夫のやる気を引き出すとともに、それぞれ個性を持った部屋に応じた改修が出来ると思います。
「水廻り」「収納/棚」「窓ぎわ」「照明」「玄関周り」など、色々なメニューの中からユーザーが自分でセレクトします。
見ているだけで面白い「モクチンレシピ」
色々なメニューがあるので”選ぶ楽しさ”があります。例えば「レシピ番号」008の「廃材鍵置き」。廃材を活用して玄関に鍵置き場を作る、ということで低コストで味のある風情を演出可能です。
008. 廃材鍵置き/モクチンレシピ/MOKUCHIN-RECIPE
「相性のよいレシピ」「似ているレシピ」といったレコメンドも提示されていてクリックしたくなります。
「レシピ番号」010の「窓からデッキ」も雰囲気がいいですねぇ。窓の高さに合わせたデッキをつくって部屋を延長、内と外の中間的なスペースを作り出すということで、色々なコミュニケーションが生まれそうです。
010. 窓からデッキ/モクチンレシピ/MOKUCHIN-RECIPE
家を地域に開くことでゆとりのある生活を実現するってのはいいですね。
当日のイベントの様子。モクチンレシピの紹介がされています。
まとめ
住宅を長持ちさせるためにメンテナンスや改修は重要です。ましてや空き家となったモクチンを再生させるためには様々な改修が必要になってきます。予算や状況に合わせて主体的に改修メニューを選択出来るというのは、住宅についてのリテラシーが上がったり、より良い住環境を作って行こうというインセンティブにつながると思います。
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