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空き家を活用して新しい価値をつくる

クリエイティブシティって何だよ?「創造都市論-what the hell is "creative city"!?」(前編)

クリエイティブなコンテンツが都市の魅力につながる

 

ここ連日書いていますリノベーションEXPOのイベントレポートも佳境を迎えています。さて今回は10月30日に行われた「創造都市論-what the hell is "creative city"!?」の内容をまとめます。「what the hell」って書いてありますがこれは英語のスラングで「一体何だよ」「何だって?」という意味だそうで、全体を訳すと「クリエイティブシティって何だよ?」という意味になります。

 

クリエイティブシティというとシリコンバレーなどのような新しいビジネスや産業が生まれる都市のことでしょうか。サクッとググってみました。

 

創造都市(クリエイティブ・シティ)は、英国のチャールズ・ランドリーが提唱したことで知られる概念。芸術文化などに代表される「創造性」が、脱工業化社会において新しい価値を都市にもたらし、活力につながるとする。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)が行っている「クリエイティブ・シティーズ・ネットワーク」という取り組みがある。これは、「文学」「映画」「音楽」「フォーク・アート(民芸)」「デザイン」「メディア・アート」「ガストロノミー(食)」の7分野ごとに都市からの登録を受け付け、文化の振興を図ろうとするもの。

クリエイティブ・シティってどんな都市? - 今日の知識 - 日経トレンディネット 

 

必ずしもビジネスや産業経済的な感じではないようですが継続させるためには投資に対するリターンをちゃんと得て行かないといけません。2004年にユネスコにより創設された「創造都市ネットワーク」には日本からは「デザイン」部門で神戸市(2008年〜)と名古屋市(2008年〜)、「工芸」部門で金沢市(2009年〜)、「メディアアート」部門で札幌市(2013年〜)が認定されています。認定された都市は世界に対してのアピールになる他、他の認定都市や世界の文化団体との交流を得ることが出来る、ようです。まぁ”箔がつく”といったところでしょうか。他にも実益があるかもですが。でもクリエイティブと言いつつもなんとなく型にはまっているようで、そんなにワクワクはしないですねー。いや多少はワクワクしますが。でも知らなかったし。そもそも漠然としているし。

 

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いきなり結論じみた話になりますが、当日のゲストであり、千葉県松戸市で「MAD City」というまさにクリエイティブシティをつくる取組を一民間人の立場で(株式会社組織で)されている寺井元一さんのお話で、”活動場所や諸々のお膳立てをされてアーティストやクリエイターが集まってきても、それははたしてクリエイティブなのか?”というような疑問の投げかけがありました。お金も無い、活動場所も無い、そんな状態の中においてDIYでゲリラ的に生まれるものこそクリエイティブではないか?具体的には、空き家がたくさんあるような廃墟状態のまちで不法占拠(スクワット)して新しいこと始める、みたいな。そのような寺井さんのお話が印象的でした。これは端的に核心を突いているなぁと思います。

 

オランダではスクウォット(不法占拠)が認められている

 

寺井さんのお話を何度か聞いていますが、”日本ではイリーガルなスクウォット(不法占拠)をリーガルに実行してクリエイティブシティをつくる”という発想がきっかけで取組を始めたそうです。一方で日本では空き家がどんどん増加しています。日本でも居住の実態の無い空き家をスクウォットすることが合法になれば、お仕着せでは無くて、クリエイティブな人々を集めることが出来るのではないかと思います。

 

寺井さんは「『MAD City』の構想は、海外の街づくりや再生の研究からヒントを得た。その一つが『アーティストたちによる不法占拠』。日本の場合、不法占拠による土地所有権発生条件は20年だが、オランダは1年。時代と共に人の住まなくなった建物を芸術家やクリエイターが住居や店を勝手に造って占拠し、1年たって所有権を得る。それにより、もともと廃虚やスラムであった場所が街としての機能を取り戻し再生していくという例がある。日本でそのままやるのは無理だが、合法的な道がないかと考えたのがきっかけ」という。

松戸の仮想自治区「MAD City」が4周年-芸術家やクリエイターをコアに街づくり - 松戸経済新聞

 

オランダでは1960年代に不動産オーナーが投機目的でたくさんの空き建物を放置したため住居の無い若者達が住み始めたのがスクウォットの始まりです。日本の場合、不動産など物権は絶対ですがオランダの場合はだいぶ緩いです。

 

「スクウォット」するためにはまず、1年間以上空いている建物に不法侵入&占拠し、必要最低限の生活グッズ(ベッドと椅子とテーブルは必需品)を持ち込む。新しく鍵を付け替え、警察に連絡してチェックをしてもらい、スクウォット許可を得る書類を記載し手続きをすると、合法的に自分の家として居住可能になる。

オランダでたったひとりの日本人ホームレス(前編) | BIG ISSUE ONLINE

 

ただ、2010年にスクウォット禁止の法案がオランダの両院で可決され、現在は状況が違ってきているようです。しかし、このオランダの事例はスクウォットの可能性を示してくれています。

 

クリエイティブシティをつくる第一歩は「創造の場をつくること」

 

ということでクリエティブシティをつくるために必要なことの第一歩はクリエイターやアーティストが「創作する場」「居住する場」「語らう場」「作品を発表する場」を用意することだと思います。そのためにはスクウォットを合法化する法律の裏付けも大きな力になるはずです。

 

アムステルダムでは、アーティストなどが周りの人に活動をオープンにするなどの実績を示せば居住を認めています。つまり、イリーガルだったものがリーガルになり、市民の場になるというプロセスがおもしろいと思います。

10+1 web site|【第5回】[インタヴュー]新しい「まちデザイン」を考える 5──創造都市論の現在|テンプラスワン・ウェブサイト

 

そして、「場」を用意するとともに創造性を高め合える自発性を軸としたコミュニティ(アソシエーション?)を育んで行くことが継続のためには重要だと思います。

 

これまでクリエイティブシティを標榜する都市は、施設優先の発想だった。しかし、立派なミュージアムを建設すれば、都市がクリエイティブになるわけではない。大事なのは創造性を高め合えるコミュニティをつくること。

あなたがもしユニークなアイデアを思いついたら街ですぐに仲間たちにシェアし、そのアイデアを膨らませ進化させることができる。マッドシティは発想を交流させるのに適度な人口密度だ。創造性の好循環があるコミュニティづくりこそが、クリエイティブシティの本質である。

MAD City とは | 松戸のまちづくりと物件情報

 

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