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空き家を活用して新しい価値をつくる

木造賃貸アパート(モクチン)の可能性part2

競争力のなくなった賃貸物件を魅力的にするアイデア

 

木造賃貸アパート、いわゆる「モクチン」の改修・編集・収益化に取り組むNPO法人モクチン企画さんの「モクチンレシピ」について前回書かせていただきました。今回は、代表の連(むらじ)勇太朗さんの講義を聞きましたのでまとめます。

 

「築50年のボロボロの木造アパート」「90年代に建てられたロフト付き物件、ワンルーム型アパート」など競争力のなくなった賃貸物件を魅力的に蘇らすアイデアレシピである「モクチンレシピ」のお話です。

 

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モクチンレシピ|木賃アパートを改修・編集・収益化

 

いかに住み手にとっての「価値」を生み出すかが鍵

 

ポイントは「住み手目線」だと連さん。管理側や貸し手側にとって都合のいい論理ではありません。いかに住み手が思う「価値」を生み出せるかが問題です。

 

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1960年代〜70年代の和室、押入れ、和式便所がメインな木造賃貸住宅だったり、1980年代〜90年代にかけて建てられたワンルーム、ユニットバス、ロフトといった特徴がある木造賃貸住宅とそれぞれ違いはありますが大事なのは「住み手目線」。

 

あさひハイツ

 

改修前は家賃¥50,000で1年以上空き室だったという物件が、

 

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過去に何回かリフォームが行われてきたそうですが周辺の物件と似たような雰囲気で特徴も特にない状態でした。

 

工事費用は家賃約1年分とのことなので5万円×12で約60万円でしょうか。家賃10%増にして2週間後以内に入居者が決まったそうです。

 

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1年以上空き室だった物件が約60万円の改修後、家賃1割増しで2週間以内に入居者が決まるという。

 

「モクチンレシピ」を組み合わせて改修されたのですね。

 

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部分ごとに細かい改修を組み合わせることで全体の価値を上げています。

 

実際の絵はこちら。

 

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TOP/モクチン企画/MOKU-CHIN KIKAKU

 

神明町の戸建て

 

「築52年のボロボロ木造家屋を再収益化」。築52年の神奈川県川崎に建つ木造家屋の改修です。

 

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TOP/モクチン企画/MOKU-CHIN KIKAKU

 

若林パート6

 

「人気がなくなってきたロフト付き物件」。専有面積の小さいロフト付物件の改修です。

 

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アイリッシュコート100

 

「予算の限られた状態での2DK物件の改修」。築年月は1985年の物件。既存の間取りの特徴を生かすために「メリハリ真壁大壁」というレシピを使ったそう。

 

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TOP/モクチン企画/MOKU-CHIN KIKAKU

 

フロムファーストⅡ

 

「1階がすべて空室状態の物件の外構を改修」。築年数は24年。ルーバー、デッキなど外構部分のレシピが目立つ案件です。

 

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TOP/モクチン企画/MOKU-CHIN KIKAKU

 

大事にしている3つのアプローチ

 

モクチン企画の連さんが出演している動画を見つけました。これによると大事にしている3つのアプローチがあるそうです。

 

OPINION 木賃再生ワークショップ・連勇太郎「TOKYO AWARD #24」 - YouTube

 

部分から思考しモノをつくろう

 

1つ目は「部分から思考しモノを作ろう」。一部屋に300万円とか大金はかけられないのでトータルコーディネートではなく部分部分で変えられる所から発想してモノをつくっていこうということです。

 

工夫の出来る仕組みをつくろう

 

2つ目は「工夫の出来る仕組みをつくろう」。例えば(普通の)賃貸アパートだと釘一本すら壁に打つことは出来ない。そうではなくて、生活者が住みながら工夫の出来る仕組みをつくろうということ。

 

時間の蓄積それ自体が魅力

 

最後は「時間の蓄積それ自体が魅力」。毎回毎回、壁紙を張り替えて新築のように見せるのではなくて、前に住んでいた人の工夫の跡とか40年前の傷の跡とか、そういうものが魅力的に見える素材を使って再生していこうということです。

 

これらの3つのアプローチが中核となって「モクチンレシピ」という55個にも及ぶ改修ツールを使って木造賃貸アパートの再生に取り組まれています。このレシピは固定したものではないそうで、人気のないレシピは消去され、新しいレシピが定期的に増えるなど、不動産賃貸マーケットの状況を反映させながら日々変化し続けています。

 

現在、50程度のレシピがウェブで掲載されているが、これは一時的状態に過ぎず、人気のないレシピは消去され、新しいレシピが定期的に増えるなど、つねにレシピ数もその内容も不動産賃貸のマーケットの状況を反映させながら変化し続けている。

10+1 web site|建築デザインの資源化に向けて──共有可能性の網目のなかに建築を消去する|テンプラスワン・ウェブサイト

 

まとめ

 

今月上旬、たまたま大田区蒲田に行く機会があったのでモクチン企画の事務所「Kamata KUUCHI」の近辺を歩いてきました。

 

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下町・蒲田の路地にある戸建てを改修。

 

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