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空き家を活用して新しい価値をつくる

空き家オーナーの不安を払拭する「定期借家契約」の活用(住健トラスト株式会社の取組)

何をもって”空き家問題の解決”と言うか

 

いくら「空き家問題」と世間で騒がれようが当事者である空き家オーナーが具体的なアクションを起こさない限りは解決にはつながりません。そもそも何を持って空き家問題の解決なのかは正解がなくて、根本的には空き家の活用や修繕、改修、解体して跡地活用といった空き家を”流動化”(放置の逆、なんらかのアクションという意味)することに対して空き家オーナーやその家族が納得することが前提かなと思います。

 

全国に約820万戸もの空き家があって空き家率も13.5%ですが、「この数字が改善されること=空き家問題の解決」とも言い切れなくて、空き家オーナーやその家族が納得しない”流動化”(例えば、老朽化した放置空き家の強制撤去が最たる例)は本当の解決とは言えないでしょう。

 

空き家オーナーの不安に寄り添う

 

とても参考になるHOME'Sの記事を見つけました。こちらの記事では愛知県の不動産仲介会社「住健トラスト」による空き家問題解消を目指す取組が紹介されています。

 


「定期借家契約」を活用し、空き家を子育て世帯へ ~空き家問題解消を目指す新たな取り組み~ | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】

 

大手不動産会社に勤務していたときから空き家に強い関心を抱いてきた社長の直野武志さん。具体的には空き家オーナーの複雑な思いに寄り添い、「定期借家契約」という手法を活用することで空き家オーナーが納得する空き家活用を提案をされているところがポイントです。

 

直野氏は、各地の空き家問題に直面するなかで、この問題の根底にあるのは、“オーナー側の不安”だと感じたという。「できれば空き家を有効活用したいと思っていても、一度貸してしまうと返ってこないのではという不安から、貸し渋っているオーナーが本当に多い」と直野氏。そこで考えたのが、「定期借家契約」を活用する方法だった。

「定期借家契約」を活用し、空き家を子育て世帯へ ~空き家問題解消を目指す新たな取り組み~ | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】

 

定期借家契約って?

 

一般的な賃貸借契約は「普通借家契約」です。これは”借主保護”にだいぶ傾いた契約で、そう簡単には追い出せないことになっています。契約開始からだいたい2年で更新時期を迎えますが「正当な事由」がない限り更新が原則です。つまり賃貸人が貸している建物を自分で使う必要があるとか、貸している建物が老朽化して危険なので建て替えをしなければならないとか、相当切羽詰まった「正当事由」がなければ契約終了を主張できないわけです。

 

「オーナーが家を返還して欲しいと主張してもなかなか返ってこないのが実情」、ですがこれは「普通借家契約」での話。こうした”オーナーの不安”を解消するために生まれたのが「定期借家契約」です。

 

2000年3月に法制化された定期借家契約では、賃貸契約の期間を自由に設定でき、6カ月前までに借主に通知すれば、期間満了とともに契約を終了できる。立ち退き費用が発生したり、居座られてしまう心配がなく、必ず戻ってくる安心感がある。オーナー側の不安を解消することで、有効活用されずに眠る空き家を賃貸物件として活用してもらおうというのが直野氏の狙いだ。

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定期借家契約の課題と改装可能物件に広がる定期借家契約

 

ただ「定期借家契約」は「手続きが煩雑」「借り手のメリットが分かりづらい」などの課題があってあまり普及していません。でも先日紹介した京都の改装可能な賃貸物件だけを扱う不動産検索サイト「DIYP-京都-」や千葉県松戸で改装可能な賃貸物件・売買物件を扱う「MAD City」でも「定期借家契約」の物件が紹介されています。

 

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画像引用元:DIYP-京都-)こちらのセルフリノベーション可能なマンションは「定期賃貸借契約2年」です。「契約内容」の所に書いてありますね。

 

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画像引用元:MAD City)こちらのDIY・改装可能な団地は「定期借家契約3年」です。なんでもオーナーさんが将来団地に戻りたいため契約期間は3年限定だそうです。定期借家のことは「備考」の所に書いてありますね。

 

定期借家契約は借り手にもメリットがある

 

定期借家契約が普及しない理由の一つに「借り手のメリットが分かりづらい」というものがありますが、実はメリットがあって一番の利点は「割安な家賃」です。

 

一般的に定期借家契約の物件の家賃は、相場の1~3割程度安く設定されることが多い。集合住宅並みの家賃で、広い一戸建てに住むことも十分可能だ。これにより恩恵を受けやすいのが、若い子育て世帯である。

「定期借家契約」を活用し、空き家を子育て世帯へ ~空き家問題解消を目指す新たな取り組み~ | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】

 

そして通常の定期借家契約では定められた期間が満了すれば”契約終了”になり更新はありません。そこで、住健トラストでは”再契約”という仕組みを取り入れた独自の契約形態を採用しています。

 

「当社では定期借家契約に“再契約”という仕組みを取り入れた独自の契約形態を採用してします。貸す側の懸念材料である契約違反や滞納といった問題を起こさない借主であれば、あらかじめ設定した契約期間の満了後も、基本的に再契約を結ぶことを前提としているのが特徴です。

「定期借家契約」を活用し、空き家を子育て世帯へ ~空き家問題解消を目指す新たな取り組み~ | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】 

 

さらに住健トラストではDIYPやMAD Cityのようなセルフリノベーション可能な賃貸物件をも扱っているそうです。

 

さらに、最近注目を集めている「DIY型賃貸」の仕組みも取り入れ、貸主が入居前・入居中の修繕義務を負わない分、借主が自分たちで自由にリフォームできる物件も提供してします」と直野氏は話す。

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まとめ・定期借家契約の今後

 

もう一つ、定期借家契約が普及しない理由として「手続きが煩雑」ということが挙げられます。公正証書などの書面による契約でないといけなかったり、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間の賃貸人からの終了の通知が必要だったり、貸し手や不動産管理会社の負担が大きいです。

 

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普通借家契約との比較で見る「定期借家契約」[定期借家推進協議会]

 

この点について住健トラストでは定期借家契約のひな形をネット公開し無料でダウンロードできる仕組みを構築中だそうです。

 

そこで同社では現在、経営コンサルタントと協働し、定期借家契約のノウハウや契約書の書式をまとめたひな形をネット公開し、無料でダウンロードできる仕組みを構築中だ。これにより、定期借家契約による空き家の活用が全国に広がっていけば、と直野氏は考えている。

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いちおう「定期借家推進協議会」という組織のサイトから定期借家契約の書類はダウンロードできますが、実務者が自ら公開してくれることで実際の運用にとって大きな力になると思います。今後の住健トラストの動きに注目です。

 

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江南市、空き家、中古住宅、リフォーム、リノベーション

 

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