税理士大家さんによる解説
昨日は「アイドルと建築」シンポジウムに行く前に有楽町の東京国際フォーラムで空き家対策講演会を少し聞いてきました。空き家問題における税制改正とその対策、空き家が流通しない不動産流通の仕組み、空き家対策に活用できる定期借家契約のメリットなど、大家さんの空き家・空き室対策の目線からの情報がメインでした。
まずは”大家さん専門税理士・司法書士”の渡邊浩滋さんからは「空き家問題における税制改正及び対策/相続税増税を踏まえた所有不動産の活用方法」の講演。
渡邊さんは実家のアパート経営(アパート5棟、全86室)をされながら税理士・司法書士としてワンストップサービスを提供していて、2011年には「行動する大家さんの会」を設立するなどアグレッシブな活動をされています。
「行動する大家さんの会」についてはHOME'Sの記事にもなっています。
「昔に比べると厳しいのは事実かもしれない。でも、住宅不足でどんな物件でも借りてもらえた時代のほうが異常で、今、大家業がサービス業であることを認識、経営に真剣になっているのが普通の状況。ようやく、大家業が他の業界と同じスタートラインに立ったように思いますね」とは自身も大家さんであり、大家さん専門の税理士・司法書士事務所を経営する渡邊浩滋さん。「経営まで管理会社任せにしているなんておかしいですよ」。
【大家さんの本音炸裂トーク①】需給バランス変化でがんばる大家増加中 | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【HOME'S PRESS】
さて講演の内容はというと、大家さん目線の空き家問題の実態についてのお話が参考になります。例えば空き家問題というと防災性や防犯性の低下、ごみの不法投棄や景観の悪化など”環境側”の問題点が指摘されることが多いですが、”所有者側”の問題点が整理されていました。
- 共有地の問題:共有者全員でないと何もできなくなる
- 借地の問題:取り壊すと借地権が消滅してしまう
- 固定資産税の問題:取り壊すと土地の固定資産税が上がってしまう
- 相続税増税の問題:空き家にしておくと相続税が上がってしまう
これらの問題は正しい知識と専門家の協力で解決できるとおっしゃいます。
そして2015年度税制改正大綱により倒壊や衛生上有害の恐れがある空き家と認定されたものについては、その土地の固定資産税の課税標準額を1/6にする特例措置の対象外とすることが決まったわけで、固定資産税評価額5,000万円の土地の場合は17万円だった固定資産税が68万円に負担増になります。
後は賃貸物件を空き室にしていると相続税が上がってしまう。これからの賃貸経営に必要なこととして”物件の差別化”を訴えます。すなわち、
- ターゲットを絞る(子育て世代、高齢者、趣味)
- 入居者さんとのコミュニティを築く
- 入居者さんにカスタマイズさせる
そして何より賃貸経営を楽しもうともおっしゃいます。DIY賃貸やシェアハウス、デイサービス、アミューズメントなどなど賃貸経営の可能性は広がります。
アパート経営、税金、法人化のご相談は【渡邊浩滋 総合事務所】
直接、大家さんとつながる物件情報サイト
2人目の講演は株式会社アルティメット総研代表取締役の大友健右さんからテーマは「不動産会社と消費者、情報の非対称性が解決しない理由。なぜ、空き家が流通しないのか?」。このテーマは空き家活用にとってドンピシャのテーマです。
アルティメット総研では物件オーナーと消費者がダイレクトに取引できるマッチングサイト「ウチコミ!」を運営しています。
ウチコミ!|全物件仲介手数料無料の賃貸情報|大家さん直接交渉
インターネットの利点を活かした不動産マッチングサイトは増えていて以前も少し書きました。実際に不動産屋に行く手間を省いてより多くの情報の中から効率良く気に入った物件を探せます。
ウチコミ!の場合は家主と入居者とのやり取りにはチャット機能(LINEのような感じ?)を採用していて、メールより手軽だと好評だそうです。
(画像引用元)
エージェントには、物件の成約時に賃貸オーナーから家賃の一カ月分の仲介手数料が支払われる。エージェントの業務は、内見の立ち会いと契約のみ。宅建業の資格を持つ事業者は、営業などの負担の少ない不動産事業が行える。そのため、リフォーム会社でも不動産事業の取り組みを始めやすい仕組みだ。
定期借家契約のメリット
3人目は不動産コンサルタントの林浩一さんからテーマは「空き家対策に活用できる定期借家契約のメリットとは?入居者とより良い関係性を築くために日々行っていること」。更新制度がない、正当事由制度がない、期間満了で契約終了(再契約は可能)といった定期借家契約のポイントやその可能性については以前にも書きました。
現状、あまり使われていない制度でなかなか借主サイドからみた定期借家契約に対しての不安があるようです。再契約も可能であること、再契約する場合は更新料は不要であること、自由な契約期間が選べてバリエーション豊かな賃貸住宅に住めるなど個別のメリットを理解してもらうように働きかけて行く必要があるのでしょう。