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空き家を活用して新しい価値をつくる

全国の空き家数820万戸だけど2014年度の新設住宅着工戸数は88万戸もある件

2014年度の新設住宅着工戸数が発表

 

全国に空き家が820万戸(空き家率13.5%)ある中、2014年度の新設住宅着工戸数は88万470戸であると国土交通省から発表されました。リーマンショックの影響で落ち込んだ2009年度以来5年ぶりの減少です。

 

国土交通省は、このたび、平成26年度「住宅着工統計」を発表した。

それによると、平成26年度の新設住宅着工戸数は880,470戸。前年度比では10.8%減となり、5年ぶりに減少。

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(画像引用元:時事ドットコム:【図解・経済】住宅着工戸数の推移

 

単純に考えても空き家が増加している中でこれ以上新設住宅着工してどうするんだ、と率直に思います。新設住宅着工が必要なエリアというのは都市部の本当に一等地などに限られると思います。

 

空き家率の将来予測

 

野村総研や富士通総研では空き家率の将来シナリオ・予測を発表しています。まず野村総研によると世帯数減少を考慮し、住宅の除却・減築が進まない場合には2023年の空き家率は21.0%に上昇するとシナリオ立てています。

 

空き家率の上昇を抑えるためには、世帯数の減少に応じて、総住宅数も減少する必要がある。しかし、住宅の除却・減築は主に建て替え時に行われるため、今後は、新設住宅着工戸数の減少に伴い、進まない可能性がある。

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次に富士通総研の米山秀隆さんによると、新設住宅着工戸数と減失率(除却率)が今のまま変わらないと2028年には28.5%に上昇すると予測しています。

 

2013年時点の13.5%という空き家率が20年後にはどうなっているかについて、新設住宅着工戸数と滅失率(除却率)が直近の数値で推移した場合は28.5%に上昇し、また、新設着工が段階的に減少し、更に、除却率が段階的に上昇し最終的に2倍になった場合でも空き家率は22.8%に拡大すると予想した。

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空き家率が上がれば近隣住民に衛生、治安、防災などの実害を及ぼしがちになりますし、周辺エリアの資産価値の低下も招きます。ポテンシャルの少ない空き家の除却や空き家の減築を進めたり、賃貸住宅市場や中古住宅市場を盛り上げていく必要があります。

 

新築住宅建設に2倍以上の経済波及効果は無い

 

全国に空き家が820万戸もある中で、なぜ(減ったといえども)毎年100万戸前後の新築住宅建設があるのか?それは端的にいえば、新築住宅建設が景気浮揚策として捉えられているからです。この点は不動産コンサルタントの長嶋修さんがたびたび指摘しています。

 

総務省中心に各省庁共同で5年ごとに作成されている産業連関表によれば、我が国では新築住宅建設には2倍以上の生産誘発効果(経済波及効果)があるとされています。3000万円の注文住宅が一つ建設し売ることができれば、資材や設備等の発注、職人さんなど関係者の給与、そしてそれらが消費にまわるなどして、全体としておよそ6,000 万円の経済波及効果があるというわけです。したがって、常に景気浮揚策のトップに挙げられ、そのたびに実行されてきたのが新築住宅建設・販売促進策なのです。 

 【緊急提言】「特定空き家」対策では間に合わない日本

 

しかし人口・世帯減少がますます進む中、新築建設は空き家予備軍を増やすことにもつながります。現状は全国の自治体で空き家対策に取り組むなど、結局は行政コストを上げているかたちになっています。

 

人口減少・世帯数減少局面では、新築が一つ建て られれば、その分以上に空き家が発生します。この空き家が放置されれば前述したとおり倒壊や犯罪の 温床となるリスクが生まれ、景観として街の価値を毀損します。こうした外部不経済がもたらすマイナスを差し引いたら、はたしてその経済波及効果はいかほどでしょうか。各自治体で行う空き家対策費も 膨大です。「空き家対策法」では、国から各自治体に対し、空き家対策費が計上されますが、こうした コストはもちろん産業連関表には含まれていません。人口密度がまばらになり、行政効率が悪化する、 地価が下落する影響などもしかりです。新築住宅建設による景気対策は基本的に業界に対するもので、 ごく短期的な効果しかないかも知れないどころか、長期的には大きなマイナスを含んでいる可能性が高いでしょう。公共工事でムダな道路を造るのと同じ構図ですが、負債(住宅ローン)が個別の家計に集中するぶん、なお、たちが悪いといえます。  

【緊急提言】「特定空き家」対策では間に合わない日本

 

野放図に新築住宅建設を奨励し続けるのではなく、長期的な視点に立って、中古住宅市場を活性化すること

 

長嶋さんが何度も言うように「住宅総量目安」や「住宅供給目標」のような指針をつくったりしたり、新築住宅建設=景気拡大という構図をアップデートしたりしつつ、中古住宅市場を盛り上げていくことが重要です。

 

長嶋氏は「空き家は『結果』にすぎず、その『原因』に迫る必要がある」として、必要以上に住宅を造りすぎる日本の状況に対して、何度も警鐘を鳴らしてきた。経済協力開発機構(OECD)に加盟しているような国には、ほとんどすべて「住宅総量目安」や「住宅供給目標」のような指針があるのに、日本では過剰に新築住宅が供給され続けているというのだ。

住宅建築は「経済波及効果が高い」として、しばしば景気対策の目玉にされてきた。しかしこれにも長嶋氏は疑問を呈する。「いまや自治体が補助金を出して空き家を解体する時代。こういうコストは産業連関表に含まれていない」

野放図に新築住宅の建築を奨励し続けるのではなく、長期的な視点に立って、中古住宅市場を活性化することこそ、幅広い所得層に住宅の「資産効果」をもたらすと説いている。

www.nikkei.com