マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

都市はゆっくりと小規模にランダムにスポンジ化する

先日読んだ「都市をたたむ」の著者である首都大学東京准教授の饗庭伸先生の講演があるとのことで、参加してきました。テーマは「人口減少時代の都市計画と空き家対策」。都市計画の専門家である饗庭先生から見た空き家対策は、どんなものなのか聞いてきました。

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写真はあまり大っぴらに撮れず、第二部のパネルディスカッションに入る前に一枚。場所は国分寺労政会館の会議室。

人口減少期には都市をつくることを目的にしなくてもいい

今回の講演は5つの見出しがありました。すなわち、

  1. 人口減少時代をどうとらえればよいか
  2. 人口をどう捉えるか
  3. 都市の空間はどう変化するか
  4. 空き家を使って何が出来るか
  5. 空き家政策へのコメント

です。では早速、1.人口減少時代をどうとらえればよいか、から。人口減少、人口減少とニュースなどで騒がれていますが、今現在は日本の歴史の中で最も人口が多い時代ですので、特に都市部で生活している方はなかなか実感がわかないかもしれません。しかし日本の人口は2004年12月をピークに減り続け、2050年には1億人を切り、それ以降も減り続けるという傾向にあります。饗庭先生はこの人口減少の流れに抗うのではなく、適応(アダプテーション)することが大事とおっしゃいます。

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(画像引用元:人口減少社会という希望 | WEB第三文明)この図を見ると、戦後いかに急速に人口増加していったかがわかります。

つまり、1960、70年代の人口増加期にはローンを組んで住宅購入することが人生の目的とされ、イコール「都市をつくる」ということが個人の人生の中に組み込まれていました。しかしもはや人口減少期に入り、空き家の増加が社会問題になり、多額の借金をして住宅購入しても必ずしも資産として機能しなくなってきています。人口増加期においては「都市をつくる」がメインでしたが、人口減少期かつストックが溢れている現代および未来においては、「都市をつかう」という目的なり発想が生まれます。都市をつくるのはもう止めて、都市をつかうにシフトしても良いのではないかとぼくも思います。

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当日の饗庭先生の資料より。どれが一番良いというわけではなく、共存できれば良いと饗庭先生。

人口減少は当たり前のこととして適応する

次に2.人口をどう捉えるか、です。 これは、人口減少は問題なのか?という話です。これに関しては人口減少すること自体は問題ではなく、それに付随して治安が悪化や仕事を失ったり、病院で治療が受けられないといったことが起きることが問題なのです。もはや人口減少も高齢化も税収減も当たり前のことなので、都市をたたむという発想を持ち、前向きに資源分配のマネジメントをしていくかが重要になってきます。

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やってはいけない二大政策なのが「婚活パーティー」と「ワンルームマンション」。

都市のスポンジ化はゆっくりと小規模でランダムに起きる

3.都市の空間はどう変化するか、では「都市のスポンジ化」というキーワードが出てきます。このキーワードは2017年2月からスタートした国土交通省都市計画基本問題小委員会で議論されています。都市のスポンジ化って何?と思いますが、都市の全体の大きさは変わらず、小さな穴が空くように都市空間が縮小していくことを言います。

都市のスポンジ化とは…

都市の内部において、小さな孔が空くように、空き地、空き家等が、小さな敷地単位で、時間的・空間的にランダムに、相当程度の分量で発生すること。都市の密度が低下することで、サービス産業の生産性の低下、行政サービスの非効率化、まちの魅力の低下、コミュニティの存続危機など、様々な悪影響を及ぼすことが懸念される。

国土交通省都市計画基本問題小委員会

つまり都市の縮小は中心に向かって縮んでいくかと思いきや、実際はランダムに空き家や空き地がポコポコと発生し、都市の密度が低下して、スカスカになっていくということです。

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(画像引用元:スポンジ化についての話題提供スライド

戦後、農地解放によってもともと農地や林だった土地が売却されたり貸家になったりと都市のスプロール化は進みました。地主は土地の最大の意思決定者ですから、バラバラに意思決定が行われ、虫食い状に都市はじわじわと拡大していきました。

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それぞれの地主がバラバラの意思決定で土地売却や住宅建設を進め、都市は拡大していきました(スプロール化)。

そして人口減少期には一転、核家族化などで空き家や空き家が増加しています。これも地主がバラバラに意思決定することでランダムにスポンジ化が進んでいます。

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人口増加期に、人口減少することまで予測せず、ある意味無計画に都市を拡大(住宅建設)してきた結果、今度は空き家や空き地が増えているというのが実態です。背景にあるのは細分化された地権者の存在や、土地活用や住宅建設に対する都市計画の有効性の欠如があると考えます。

つまり都市のスポンジ化は一気に進むわけではなく、ゆっくりと小規模にランダムに進んで行くという類のものなのです。

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(画像引用元:スポンジ化についての話題提供スライド

都市の再開発はいつまで続くのか

この日の会場は国分寺の労政会館というところでした。道すがら国分寺駅南口の駅前を歩いたのですが、随分と高層マンションやビルが建っていたり建設中でした。一概に新設を否定するわけではないです。人口が2050年の時点で1億人を切る、2100年の時点で5000万人と仮定すると、現在は1億3000万人、最も人口が多いわけで、まだまだターミナル駅などの駅前では再開発する需要は多いにあるのでしょう。でも人々の価値観やマインド、文化は一朝一夕には変わらないので、少しずつじっくりとできるところから小規模に既存ストックを使う、活用する、再生するといった実践をいたるところで増やしていくことが重要です。

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国分寺駅南口の駅前。ぼくが高校生の頃に通った街ですが、高層マンションやビルがかなり増えていてびっくり。