マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

古い建物の魅力と依然根強い新築志向

古い建物の魅力

古民家カフェやゲストハウスって、ここ最近人気ですよね。まちの穴場的隠れスポットとしての古民家カフェに行く、ランチやお茶して食べ物や飲み物、お店の中や外観をスマホで撮る、それをSNSに上げて拡散、古民家カフェやゲストハウスの人気が高まる。こういう動きがそこかしこで起きている気がします。

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ここで言う古民家の定義は曖昧で、要するに古い建物ってことです。古い倉庫や古いビル、古い住宅を改修して新しい用途として生まれ変わる、そういう過程やその成果はとても人を惹きつけるものがあります。写真は以前訪ねた入谷の古民家カフェ(参考記事)。

依然根強い新築志向

とはいっても日本人の新築志向は依然として根強いのが実態です。2015年10月に内閣府が行った「住生活に関する世論調査」によると、「住宅を購入するとしたら新築か中古か」という質問に対し「新築の一戸建住宅がよい」と答えた者の割合は63.0%、「新築のマンションがよい」は10.0%です(参照)。

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(画像引用元:住生活に関する世論調査 図4 - 内閣府)20代、30代も上の世代と同様に新築・戸建志向。新築を選ぶ理由としては「間取りやデザインが自由に選べるから」(66.5%)、「すべてが新しくて気持ちいいから」(60.9%)、「人が住んでいた後には住みたくないから」(21.4%)、「中古住宅は、耐震性や耐熱性など品質に不安があるから」(17.5%)。

新築至上主義は戦後の住宅政策でつくられた

日本人の新築志向は戦後の住宅不足解消を目指して新築住宅がたくさん建設されてきたことに由来します。けれども一度住宅を建てて、住む人ごとに住宅を解体し、また建設するいわゆるスクラップアンドビルドですと、非常にコストがかかります。そもそもそんなに簡単に解体や建設は出来ません。住宅の所有者が何人もいたり(兄弟姉妹など)、費用面、建築基準法などの改正により再建築不可な土地だったり、様々な面から見てことは単純に行きません。

こうした「新築至上主義」が生まれた背景には、日本の住宅政策がある。第2次大戦で焼け野原になった我が国では戦後、極度の住宅不足を解消するために、大量の新築住宅が供給された。高度経済成長期になると、東京に地方から大勢の働き手が集まり、彼らの住む場所を確保するために「ベッドタウン」を造成して、大量の新築住宅を用意した。そうした結果、多くの日本人に「マイホーム=新築住宅」というイメージが刷り込まれたといっていいだろう。

元の記事を読む
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160913-OYT8T50112.html#csidx1de16f5b3f7f04c8eed913d0c16963c
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木造住宅の寿命は27年ではない

欧米なんかでは築100年ていう中古住宅がバリバリ流通していて、むしろそういう住宅のほうが好まれる傾向にあるそうです。日本はというと、国土交通省がこれまで公表してきた資料では、木造住宅の寿命は27年ないし30年、マンション(RC/鉄筋コンクリート造)は37年としていました。しかしこれは「取り壊した住宅の平均築年数」でしかなく、現実には築40年、50年以上経っても現役で使われている住宅も多いのです(詳しくはこちらの記事へ)。

古民家の趣を活かしつつ現行法令との擦り合わせ

最近、石垣島で古民家ホテルを経営されている方からこちらの記事をご覧になられたということで、ご相談のメールをいただきました。せっかく趣のある古民家を活用しようと思っても、旅館業の許可を取る必要がでてきたり、その結果、古民家の良さが薄まってしまうという悩ましい問題が起こります。そこで旅館業としてではなく、短期賃貸借や一時使用目的賃貸借といった不動産契約の手法を使うことで、ある意味裏技的に古民家の良さを活かしつつ、宿泊サービスを提供できる余地があります(STAYCATION京町家ステイBambaホテルなど)。

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(画像引用元:Le Lotus Bleu)今回ご相談いただいた石垣島の築100年古民家ホテル「Le Lotus Bleu(ルロチュスブルー)」。

暮らすように旅する、は働き方の問題を解消してから根付く

民泊新法の施行が2018年1月に予定されており、暮らすように旅するスタイルが広がっていくか期待しています。しかし、そもそも1週間とかまとまった休みが取りづらい日本の働き方だと、制度ができても使いこなせないという事態になると思います。古民家や可処分時間を有効に使うには、働き方の見直しが前提になります。言うまでももなく年功序列や終身雇用といった昭和の働き方は過去のものとなり、パラレルキャリアや副業の推進、二枚目の名刺、プロボノ、NPOや地域活動との関わり、在宅勤務、クラウドソーシング、小商いなど、働き方は多様化します。組織一辺倒だった働き方はプロジェクト単位に移行しつつあり、収入の獲得口も複数出てくるというのがよくある話になる。こういった働き方の多様化を通して、可処分時間の使い方に今よりも裁量が増えることで副次的に暮らすように旅するスタイル、体験に価値を置いた消費が根付くと考えます。