マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

2019年度から5年間で最大約35万人の受け入れを想定!外国人労働者の住宅をどう確保するか

セーフティネット住宅の登録未だ目標の3%

2017年10月に空き家を活用した住宅セーフティネット制度がスタートして1年が経ちました。賃貸住宅や空き家のオーナーの協力を得て、高齢者や低額所得者などの住宅確保要配慮者の入居を拒まない「セーフティネット住宅」を登録してもらおうという制度なのですが、登録数がなかなか増えていません。2018年2月の時点では200戸に届きませんでした。2018年11月14日のNHK解説委員室の記事によると4,926戸です。国土交通省の目標では2020年度末までに年間5万戸相当で計17.5万戸の登録を掲げていますので、目標の3%程度しか達成できていない状況です。

f:id:cbwinwin123:20181118185520p:plain(出典:「新制度から1年 住宅セーフティーネットをどう広げる?」(くらし☆解説) | くらし☆解説 | 解説アーカイブス | NHK 解説委員室

賃貸住宅や空き家のオーナーがメリットを感じられるわかりやすい仕組みに改善して周知

ではなぜ登録が全然進まないのでしょうか。住宅を登録したオーナーには自治体や国が月々最大4万円まで家賃補助、最大200万円まで住宅の改修費用補助があったり、住宅確保要配慮者が入居した後に生活支援を行う居住支援法人を都道府県が指定するなどの制度が備わっていますが実際には円滑に運用されていません。家賃や改修費の補助は自治体次第、居住支援法人の指定もなかなか進んでいません。

まず、家主に対する家賃や改修費の補助。これは住宅を登録すれば誰でも受けられる仕組みになっていません。補助を行うかどうかは市区町村の判断に委ねられているので、今年度実施しているのは、全国の自治体の2%足らず、30の自治体にとどまっています。財政的な負担が生じるので、補助を行うことに慎重になっている自治体がほとんどです。
また住宅に入居した後の生活支援。これまでに指定を受けた法人は全国で150程度。生活支援を受けたいと思っても受けられない地域が少なくありません。

「新制度から1年 住宅セーフティーネットをどう広げる?」(くらし☆解説) | くらし☆解説 | 解説アーカイブス | NHK 解説委員室

こちらの記事によると、住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅登録制度について「仕組みがよくわからない」という回答が6割近くもあったということで、周知が課題であるとしています。賃貸住宅や空き家のオーナーの立場からすると、登録制度が煩雑だし、家賃や改修補助が受けられるかもはっきりしないし、生活支援の制度もいまいちちゃんと稼働してくれるのか不安だと思います。一応2018年10月から1ヶ月間、全国9都市で計10回、無料で説明会を行なっているようです。何はともあれ賃貸住宅や空き家のオーナーがメリットを感じられるわかりやすい仕組みに改善して周知していくことが大事です。

f:id:cbwinwin123:20181118192856p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001257890.pdf

外国人労働者受け入れ拡大をめぐる入管法改正案の国会審議は今後どうなる?

セーフティネット住宅と絡めてタイムリーな話題として、外国人労働者受け入れ拡大をめぐる入管法改正案の国会審議に注目しています。連日ニュースで報道されていて*1、臨時国会の会期延長が避けられない状況となるなど、与野党の議論が白熱しています。

積算根拠がいまいちわかりませんが法務省から外国人労働者の受け入れ見込み数が提示されました。介護や外食、建設などの業種において2019年度から5年間で最大約35万人の受け入れを想定しています。しかし課題は受け入れ環境の整備です。外国人技能実習生の失踪が2017年は7000人を超えました。失踪の動機として「低賃金」と挙げた実習生は67.2%に及びます。しかも実習先での月額給与10万円以下が56.7%、10万円超〜15万円以下が36.1%です。

外国人労働者の住宅をどう確保するか

2019年度から5年間で約35万人の外国人が日本で働くとして、当然に必要になってくるのが住宅や医療、福祉などの環境整備です。特に住宅は生活の基盤ですので質の高い快適な住宅の確保は第一の課題です。「セーフティネット住宅情報提供システム」で入居対象者を外国人に限定して検索してみると4034戸がヒットしました(2018.11.18時点)。全国で4034戸では到底足りません。各地に点在する空き家のオーナー、またはその親族の方はぜひセーフティネット住宅への登録を考えていただきたいです。
制度について知る | セーフティネット住宅情報提供システム

*1:個人的にはTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」の音声配信がとても勉強になっています。