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カリフォルニア州で2020年から新築住宅への太陽光パネル設置義務化!一方、日本は......

カリフォルニア州、2020年から新築住宅への太陽光パネル設置義務化

 2018年12月7日放送のラジオ番組「荒川強啓デイ・キャッチ!」で、アメリカのカリフォルニア州が2020年から新築住宅への太陽光パネルの設置を義務付ける、というニュースが紹介されていました*1。脱炭素社会の実現、化石燃料の依存からの脱却、再生可能エネルギーの普及に向けて大きな一歩です。

 現状、カリフォルニア州では太陽光パネルが設置されている住宅は5軒に1軒だそうですが、今回の太陽光パネル設置義務化により市場規模が単純に5倍になります。今回の新しい制度は、カリフォルニア州の建築基準委員会が新規の住宅に太陽光パネルの設置を義務付ける建築基準を承認したことによります。

 ただし、日当たりが悪い住宅は設置義務の対象から除きます。2020年以降に建てられる戸建てと低階層の集合住宅の全てが設置義務の対象になります。住宅の建築コストは1軒当たり110万円くらい(1万ドル)は高くなりますが、長期的には電気代はじわじわと下がっていくため相殺できる、つまり投資回収できます。

 新基準によって住宅のエネルギー消費量は53%くらい従来より削減できる、とのことで地球環境に良い、電気代が下がる、再生可能エネルギーの市場規模が広がる、と三方良しの政策です。

 カリフォルニア州は2018年9月に、2045年までに州内の全電力を再生可能エネルギーで賄うことを義務付ける法律を制定するなど、気候変動対策に積極的です*2

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住宅と延べ面積300㎡未満の小規模建築物に対する省エネ基準の適合義務化見送り

 翻って日本はどうかというと、新築の住宅や小規模建築物の省エネ基準への適合義務化は厳格には進めない、というなんとも後ろ向きな方針が示されています*3

 現状では述べ面積2000㎡以上の大規模建築物(住宅を除く)が、建築物省エネ法に基づく省エネ基準の適合義務化の対象となっています。今回示された報告案では、省エネ基準への適合義務の追加対象を住宅以外の中規模建築物(延べ面積が300㎡以上2000㎡未満の建物)に絞ることが適当と結論付けられました。つまり、住宅と延べ面積が300m2未満の小規模建築物については省エネ基準への適合義務の対象に加えることは見送られました*4

新しい市場をつくること、育てることの重要性

 なぜ住宅や小規模建築物を省エネ基準の適合義務の対象に加えることに後ろ向きなのかというと、省エネ基準への適合率が比較的低い水準にとどまっていること、省エネ基準を満たすための追加投資を回収できる期間が長期になること、省エネ基準に習熟していない工務店や設計事務所が存在すること、義務化に伴う審査体制が未整備であること、などが挙げられています*5

 これってどれもこれからやればいいだけの話のように思います。省エネ基準への適合はカリフォルニア州の新築住宅への太陽光パネルの設置義務化と同じように、新しい市場をつくる、育てるチャンスではないでしょうか。習熟していないって言っても、そういうのは新しい知識やスキルにキャッチアップしていけばいいだけ。変化の早い情報環境、グローバル化の流れ、テクノロジーの進化になんとか対応していくこと、食らいついていくことが誰しも求められます。

 今の現役世代は将来世代へ負担を先送りするようなことをやってはいけなくて、人口減少、未曾有の高齢化、人手不足の問題など課題は山積みです。持続可能な社会を実現するために未来への投資こそ最重要です。スクラップアンドビルド型の住宅政策、住宅市場から中古・既存住宅の維持管理をしっかりして住み継いでいく住宅政策、住宅市場へ、緩やかにでも着実に転換させていく必要性を強く感じます。

*1:金曜デイキャッチャーの宮台真司さんは、このカリフォルニア州の動きを「未来の市場の覇者になる」「未来を今買う政策」として評価していました

*2:日経電子版2018/12/7 5:33米カリフォルニア州、新築住宅に太陽光パネル義務化 :日本経済新聞

*3:2018年12月3日に開催された社会資本整備審議会建築分科会建築環境部会の会合で示した「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について(第2次報告案)」

*4:今回の報告案を一部修正した上、12月中にパブリックコメントの手続きを始める予定です。その結果などを踏まえて、2019年1月18日に開催予定の社整審建築分科会建築環境部会で最終的な報告を取りまとめる予定

*5:各業界団体の考え方は2018年10月29日開催の建築環境部会で配布資料として公開されています