マチノヨハク

空き家を活用して新しい価値をつくる

歩きたくなる街の魅力と価値

「居心地が良く歩きたくなるまちなか」 って?

 国土交通省による「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」の中間とりまとめの内容が面白いです。2019年2月から8回の議論を行い、6月26日に国土交通大臣に対して、新たな時代のまちづくりの方向性として「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の創出により、イノベーションと人中心の豊かな生活を実現するべきという提言がなされました。キーワードとしては、Walkable(歩きたくなる)、Eye level(まちに開かれた1階)、Diversity(多様な人の多様な用途、使い方)、Open(開かれた空間が心地良い)です。

f:id:cbwinwin123:20190703063151p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001296040.pdfP.5)

大型施設や車中心から人中心のまちなかへ

 飲食店や物販など様々なテナントが入っている大型施設は確かに便利ではあります。ただし、基本的には目的の店舗へ直行し目的を果たしたら直帰する、という風になりがちです。出店している店舗も高い賃料に耐えられるチェーン店が多くてちょっと飽きてきます。いやもちろん便利だし、一定のクオリティの物が売られているということはそれはそれで価値のあることではありますが。また、車が普及したことで自動車産業が発展し、道路が至る所で整備されたことで物流が活発になったことの歴史的な経緯や価値は認める必要があります。しかしこれからはより高次の次元として人口減少や環境への負荷*1、社会的・生活課題の多様化・複雑化、テクノロジーの進化などを踏まえ持続可能な都市づくりを目指していくことが重要となってきます。
 では歩きたくなる、歩いて楽しいまちなかとは何でしょうか。少なくとも一つの敷地の中で完結した大型施設ではないし、車道の広さの割に狭い歩道でもありません。個性豊かなお店がたくさんあって歩いているうちにどんどん景色が変わっていくような商店街、歩道が広くてベンチや椅子、机などあり座ったり溜まったりできるオープンスペース、見た目にも触感としても気持ちいい芝生に覆われた公園など、人間の五感で楽しいと感じる、ワクワクする街こそ魅力的であり大きな価値があります。

f:id:cbwinwin123:20190703183554p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001296042.pdfP.113)

多様な建物の混在、目の高さ、まちなか

 なぜ人中心の「まちなか」づくりが必要なのか、魅力ある都市とは何かをずっと考えてきた偉大な先達たちが理論的支柱となっています。ジェイン・ジェイコブスの唱える都市的多様性を生成する4つの条件やヤン・ゲールの歩行者を中心としたまちづくり、そしてリチャード・フロリダのクリエイティブ都市論などはどれも個々の人々の生活や幸福、創造性を軸に理想の都市とは何かを論じています。

f:id:cbwinwin123:20190703184517p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001296042.pdfP.116)

*1:プラスチックごみ、地球温暖化・気候変動、フードロス、生態系の破壊などの問題