空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

空き家を活用することで新しい価値を生み出し、社会的課題解決へつなげる好循環をつくるために書いているブログです。

中古住宅の価値が市場で正当に評価されるようにするために必要な3つのこと

以前、書籍「世界の空き家対策」に基づいて、なぜ中古住宅の市場性が乏しいのかということをまとめました。今回は、中古住宅の価値が市場で正当に評価されるようにするために必要なことを3つにまとめます。
(参考記事:中古住宅の価値の評価が不適切 カテゴリーの記事一覧 - 空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

全国で稼働が待たれる「不動産総合データベース」 

物件の過去の取引履歴情報やマンション管理情報、周辺の地価公示などの価格情報、ハザードマップや公共施設などの周辺環境情報などの情報をワンストップで見ることができる不動産総合データベースはこれまで、

  • 2014年3月 不動産に係る情報ストックシステム基本構想の策定
  • 2015年6月〜2017年3月 横浜市に所在する売買物件を対象にシステムの試行運用を実施
  • 2016年10月〜2017年3月 静岡市、大阪市、福岡市に所在する売買物件を対象にシステムの試行運用を実施

というように準備を進めてきています。不動産コンサルタントの長嶋修さんがおっしゃるように、不動産総合データベース自体は既に完成しているけれど稼働はまだ、という状態です。本格稼働が待たれます。

多方面に散逸している不動産に関する情報を一元化することで、中古住宅がなぜこの価格なのかという理由付けがより明確になるはずです。物件情報や周辺環境情報などたくさんの情報から中古住宅の価値を評価することが広がっていけば、自ずと中古住宅の価値が市場で正当に評価されるようになっていきます。

不動産にかかわる情報は現在、多方面に散逸している。都市計画情報は市区町村役場、上下水道などインフラ情報は水道局や下水道局、登記情報は法務局といった具合だ。こうしたものを一元化し、さらに物件の過去の取引履歴、成約価格、住宅履歴情報、マンション管理情報、周辺のインフラの整備状況や公共施設の立地状況、周辺不動産取引価格情報など、物件そのものの情報に加えて周辺エリア情報、さらには災害や浸水可能性などのネガティブ情報や小中学校などの学区情報に至るまでが、このデータベースの中に詰め込まれる予定だ。

不動産業界の「経験と勘」ビジネスが終わる日 | 不動産 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 

f:id:cbwinwin123:20181111153825p:plain(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001035805.pdf

浸透はまだまだこれから「インスペクション」

中古住宅の売買に関して、宅地建物取引業法の一部改正により2018年4月から宅建業者に建物状況調査(インスペクション)の告知・斡旋することが義務化されました。インスペクションとは、既存建物の基礎・外壁などひび割れや破損、天井の雨漏りなど、建物の劣化状況を専門家が調査することです。中古住宅の品質や状態について安心して売買するためにとても重要な仕組みです。ただこちらの記事によると、制度開始から4ヵ月経過後、インスペクションはあまり浸透していないという状況です。

インスペクションを実施済みの中古マンションや中古戸建てを確認できる大手物件検索サイトを調べたところ、東京都内にで売りに出ている中古マンションで2万6506件中76件(0.3%)、中古戸建てで6283件中42件(0.7%)という状況です。

これらすべての物件が今年4月以降に売り出されたものではないでしょうが、一般的には売り出しから3カ月以内で売買されるので、8割以上は4月以降に売りに出されたと思われます。インスペクションの実施割合は極めて低いと言わざるを得ません。 

中古住宅の「診断」浸透せず 改正法施行4カ月|マネー研究所|NIKKEI STYLE

しかしまだ制度は始まったばかりです。インスペクションは中古住宅の品質や信頼性向上のために重要な仕組みであることは間違いありません。ではどこの業者に頼めばいいのかと言うと、私は「第三者性」を堅持するさくら事務所をおすすめします。

f:id:cbwinwin123:20181111162445p:plain(出典:ホームインスペクション義務化による「市場の失敗」のリスク | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

成長著しい「不動産テック」

VRゴーグルを使った物件内見サービス、後付けができてスマホで自動施錠・解錠ができるスマートロックスペースマーケットAirbnbなどのシェアリングエコノミーサービス、仲介業務支援のぶっかくん、価格可視化・査定のライフルホームズPRICE MAPなど、いわゆる不動産テック市場は広がりを見せています。不動産業界はICT化が遅れ千三つ*1なんていう言葉があるなど、非効率性や情報の不透明さが問題となっています。不動産テックに限らずテクノロジーを進化は日進月歩です。テクノロジーを使いこなすことで本来評価されるべき中古住宅が市場に流通しやすくなります。

2017年6月に国内で初めて不動産テック市場を網羅的に分析した本資料を公表。その後、2018年3月にカオスマップを更新しています。この3月の更新により掲載サービスは90→171に増加し、カテゴリも10→12となっています。

不動産テックをわかりやすく解説 今なぜ重要?主要12分野の実態は? |ビジネス+IT

f:id:cbwinwin123:20181111165042p:plain(出典:【速報】不動産テック業界のカオスマップがリニューアル!2018年3月7日版が公開

*1:”千の言葉の中に真実はたった三つ”という意味。漫画「正直不動産」より。

満員電車の経済損失がどんでもない

満員電車の経済損失「年間3240億円」

今回はコラムです。たまには空き家に関係ない話題も。2018年10月18日に公開された東洋経済オンラインのこちらの記事によると、満員電車による遅延やストレスを金銭換算するとどれくらいの金額になるのかがまとめられています。著者はナビタイムジャパン・トータルナビ事業開発メンバーです。まず記事タイトルにもあるように首都圏の満員電車の経済損失は「年間3240億円」だそうですが、大まかに4種類に分けられます。

1. 満員電車が引き起こす遅延による経済損失(電車は恒常的に遅延しているが直接的・間接的に混雑が影響を与えている場合がほとんどだ)
2. 満員電車の肉体的・精神的ストレスによる経済損失(通勤のストレスは仕事の生産性に悪影響を及ぼすことがある)
3. 満員電車で身動きがまったくできないことによる経済的損失(ラッシュの中でも特に混んでいる電車の場合、生産的な活動がまったくできなくなってしまう)
4. その他満員電車の影響による社会的経済損失

初試算!満員電車の経済損失は年間3240億円 | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

f:id:cbwinwin123:20181109205235j:plain(出典:通勤時のラッシュ:社畜の安寧|ぱくたそフリー素材

満員電車による電車遅延の経済損失

まずは満員電車による電車遅延の経済損失です。これは芝浦工業大学の岩倉成志教授が2180億円と試算しています*1。電車遅延が全て満員電車が原因というわけではありません。電車遅延には人身事故を主な原因とする30分以上の大きな遅延を1とすると30分未満の小さな遅延が9という比率になります。その小さな遅延の原因の7割が満員電車です。つまり全体の約6割の電車遅延が満員電車を原因としていると推定されます。2180億円の6割ですので、約1300億円が満員電車による電車遅延の経済損失額になります。

満員電車によるストレスの経済損失

2番目は肉体的・精神的ストレスの経済損失です。記事によると片道あたりの満員電車によるストレスは1人あたり平均1日50円程度です。往復すると100円です。体感的にはもっと高い気がしますが。さらに記事によると首都圏の満員電車に乗っている人数は500万人とのこと。年間の平日を240日と考えると、100円×500万人×240日=1200億円となります。ただし満員電車のストレスの度合いは人それぞれなのでもちろん一概には言えませんが。

満員電車によるまったく身動きができないことによる経済損失

3番目は満員電車でまったく身動きができないことによる経済損失です。たとえ移動時間といえどスマホでニュース記事などチェックしたり、電子書籍で本読んだり出来れば有意義な時間を過ごせます。が、そんな余裕も無い満員電車の場合、本来であれば蓄えられた知的生産ができなくなることは個人にとっても社会にとっても大きな損失です。国土交通省によると混雑率180%以上の電車を「まったく身動きができない電車」と定義しています。記事では年間740億円の経済損失が発生しているとしています。

他にも電車遅延が発生して会社に遅刻することになった場合に必要な遅延申請、遅延事実確認、申請承認などの事務作業の発生、車内に置いて身動きできていれば行えたはずのゲームや読書、動画視聴についての消費額、スマホを通じてふれたはずの広告なども経済損失といえます。首都圏だけの試算で3240億円ということですから関西なども加えたらすごい金額になります。

満員電車に乗らない&通勤時間を減らす

別の記事では男女全年齢層の平日1日の通勤時間による損失額を1423.9億円と試算しています。1時間あたりの労働生産額に通勤時間をかけてみれば通勤時間による損失額が出ます。移動中も仕事できるような環境があれば話は別ですが満員電車ではそんな余裕はありません。もはや満員電車には乗らない、満員電車に乗らなきゃいけないような会社は辞める、通勤時間をなるべく減らすことが重要です。さよなら都心。

*1:『週刊東洋経済』2009年7月4日号「満員電車も遅延も許せない!通勤問題に特効薬はあるか」

再開発事業で取り壊される予定のビルの1階で「空き家問題・遊休不動産」をテーマにイベント開催

取り壊し予定のビルの1階でイベント

2018年10月31日(水)、原宿の神宮前交差点という超一等地にあるビルの1階のスペースで「空き家問題・遊休不動産」をテーマにイベントが開催されましたので行ってきました。こちらのビルは実は東急不動産による再開発事業(神宮前六丁目市街地再開発事業)の敷地ということで、ゆくゆくは取り壊され2022年度までに店舗などが入る新施設が建設される予定です。

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イベントが開催された1階スペースは、再開発事業着手までの期間限定で誰もが気軽に立ち寄れる街の情報発信拠点・地域の交流スペース「subaCO(スバコ)」 として2018年9月に開設されました。昼間はスマホの充電をしてNPOや原宿のまちづくりに取り組む団体への寄付を受け付ける場所として、夜は日替わりで今回のようなイベントが開かれています。会場中央の机には認定NPO法人フローレンスNPO法人green birdなどのパネルと充電器、ノートなどが置いてありました。

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中古住宅の価値が評価されない

まずはリノべる株式会社執行役員の今井良樹さんからは空き家増加の現状と原因、必要な対策についてお話がありました。現状については、全国に空き家が約820万戸あることや売却や賃貸に出されていない個人住宅である「その他の住宅」の空き家が特に増加傾向にあること、全国と比較するとやや低い空き家率である東京都はそもそも空き家数が多いということ*1、などをおっしゃっていました。

次に空き家増加の原因として、(太線は筆者)

  • 需給バランス(人口減少、住宅供給過剰)
  • 新築ニーズ
  • 中古物件の価値が評価されない
  • 税制上の問題(固定資産税の優遇措置)
  • 解体費用の負担
  • 不動産登記の任意性
  • 土地建物に対しての権利意識

私としては最近、「中古住宅の価値が評価されない」というのが最も大きな原因だと考えています。戦後の住宅不足を背景に住宅が大量供給される過程で住宅の質が劣化していったことや、バブル経済により土地の価値が不当に高まり質の低い住宅でも売れ続けたこと、ひたすら市街地を広げてきた都市計画などにより、日本は新築住宅中心の住宅市場となっています。(詳しくはこちらの記事

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大事なのは物件価値を上げる仕組み

最後に対策のお話として、物件価値を上げる仕組みをつくることが重要ということをおっしゃっていました。単純に空き家バンクに掲載しているだけではダメでいかに市場に戻すのか、老朽化が酷いなどにより市場から脱落する物件をいかに減らすかが大事というお話が印象的でした。中古住宅のリノベーションにより空間資産の向上・再生を図るのがリノべるならば、スペースマーケットは空間資産の利活用がメインの領域です。

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1時間単位で貸し借り

株式会社スペースマーケット経営企画の積田有平さんからは、スペースマーケットのビジネスモデルや具体的な時間貸しの事例などについてお話がありました。使われていないスペースの情報を可視化することで、空きスペースを活用したい人とパーティーや会議などといった目的に合う場所を探している人とを結びつけることが可能になりました。リアルタイムで使っているか見えるというのがシェアリングエコノミーの特徴です、というお話がありました。 

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スペースマーケットのサイトを見てみると2018年11月5日現在10268件のレンタルスペースが掲載されています。時間貸しプラットフォームで掲載数No.1です。

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使用目的としてはパーティーや会議以外だと、写真撮影、ロケ撮影といった撮影場所に合った空きスペースも多く掲載されています。

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1時間単位で利用できるというのが手軽でいいですね。日中は職場のオフィスで働いているサラリーマンのオシャレな自宅をスペースマーケットに掲載して、すごく利用されているというお話がありました。このオシャレな自宅はかっこよくリノベーションされた感じのお部屋で、人気になるのも頷けました。

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飲食、設備、IoTなどの周辺サービスとコラボレーションすることでスペースの価値がさらに高まります。

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事例として紹介されていた空きスペースはどれも月何十万円の売り上げがあり、やはりお部屋の清潔感や写真の撮り方に気を配っているようです。古民家ASAGOROみんなの古民家fika上北沢fika桜上水代々木デザイナーズラウンジ、などが紹介されていました。どれも素敵な空間です。よくある住宅街のマンションや戸建でもコンセプトをに基づいて壁や床、インテリアなどに手を加えて行けば人気のスペースをつくれるかもしれません。

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*1:平成25年住宅・土地統計調査によると全国の空き家率は13.5%、東京都の空き家率は11.1%。最新の平成30年住宅・土地統計調査の結果公表時期は2019年夏頃です