空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

空き家を活用することで新しい価値を生み出し、社会的課題解決へつなげる好循環をつくるために書いているブログです。

安価で自然な高齢者見守りサービス

 今後、高齢化がますます進行する中、特に単身高齢者が増加します。持ち家がある方はさておき問題になるのが賃貸で暮らさざるを得ない方です。賃貸物件の大家さんから見ると、孤独死のリスクや保証人の問題など様々なコストの負担がボトルネックになり、入居拒否感につながっています(参考記事)。では、そういった大家さんの不安を解消できるサービスや仕組みがあればいい。こちらの記事「月額600円、1日5円の料金設定も。不動産オーナーも守る「高齢者見守りサービス」進化中」で、安価かつ自然な高齢者見守りサービスを紹介されていましたので取り上げます。

進まないセーフティネット住宅の登録

 2017年10月に始まった空き家を活用した住宅セーフティネット制度について*1、なかなか登録数が増えていかないということが問題になっています国土交通省の目標では2020年度末までに年間5万戸相当で計17.5万戸の登録を掲げていますが、2018年12月16日現在で6,748戸と到底目標にまで届かない状況です*2。単純に制度が大家さんたちに知られていないのが一因ですが、大家さんが安心して貸し出せる環境を整えていくことが非常に重要です*3

R65不動産の「R65あんしん賃貸パック」

 65歳以上の高齢者向けの賃貸物件を扱うポータルサイトである「R65不動産」の「R65あんしん賃貸パック」は月額600円〜という安価なことに加え、初期工事費用がかからない、電気の使用量で高齢の入居者の見守りを可能とするサービスです。

「R65あんしん賃貸パック」とは、高齢者様のお一人暮らしを支える「見守り機器」、大家さんが安心して高齢者様に貸し出せる「賃貸住宅管理費用保険」を、物件毎に選べる様にパッケージ化したサービスです。

【大家様・管理会社様向け】高齢者のプライバシーを守りつつ見守りが出来る。R65あんしん賃貸パック(月額600円〜 )をリリースします。 - R65不動産 – 65歳からのお部屋さがしなら

電気の使用量を数ヶ月分記録し、そのデータを元に「いつもと違う」電気の使用量を検知することで、登録されたメールアドレスにメールを送信し異常を知らせるという仕組みです。利用者のプライバシーに配慮した自然な形の見守りサービスと言えます。

(出典:【大家様・管理会社様向け】高齢者のプライバシーを守りつつ見守りが出来る。R65あんしん賃貸パック(月額600円〜 )をリリースします。 - R65不動産 – 65歳からのお部屋さがしなら) 

 見守りサービスにありがちな「監視されている感」や「月額コストの高さ」などが無いのが良いです。

dubmilliの「ごえん」

 WEBサービスの開発を行うdubmilli「ごえん」も「監視されている感」が無い見守りサービスです。こちらは毎朝起きたら電話でその日の天気予報を聞くというものです。この電話が「起きた」という起床確認となり、電話がないときだけ家族や支援団体などに連絡がいくという仕組みです。

どうすれば監視と思われず、さりげなく見守ることができるでしょうか?
できれば費用も少なく、手間もかからない方法が良いですね。
「ごえん」の出した答えが、「電話で天気予報を聞く」でした。

見守りサービス「ごえん」

 費用は1日5円。電話をかけるという能動的な行動が必要になりますが、習慣になってしまえば、これは手軽で良い仕組みですね。

(出典:見守りサービス「ごえん」

*1:賃貸住宅や空き家のオーナーの協力を得て、高齢者や低額所得者などの住宅確保要配慮者の入居を拒まない「セーフティネット住宅」を登録してもらおうという制度

*2:セーフティネット住宅情報提供システム 2018年12月16日閲覧

*3:セーフティネット住宅は高齢者以外にも、子育て世帯、低額所得者、外国人、など入居対象者の範囲は広いです

ドイツでは日本の3分の1しか新築住宅を建てない

 2018年9月に刊行された「世界の空き家対策」の「第3章 ドイツ 公民連携で空き家対策からエリア再生へ」から、ドイツの住宅の現状や空き家の特徴についてまとめます。著者は東京都市大学環境情報学部教授の室田昌子さんです。以下、黒字強調は筆者によります。

権利には義務が伴う 

 冒頭、日本における空き家発生の要因が7つ書かれています。中でも7番目にあるように日本では不動産の所有権に対する権利意識は強いけれど、その権利に対する管理責任や登記義務を果たす意識が強くないという点が印象的です。ノートやペンなどと違って不動産は私有財産といえど公共性を帯びます。ドイツでは所有権の概念はありつつも、義務や責任がより厳格に要求されます。

≪1  ドイツと日本の比較>1  住宅取引の活性化≫

日本における空き家発生の要因

  1. 人口・世帯数の減少
  2. 新築志向の強さと新規住宅供給量の多さ
  3. 中古住宅供給システムの課題の多さ
  4. 空き家に対する所有者の問題意識の希薄さ
  5. 税制度の課題や不動産登記の任意性
  6. 定住意識の強さと住み替えシステムの確立の難しさ(一斉に高齢化、老朽化、陳腐化、空き家化)
  7. 土地や建物などの所有権に対する権利意識が強い一方で、所有に対する責任や義務の意識が強いとは言えない

空き家発生の要因のうちドイツと日本で共通する点

  1. ドイツは日本に先立ち人口減少に直面した(人口減少を移民で補う政策が取られている)
  2. 土地の所有権という概念が存在していること(権利が明確な点は日本と同様だが義務や責任がより厳格に要求されている
  3. 第二次対戦下で多くの都市が破壊され、戦後に住宅が圧倒的に不足したことに伴い。集合住宅団地を大量に建設したこと(やがて住宅不足が解消されるにつれて人気がなくなるが、改修や建て替えを行なっている)

空き家発生の要因のうちドイツと日本で異なる点

  1. 新築志向や新築住宅供給量
  2. 欠陥や不良のある住宅に対する改修・除却義務
  3. 不動産の登記義務
  4. 老朽エリアのリノベーションや再生のしくみ

日本はドイツに比べて約3倍の住宅を新たに建設している

 ドイツは日本よりも早く人口減少に直面しましたが、それを移民で補う政策がとられてきました。世帯に関しては単身世帯、2人世帯が増加しています。一方で明らかに日本と違うのは住宅の新設が抑制されている点です。2016年の新築住宅の建築許可件数は32.3万戸と、日本の3分の1です。

≪2  住宅の現状と空き家の特徴>1  人口・世帯数の変遷と住宅数の推移≫

人口数

  • ドイツの人口*1は1970年代には早くも頭打ち、1980年代半ばにかけて緩やかに減り続け、その後いったん増加に転じるも、2000年代には人口減少が再び大きな社会問題に、しかし2011年以降は再度増加に転じる
  • 外国籍や移民の増加が多く、居住施設や保護施設を必要とする難民申請者が約74.6万人存在*2している

世帯数

  • 世帯数は1965年に24.2%だった単独世帯が2015年には41.4%を占める*3
  • 1965年に28.3%だった2人世帯も2015年には34.2%へと増加*4
  • ドイツでは日本以上に世帯の小規模化が進んでいる
  • 今後も世帯数の増加が見込まれている

住宅のストック量

  • 1996年から2016年までの20年間で約450万戸、12.6%の増加(日本では1993年から2013年までの20年間に1480万戸、32.1%*5増加)
  • 2016年の新築住宅の建築許可件数は32.3万戸*6(日本の同年の新設住宅着工戸数は97.4万戸*7)→日本はドイツに比べて約3倍の住宅を新たに建設している
  • 日本は新築の件数が多く、ストック量の増加も大きい

「世界の空き家対策」(学芸出版社)78ページ

「世界の空き家対策」(学芸出版社)78ページ

ドイツでは1978年以前に建設された住宅が約7割 

 ドイツの住宅事情は日本と大きく異なります。賃貸の方が持ち家よりも多い、築年数の長い住宅が多い、住宅を改修するなど中古住宅の利用が活発、など。1978年以前に建設された住宅が約7割を占めます。

≪2  住宅の現状と空き家の特徴>2  住宅の現状≫

居住用住宅(寮や寄宿舎を除く)の特徴

  • 賃貸住宅の戸数が持ち家よりも多い
  • 背景には、日本のように持ち家を推奨する住宅政策が推進されず、特に旧東ドイツで賃貸住宅の建設が重視されたという歴史的経緯がある

「世界の空き家対策」(学芸出版社)80ページ

「世界の空き家対策」(学芸出版社)80ページ
  • 築年数の長い住宅が多い
  • 現存する住宅のうち築100年以上となる1919年以前に建設された住宅が約14%、築70年以上は全体の約4分の1、1978年以前の住宅は68%(2620万戸)を占めている
  • 2001年以降に建てられた住宅は239万戸で全体の6.2%にすぎない→ドイツでは住宅の寿命が長く、建物を改修しつつ利用しており、中古住宅の利用が活発
  • 日本では1980年以前に建設された住宅は1369万戸、全体の26%
  • 築年数の長い住宅が少なく、逆に2001年以降の住宅が1277万戸、全体の4分の1を占めている*8

「世界の空き家対策」(学芸出版社)80ページ

「世界の空き家対策」(学芸出版社)80ページ

不定期に実施されるセンサスと毎年実施されるマイクロセンサス

 ドイツにおける空き家を把握する統計は不定期に実施される全国詳細調査であるセンサスと毎年実施されるマイクロセンサスの2種類があります。

≪2  住宅の現状と空き家の特徴>3  空き家に関する統計≫

  • ドイツの空き家を把握する統計は2種類ある
  • 不定期に実施される全国詳細調査であるセンサス*9(直近は2011年、その前は1987年)と毎年実施されるマイクロセンサス*10
  • センサス2011の調査では、住宅は①所有者居住用住宅、②賃貸居住用住宅、③休日・レジャー用住宅、④空き家、の4つに分類されている
  • マイクロセンサスは、①居住空間のある建物、②所有者居住用住宅、③賃貸居住用住宅、④寮・寄宿舎、をそれぞれ居住中、空き家、と区分している
  • センサス2011の「空き家」は、居住用建物で住宅用途に通常使用される住宅(寮・寄宿舎は含まない、商業用途に使用している住宅も含まない)のうち、居住中でもなく賃貸中でもない住宅を指している*11

西と東の住宅格差、経済格差がいまだに影響

 ドイツの特殊事情としては東西冷戦の残滓をいまだに引きずっていることです。旧東ドイツと旧西ドイツとでは空き家率が明らかに違います。といっても最近は格差は縮まりつつありますが。

≪2  住宅の現状と空き家の特徴>4  空き家の動向と実態≫

  • センサス2011によるとドイツ全体で3877万戸の居住用住宅のうち空き家は170万戸、空き家率は4.4%
  • マイクロセンサスの調査結果で空き家の動向を見ると、2000年代の空き家率は8%台を超えており、2010年のピーク時で8.6%にのぼる
  • 旧西ドイツと旧東ドイツで比較すると、旧東ドイツでは全般的に空き家率が高くい

「世界の空き家対策」(学芸出版社)82ページ

「世界の空き家対策」(学芸出版社)82ページ
  • 建築年代別に空き家率を見ると、古い住宅ほど空き家率が高い
  • 日本よりも築年数の長い住宅が多く中古住宅が活用されているドイツでも、全て活発に利用されているとは言えない
  • 管理不十分で、設備の古さや暖房効率の低さといった問題を抱える住宅も多い
  • 床面積別に空き家率を見ると、狭い住宅ほど空き家率が高い
  • 40㎡未満の住宅は、ベルリンやハンブルクなどの大都市に比較的多く、第二次大戦後の住宅困窮時代に建設された住宅や旧東ドイツの住宅が多数を占める
  • 空き家の多い旧東ドイツでは、古い住宅と小規模住宅が多く、持ち家率が低い
  • 旧西ドイツでは大都市を除くと、床面積は広く持ち家率も高く、築70年を超える住宅割合も少ない
  • 西と東の住宅格差、経済格差が空き家の割合の多さに直結している

「世界の空き家対策」(学芸出版社)83ページ

「世界の空き家対策」(学芸出版社)83ページ

 

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アメリカの不動産流通システムの実情(分業、不動産データベース、住宅検査など)
アメリカでも若い世代ほど持ち家志向は低下している
なぜ日本の中古住宅の市場性は乏しいのか
「世界の空き家対策」刊行記念トークイベントに行ってきた

世界の空き家対策: 公民連携による不動産活用とエリア再生

世界の空き家対策: 公民連携による不動産活用とエリア再生

  • 作者:米山 秀隆,小林 正典,室田 昌子,小柳 春一郎,倉橋 透,周藤 利一
  • 出版社:学芸出版社
  • 発売日: 2018-08-31

*1:ドイツ人口の推移はドイツ連邦統計局が公表

*2:2016年、連邦移民難民局

*3:日本の34.5%(2015年、国勢調査)を越えている

*4:日本の27.9%よりも多い

*5:住宅・土地統計調査

*6:連邦統計局

*7:住宅着工統計

*8:2013年、住宅・土地統計調査

*9:センサス2011では、行政登録データを活用し、全数調査と標本調査が併用で実施され、2011年4〜7月にかけて全1750万の住宅所有者もしくは管理者を対象に郵送によるアンケート調査が行われた

*10:1%の世帯の無作為抽出調査、空き家については4年ごとに調査が実施されている

*11:日本の住宅・土地統計調査の「空き家」に含まれる別荘などの二次的住宅は空き家には含まない。賃貸用や売却用に一時的に空いている住宅については、特定の年月日一日のみの時点で空いているかどうかで判定する

カリフォルニア州で2020年から新築住宅への太陽光パネル設置義務化!一方、日本は......

カリフォルニア州、2020年から新築住宅への太陽光パネル設置義務化

 2018年12月7日放送のラジオ番組「荒川強啓デイ・キャッチ!」で、アメリカのカリフォルニア州が2020年から新築住宅への太陽光パネルの設置を義務付ける、というニュースが紹介されていました*1。脱炭素社会の実現、化石燃料の依存からの脱却、再生可能エネルギーの普及に向けて大きな一歩です。

 現状、カリフォルニア州では太陽光パネルが設置されている住宅は5軒に1軒だそうですが、今回の太陽光パネル設置義務化により市場規模が単純に5倍になります。今回の新しい制度は、カリフォルニア州の建築基準委員会が新規の住宅に太陽光パネルの設置を義務付ける建築基準を承認したことによります。

 ただし、日当たりが悪い住宅は設置義務の対象から除きます。2020年以降に建てられる戸建てと低階層の集合住宅の全てが設置義務の対象になります。住宅の建築コストは1軒当たり110万円くらい(1万ドル)は高くなりますが、長期的には電気代はじわじわと下がっていくため相殺できる、つまり投資回収できます。

 新基準によって住宅のエネルギー消費量は53%くらい従来より削減できる、とのことで地球環境に良い、電気代が下がる、再生可能エネルギーの市場規模が広がる、と三方良しの政策です。

 カリフォルニア州は2018年9月に、2045年までに州内の全電力を再生可能エネルギーで賄うことを義務付ける法律を制定するなど、気候変動対策に積極的です*2

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住宅と延べ面積300㎡未満の小規模建築物に対する省エネ基準の適合義務化見送り

 翻って日本はどうかというと、新築の住宅や小規模建築物の省エネ基準への適合義務化は厳格には進めない、というなんとも後ろ向きな方針が示されています*3

 現状では述べ面積2000㎡以上の大規模建築物(住宅を除く)が、建築物省エネ法に基づく省エネ基準の適合義務化の対象となっています。今回示された報告案では、省エネ基準への適合義務の追加対象を住宅以外の中規模建築物(延べ面積が300㎡以上2000㎡未満の建物)に絞ることが適当と結論付けられました。つまり、住宅と延べ面積が300m2未満の小規模建築物については省エネ基準への適合義務の対象に加えることは見送られました*4

新しい市場をつくること、育てることの重要性

 なぜ住宅や小規模建築物を省エネ基準の適合義務の対象に加えることに後ろ向きなのかというと、省エネ基準への適合率が比較的低い水準にとどまっていること、省エネ基準を満たすための追加投資を回収できる期間が長期になること、省エネ基準に習熟していない工務店や設計事務所が存在すること、義務化に伴う審査体制が未整備であること、などが挙げられています*5

 これってどれもこれからやればいいだけの話のように思います。省エネ基準への適合はカリフォルニア州の新築住宅への太陽光パネルの設置義務化と同じように、新しい市場をつくる、育てるチャンスではないでしょうか。習熟していないって言っても、そういうのは新しい知識やスキルにキャッチアップしていけばいいだけ。変化の早い情報環境、グローバル化の流れ、テクノロジーの進化になんとか対応していくこと、食らいついていくことが誰しも求められます。

 今の現役世代は将来世代へ負担を先送りするようなことをやってはいけなくて、人口減少、未曾有の高齢化、人手不足の問題など課題は山積みです。持続可能な社会を実現するために未来への投資こそ最重要です。スクラップアンドビルド型の住宅政策、住宅市場から中古・既存住宅の維持管理をしっかりして住み継いでいく住宅政策、住宅市場へ、緩やかにでも着実に転換させていく必要性を強く感じます。

*1:金曜デイキャッチャーの宮台真司さんは、このカリフォルニア州の動きを「未来の市場の覇者になる」「未来を今買う政策」として評価していました

*2:日経電子版2018/12/7 5:33米カリフォルニア州、新築住宅に太陽光パネル義務化 :日本経済新聞

*3:2018年12月3日に開催された社会資本整備審議会建築分科会建築環境部会の会合で示した「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について(第2次報告案)」

*4:今回の報告案を一部修正した上、12月中にパブリックコメントの手続きを始める予定です。その結果などを踏まえて、2019年1月18日に開催予定の社整審建築分科会建築環境部会で最終的な報告を取りまとめる予定

*5:各業界団体の考え方は2018年10月29日開催の建築環境部会で配布資料として公開されています