空き家の活用で社会的課題を解決するブログ

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あいちトリエンナーレ2019へ行ってきた

 2010年から3年ごとに開催されている国内最大規模の国際芸術祭である「あいちトリエンナーレ2019」へ8/12〜13で行ってきました。テーマは「情の時代」。名古屋市と豊田市内の美術館やまちなかで様々な作品が展示されています。数ある展示の一つである「表現の不自由展・その後」が8/1の開催から3日で中止に追い込まれ、この件は各種メディアで特に話題に上りました。

愛知芸術文化センター 

 東京から新幹線で名古屋に着いてまずは最寄りの展示会場である愛知芸術文化センターへ向かいました。地下鉄桜通線で3駅先にある久屋大通駅で下車。途轍もない夏の陽射しの中を歩きます。耐震改修工事中の名古屋テレビ塔を横目に、名古屋を代表するフォトジェニックスポットとして人気な立体型公園であるオアシス21を通り過ぎ辿り着きました。

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 最初に目に飛び込んできたのは「ピア・カミル」の「ステージの幕」。たくさんのバンドTシャツを巨大な幕に縫い上げたインスタレーション。キッスやメタリカ、アイアンメイデン、ラモーンズなど1970〜80年代くらいのアメリカやイギリスのヘビメタ、パンク系が多かった印象です。似たようなバンドTシャツは古着屋で非常に安価で売っていたりします。ある一定の時期の似たような音楽ジャンルのバンドばかりが過剰生産されていることが伺われます。ちなみにこの作品は地下2階にあります。

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 10階に上がって、事前にPeatixで購入していたチケットを係の人に表示し紙のチケットをもらいます。「ウーゴ・ロンディノーネ」の「孤独のボギャブラリー」は一瞬本物の人間かと見間違うようなピエロがそれぞれ思い思いに佇んでいます。鑑賞している人たちも同じようなポーズをとって写真を撮るなどしていました。

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 袁廣鳴(ユェン・グァンミン)の「日常演習」も印象に残りました。台湾では1978年から「萬安演習」という防空演習を毎年春先実施し、日中の30分間だけ人や車が姿を消します。普段は活気に溢れているであろう台北の街が無人となった風景をドローンで撮影した映像からは日常と隣り合わせに戦争が横たわっていることを実感させます。

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 そして中止となってしまった「表現の不自由展・その後」のブースはがらんどうでした。何かしらの理由で展示が制限された作品を集めた展示がまた制限されたとのことで、『「表現の不自由展・その後」のその後』が気になります。具体的な特定の私人に対する誹謗中傷となるヘイトやデマは制限されるべき表現です。「慰安婦像」もとい「平和の少女像」は現代の日本を侮蔑しているヘイトなのでしょうか。平和の少女像が批判しているのはあくまでも戦前の大日本帝国時代の植民地主義から起こった戦時性暴力とその事実に対する謝罪が無かったことだとすると、現代の日本を侮蔑しているヘイトには当たらないはずです。
 ただし、平和の少女像が制作された経緯や表現の自由として保障される表現の幅の範囲など調べたり考えたりする余地はまだまだたくさんあります。そういった意味でも考えるきっかけや学びを深めるチャンスだっただけに今回の中止は残念です。一方で8/12に企画展の実行委員会が愛知県の大村知事あてに展示再開に向けた協議を申し入れ、これに対し13日の定例会見で大村知事は協議していく姿勢を見せています*1

www.youtube.com

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名古屋市美術館

 愛知芸術文化センターの近くにある定食屋で昼食を済ませた後はあまりにも蒸し暑かったので栄駅から伏見駅までの1駅区間だけだけれど地下鉄東山線に乗って移動。

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 「今津景」の「生き残る」は不思議な絵でした。なんらかの力を感じる作品です。

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  写真を撮り忘れてしまったのですが「モニカ・メイヤー」の展示は男女問わず(圧倒的に女性が多かったけれど)自身が受けたハラスメントを匿名で書いた紙がたくさんありました。とても生々しい事ばかり書かれていました。無意識的に誰かを傷つけてきたかもしれないと思うと同時にハラスメントに対する意識を高め、ハラスメントが生まれる構造についても学んでいきたいと考えました。

f:id:cbwinwin123:20190814152903p:plain(出典:71モニカ・メイヤー(N04) | あいちトリエンナーレ2019

四間道・円頓寺

 伏見駅から丸ノ内駅まで地下鉄舞鶴線でまたも1駅移動。名古屋市街に向かいます。名古屋城の西を流れる堀川は1610年に徳川家康の命によって開削されました。城下町への資材をはじめ、食料や燃料などの輸送を目的とし、防衛的役割も持った運河だそうです。

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 江戸時代から続く豪商の住まいだった「伊藤家住宅」など、戦火を免れた歴史的建築物が一帯に広がっている四間道(しけみち)界隈を歩きました。四間道とは伊藤家住宅がある堀川筋の一本西側の道です。1700年(元禄13年)の大火の後、防火のため4間(約7m)に道幅を広げたことに由来します。四間道をはさんで東側には土蔵などが、西側には町家が建ち並んでいます。名古屋市の町並み保存地区に指定されています。

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  旧森山家住宅という築150年超の古民家を改装したアートギャラリー「Espanade GALLERY」では、展示の主催の方に四間道の歴史や最近色々な店舗ができていることについて直接お話を聞けました(今回のトリエンナーレとは関係ないそう)。四間道の歴史と文化を活かしておしゃれなレストランやカフェ、バー、美容室などが集積しています。仲介や管理を手がける不動産屋さんの存在は大きいというようなこともおっしゃっていました。あと、ブラタモリアド街の影響もあると指摘されていました。

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 狭い路地の中に入るとおしゃれなバーが現れます。西日の照り付けがすごかったです。

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 次は円頓寺商店街、円頓寺本町商店街へ向かいました。祝日だからか営業していない店舗が多かったです。

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 「円頓寺銀座街店舗跡」には歴史を感じる看板が。

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 「那古野二丁目長屋」は元々は「飯田洋服店」でした。ここは先代の店舗で現在はここから約200mほど離れた場所でお店を開いているそうです。運営スタッフさんに話しかけてみたら、普段は使われていない空き店舗ということをおっしゃっていました。

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 「幸円ビル」では「キュンチョメ」による「声枯れるまで」というアングラな映像作品が展示されていました。真っ暗でちょっと怖かった。

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豊田市美術館・豊田市駅周辺

 名古屋駅前にある関西、東海地区を中心に展開する定食屋チェーン「宮本むなし」で腹ごしらえしホテルで素泊まり。翌8/13は10時にチェックアウトし名古屋駅から地下鉄で約1時間かけて豊田市へ向かいました。この日も非常に暑く、ひたすら汗が出ました。こちらの作品はとてもブレていますが小田原のどかの作品です。羽子板の羽根のような形の矢形標柱は1946年から48年の間だけ長崎の原爆投下中心地に設置されていたそうです*2

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 豊田市駅から炎天下の中を歩き、しかも坂道を登りたどり着いた豊田市美術館はクリムト展も同時開催しているとあって結構混雑していました。

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 豊田市美術館内から世界有数の工業都市である豊田市の街並みを撮りました。

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 豊田市美術館からちょっと歩くと廃校である旧豊田東高等学校があります。奥のプールへ向かいます。

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 旧豊田東高等学校は2023年度中に博物館の建設が予定されています。ということで既存の施設を自由に使えたりする。こういったプールの底を立てるなんていう思い切ったことが出来るのは廃校ならではです。

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外国人労働者と喫煙可の喫茶店

 今回、一泊二日という短い名古屋旅でしたがコンビニやホテル、飲食店における外国人労働者の多さを感じました。2018年末における名古屋市の外国人住民数は83,083人で前年度に比べて4,648人の増加。名古屋駅周辺は新宿駅周辺のように人がたくさん往来していました。人が集まれば消費も増える、働き手が必要になる、そのため外国人との共生は今後ますます課題となります。
 もう一点気になったのは喫煙可の喫茶店が多いことです。コメダ珈琲も行ったお店はことごとく喫煙可でしたのでタバコが嫌いな私としてはお店選びが大変でした。最後に入った喫茶店も例によって喫煙可でしたが居心地は良かった。
 あと名古屋に限らないかもしれませんが、宿泊したホテルには中国か台湾か韓国の方と思われる観光客が目立ちました。2020東京オリンピックに向けて訪日観光客の増加に対し宿泊施設の不足や交通期間の整理など心配になりました。

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最後に

 インターネットやソーシャルメディアの発達、人や物やサービスなどが世界中で行き交うグローバリズムの進展、一方でイギリスのブレグジットやアメリカのトランプ大統領による自国第一政策などグローバリズムの反動としてのナショナリズムの高まり……。世界中で人々がつながって交流を深め、諸問題に対して知恵を出し合い、切磋琢磨しながらそれぞれの国の都市や地域の政治や経済、文化を発展させていく、そんな好循環とは裏腹にむしろ人種や民族、宗教、世代、考え方、抱えている生活課題によって分断や差異が際立っているようにも思えます。
 スマホが普及してソーシャルメディアしかり様々なメディアを通して膨大な情報に発信/受信することができます。しかし、世界中に出回っている情報は玉石混交です。フェイクやヘイト、デマも数多く含まれています。一定のクラスターのメディアからの情報ばかりに接していると一面的な見方に陥りがちです(参考:フィルターバブル)。様々なメディアに接して情報を批判的かつ検証的に吟味する癖をつけたり、独善的になっていないか自己点検することが重要だと改めて実感しました。多様なレイヤーの幅広い情報、過去現在未来という時間軸を踏まえた情報を分析することで情報の確度を上げていく、ゆっくりじっくりあせらず事実をあぶりだしていくという地道な思考作業がますますこれから重要になると自戒をこめて。
 それでも感情や情動に流されてしまうのが人間だとも思います。常に理性的ではいられないわけです。そこで重要になってくるのがアート、芸術、美術、学芸、技芸といったものです。様々な物事はそんなに単純でもないし合理的ではないからこそアートなどの表現にしかできないことがあると感じます。

われわれは、情によって情を飼いならす(tameする)技(ars)を身につけなければならない。
コンセプト | あいちトリエンナーレ2019

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【参考資料】
「あいちトリエンナーレ2019」 公式ガイドマップ

*1:今回の企画展中止に対する考え方について、2019.8.7放送のTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」の特集「表現の自由」~あいちトリエンナーレの展示中止騒動をめぐって▼明戸隆浩(社会学者)×西土彰一郎(憲法学者)×荻上チキ(評論家)や評論家の宇野常寛さんのインターネット番組「乙武洋匡×宇野常寛「2020年東京五輪は日本社会に何をもたらすのか」2019.8.6/PLANETS the BLUEPRINT」などが参考になります。

*2:展示会場で配布されていた「あいちトリエンナーレ2019 小田原のどか:Look at the schulpture」を参照