シェア型本屋の棚主を募集
2021年5月、「まちで暮らし、働き、学び、遊ぶ多様な人たちが持続的に新しい価値をつくる場所をつくる」をビジョンに掲げ、「まちのサードプレイスをつくる」をコンセプトとする、シェア型本屋兼レンタルスペース「イノイチブックス」を開業しました。
最初の課題は、48ある本棚の借主である「棚主」を見つけることでした。ブログやnote、Instagram、Twitter、動画、地域のリアルなつながりで募集していきました。
ご近所に挨拶のお手紙を投函
2021年6月、開業から2週間後、ご近所の方に向けた挨拶のお手紙を50枚作成し、ご近所の戸建て住宅や共同住宅のポストに投函しました。このエリアは、三鷹台駅から徒歩4分という便利な立地ながら第一種低層住居専用地域であるため、普段は静かな住宅街です。ご近所の方に、新しい取組をご理解いただけるよう双方向なPRに努めました。
その後は毎月、お便りをポスト投函するようにしました。
街のような本棚
2021年7月、開業から2ヶ月で48棚全てが埋まりました。徒歩圏内または自転車圏内に住んでいる方のみならず、23区や神奈川県に住んでいる方からも応募がありました。応募してくれた棚主の世代は20代から70代に渡り、性別も様々、職業も様々です。
年齢も性別も職業も抱えている課題も様々な人たちが暮らしている街を、ぎゅっと48の本棚に詰め込んだような場所をつくることができた気がします。(詳しくはこちら)
制作や展示、仕事、学び、コミュニケーションの場
スペース利用としては、動画撮影スタジオ、服作りの作業場、町会関係の会議やイベント会場、アートギャラリー、展示会場、英会話レッスンの教室、パソコン作業といった目的でご利用いただきました。(詳しくはこちら)
棚の毎月の利用料は、STORESによるオンライン決済か現金で受け付けていました。スペース利用は、RESERVAによる予約システムを利用しました。
成果と反省
2021年5月に開業して2022年6月に閉業するまでの間、シェア型本屋の総利用者数は62組、総売上点数は468点、レンタルスペースの総利用者数は31組でした。シャッターアートの実施件数は5箇所です。
シェア型本屋に関しては、本棚に本を置いて数ヶ月間は本を入れ替えたり、メンテナンスにいらっしゃる棚主が多いのですが、時間が経つにつれ足が遠のき、置きっ放しになってしまいがちになる状況を作ってしまったことが反省点です。開業当初は、本棚の利用料を月1000円(最初の3ヶ月は500円)という、近隣のシェア型本屋*1と比べてだいぶ低価格に設定していたことや、棚主を巻き込んだイベントの開催が、ご近所からの苦情やコロナ渦も相まって難しかったことなどが、要因として挙げられると考えています。
レンタルスペースに関しては、当初は定期的に利用してくれる方や企業、団体を増やすことを計画していましたが、2021年8月の段階でご近所の方から苦情があり、事後対応をしつつも、以後レンタルスペースの稼働が停滞することになりました。毎月お便りをポスト投函していたとは言え、せめて開業前に直接挨拶回りをしておけば違う結果になっていたかと思うと、悔やまれます。
しかし、これは失敗ではなく経験だと捉えています。この経験を、次の空き家活用に活かしていきたいと考えています。なお、トイレやエアコン、本棚などの設備や看板、机、椅子といった備品は空き家所有者と合意の上*2、そのまま残してあります。
空き家のポテンシャルを発揮する
空き家所有者や町会長、街の人たちとのコミュニケーションを踏まえて、「まちのサードプレイスをつくる」というコンセプトを導き、吉祥寺のシェア型本屋「ブックマンション」をヒントに、シェア型本屋兼レンタルスペースを企画し、運営してきました。
空き家所有者の思いや元骨董品屋の歴史、建物や設備の状態、駅近で路面という立地、高齢者のみならず子育て中の家族も多いという地域特性、シェア型本屋やレンタルスペースの利用者のニーズなど、総合的に分析して企画しました。吉祥寺のブックマンション、下北沢のブックショップトラベラー、渋谷の渋谷〇〇書店などのシェア型/棚貸し本屋と一緒に、京王井の頭線沿線におけるシェア型本屋カルチャーのようなものがつくれたら素敵だなと、想像を膨らませていました*3。
空き家所有者への営業、空き家の片付け、改装、そして運営と、手探りながら一気通貫に空き家活用を実践した経験を今後に活かしていきます。