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住宅購入を煽ることの不毛

住宅の「買い時」に違和感

2014年4月から2021年3月までMXテレビで放送されていたモーニングCROSSの後継番組であるモーニングFLAGが4月から始まりました。CROSSに引き続きほぼ毎回見ています。とても面白いです。

昨日の特集コーナーは「コロナ渦の住宅事情」というテーマでした。東京都23区の平均㎡単価が2015年から2020年の間に緩やかに上昇していることや、フラット固定金利が2008年の3.05%から2021年は1.09%と下がってきていることなどを踏まえてマンションや戸建てなどが買い時である、という論調でした。

お話をしてくださっていたのは東京都心の高級賃貸マンションや高級中古マンションに特化したハイエンド不動産メディア「TERASS」の代表の方です。

堀潤モーニングFLAG 2021年4月6日放送(出典:堀潤モーニングFLAG>2021.4.6放送

この「買い時」という表現に前々から違和感を感じています。さんまは秋が買い時だから今買っておこう!ならわかるのですが、住宅となると何千万円もの出費があります。基本的に住宅ローンを組むことになるので何十年もの支払いをし続ける必要が出てきます。

金融資産や事業資産を持ち、毎月のように安定した可処分所得を得て、それが住宅ローンを払い終わる頃まで継続する見通しがあれば、買い時という気軽さで住宅購入できるかもしれません。また、住宅を購入した後に様々な理由でその住宅を売却せざるを得ないことになったときに住宅資産額が購入時に比べて維持または上昇していれば経済的な損失を出さないで済みます。しかし、このような条件が揃った人と不動産のセットはかなり希少です。

増大する持ち家負担と目減りする住宅資産

「マイホームの彼方に」平山洋介著*1では、増大する持ち家負担や目減りする住宅資産といった現状の持ち家をめぐる社会事情について解説しています。

まず増大する持ち家負担については全国消費実態調査*2の1989年から2014年までの結果からポストバブルの可処分所得と住居費の推移を分析しています。これによると住宅ローンを返済している世帯の1ヶ月あたりの可処分所得は1994年では約48万円でしたが2014年には約42万円にまで減っています。1ヶ月あたりの住居費は1994年では約6万円でしたが2014年には約8万円にまで増えています。

次に目減りする住宅資産についても全国消費実態調査の結果から、世帯員二人以上の勤労者世帯が保有する住宅・宅地資産額の推移を導いています。住宅ローンの返済義務を伴う持ち家の住宅・宅地評価額は1994年は約4400万円でしたが2014年には約2500万円まで減りました。住宅・宅地の負債現在高も1994年は約1100万円でしたが2014年には約1600万円にまで増えました。その結果、住宅・宅地資産額は1994年の約3300万円から2014年の約850万円へと激減しています。

不確実性が高い社会情勢であることの再認識を

可処分所得の減少、住宅資産額の激減という現状の中、今後も人口減少と内需の先細り、高齢化と社会保障費の増大、経済の低成長、不安定化する雇用と収入、未婚化・晩婚化と少子化など不確実性が高い社会情勢がますます続いていきそうです。

このような状況を考えた上で住宅購入をすることは全く否定しません。しかし、住宅ローンの完済年齢の平均が73歳になるなど、何十年先まで毎月支払いが発生することのリスクをしっかり再認識することがとても重要です。

付記:モーニングFLAGに出演されていた方が代表を務めるTERASSでは東京都心の高級マンションなどがメインターゲットなわけで、今が買い時と言えるのはそういった高額の住宅を購入できる資力のある富裕層に限定されていると考えます。東京都心であれば住宅資産額の維持・上昇も見込める余地は多分にあり、そういった意味からも今が買い時と言える住宅はよほど限定されていると考えざるを得ません。

<参考動画>
住宅ローンについて勉強になる動画です。

youtu.be

こちらも面白いです。 源泉徴収制度に対する深読み、お金の教育の重要性など納得です。

youtu.be

*1:P.270〜P.278

*2:2019年調査は全国家計総合調査に変更。