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空き家を利活用して新しい価値をつくる

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郊外の団地暮らしを更新中な富士見台名店街を歩いてきた

2019年11月にオープンした「富士見台トンネル」

2019年11月にオープンした「富士見台トンネル」

「東京人」2021年12月号の空き家利活用特集で取り上げられているまちを実際に歩いてみよう特集・第3弾は谷保の富士見台名店街です。

団地の1階に店舗がたくさん

JR南武線の谷保駅から徒歩5分ほどの富士見台団地は、第一団地から第三団地まであり計2000戸以上もある大規模な団地です。完成は高度成長期真っ只中の1965年。第一団地の1階部分には当時から富士見台名店街(1991年に「むっさ21」という愛称が付いた)があり、現在はカフェや八百屋、雑貨屋やものづくり工房、シェア商店などがオープンしています。

団地の1階にカフェなどの店舗が並ぶ

団地の1階にカフェなどの店舗が並ぶ

学生のまちとしての国立市

谷保は国立市にあります。国立市と言えば1926年に国立音楽大学が創立し、1927年には一橋大学が誘致され、1952年には都市計画法で定める特別用途地区の一つである文教地区として当時の建設省と東京都から指定を受けるなど、学生のまちとして成り立ってきた経緯があります(参考:くにたちのあゆみ/国立市ホームページ)。

カフェ「ここたの」

カフェ「ここたの」

学生たちがお店を運営する

富士見台名店街に出店しているカフェ「ここたの」、くにたち野菜と地域食材の店「とれたの」、手作り雑貨とリサイクル品を取り扱う雑貨屋「ゆーから」、ものづくりシェア工房「クミタテ」、貸しホール「KFまちかどホール」は一橋大学と津田塾大学の学生サークル「Pro-K」の学生たちが運営しています。

美味しいケーキとチャイを注文した

美味しいケーキとチャイを注文した

様々な協力も背景にある

ここたの、とれたの、ゆーからの3店舗はPro-Kの母体である「NPO法人くにたち富士見台人間環境キーステーション」(以下、KF)の活動が始まった2003年当時は空き店舗でした。ここたののオープンは2003年8月、もうすぐ20年となる息の長い活動になっています。物件の所有者であるURによる家賃軽減や、長野県朝日町による店舗の内装を飾るカラマツ材の無償提供など様々な協力も背景にあります。

学生の提案と商店主との議論をもとに、「むっさ21」の中にある空き店舗を利用してコミュニティ・カフェ、カルチャー教室を行うことが決まった。これらの店舗の運営を学生たちが担うことになり、同時にKFを設立。空き店舗で学生が中心になってカフェを経営するという試みに、UR都市機構が家賃を軽減、国立市からの補助金、長野県朝日町からのカラマツ材の無償提供など、さまざまな協力が集まった。
「東京人」2021年12月号P.98

くにたち野菜と地域食材の店「とれたの」

くにたち野菜と地域食材の店「とれたの」

くにたちの飲食店を支援

2020年6月にはコロナの影響で売り上げが激減し苦しい状況に追い込まれてしまったくにたちの飲食店を支援しようと、KFに所属する学生がクラウドファンディングを実施しました(参考:東京)一橋大生の「恩返し」 CFで国立の飲食店支援 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)。283人の支援者から約330万円の資金を集められました。

手作り雑貨とリサイクル品を取り扱う雑貨屋「ゆーから」

手作り雑貨とリサイクル品を取り扱う雑貨屋「ゆーから」

まちづくり×ビジネス

フリーペーパー「富士見台地域情報誌 やっほー」の発行、ローカルヒーロー「やほレンジャー」による活動、盆踊りや餅つきといった地域イベントへの参加や企画など、店舗の運営以外にもKFは幅広い活動を行っています(参考:商店街協同)。

まちづくりとビジネスを掛け合わせるKFの活動に注目です。

note.com

富士見台名店街から大学通りを望む

富士見台名店街から大学通りを望む

郊外の団地暮らしを更新中

2019年11月にオープンした「富士見台トンネル」は曜日や時間帯によって出店者が変わるシェア商店です。チャイスタンド、カレー・和菓子、クナーファ、みそ汁、カフェランチなどなど、多彩なコンテンツが目白押し。

おしゃれな雰囲気

おしゃれな雰囲気

オーナーであり建築家の能作淳平さんはかつては都心住まいでしたが、お子さんが産まれたことなどをきっかけに郊外への引っ越しを検討、改装可能・原状回復不要な賃貸住宅であるURの「DIY住宅」として空室が出ていた富士見台団地に住み始めます。郊外に移り住みゆったりとした生活を送れたかと思いきや、毎日都心へ満員電車に乗って通勤することに……。さらに、能作さんの妻がこれまでのワインショップの店長というキャリアを手放すことになってしまいました。「仕事を取るか、子育てを取るか」の二択を迫られるのはおかしいと能作さんは考え、自宅の近くに働く場所を作り始めます。

「僕らの悩んでいることって、明らかに都市の構造の問題だなって気付いたんです」
妻のスキルを活かす場として、家から近い場所に店を出そうと考え始める。能作さんのオフィスを兼ねれば、週末だけなどマイペースに営業すればいい。ところがこうも思った。「僕らと同じような人って、ほかにもけっこう居るんじゃないかって」
それならシェア型にしてやってみるかと、2019年11月、シェア商店「富士見台トンネル」をオープンする。
シェア商店「富士見台トンネル」で街に眠る才能を発掘。郊外を刺激的でおもしろく | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト

郊外の団地の未来とは

郊外の団地の未来とは

郊外の団地というと典型的なベッドタウン(夜間人口よりも昼間人口が少ないまち)で満員電車や長時間労働、まちへの関わりは限りなく少なくなりがちです。住むという単一機能ではなく、暮らすという複合機能を持つまちこそ魅力的であり持続可能です。暮らしを成り立たせるためには、いかに働くかということが中核の課題となります。郊外の団地暮らしを更新中な富士見台トンネルの試行錯誤に注目していきます。

富士見台トンネルのテーマは、あくまでも仕事です。生業として飲食をしている人には飲食店が仕事ですし、デスクワークも仕事、よくわからない新規ビジネスを考えているのも仕事です。ここは、このテーブルに座って仕事についてみんなで考えようという場所。このまちには学生から子育て世代までの層が抜け落ちてしまっているから、カルチャーが生まれないのかもしれない。彼らに向けたサービスを構築していきたいです」(能作さん)。
「東京人」2021年12月号P.101